郵便屋さんとスーパーカブとその日常。

げこすけ

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第36通 郵便屋さんの一大イベント。元旦出発式〜お正月の郵便屋さん①〜

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なかなか割れないクス玉が総務課職員の手によって叩き落とされ、落下の衝撃で割れると会場は大爆笑の渦です。
その笑いが収まらない内に「出発!!」の号令が集配課長から掛かると、出発のテーマソングがラジカセから流れてきました。
そのテーマソングを聞いた途端、これまた爆笑の渦が巻き起こるんです。

そのテーマソングとは?
なぜか、昔流行った某刑事ドラマのテーマ曲が流れるんです!
あの、サングラスを掛けた捜査課のリーダーがショットガンを犯人に向けてぶっ放す。あの刑事ドラマのテーマ曲が!

どうやらそのテーマ曲もその年が初めてだったらしく、畳み掛ける様に出発式は更なる爆笑の渦に包まれながら、緊張した面持ちの学生バイト達が自転車を走らせ次々と郵便局を出発しました。
その、テーマ曲は私がA郵便局に勤務中は毎年使われていましたが、現在も使われているのですかね?

 さて、学生バイトが出発すると、職員は元旦に配達される書留と書状年賀状の準備、そして昼から配達される通常郵便の準備を行います。
 書状年賀状。みなさん聞いた事ありますか?
我々職員は書状年賀と略して扱う事が多いのですが、通常の年賀はがきではない形状の年賀状をそう呼びます。
例えば、和紙の様な素材で作られた年賀状。木の板に書かれた年賀状。紙質がしっかりしていて金縁の葉書の年賀状。年賀郵便のDM等いろいろな種類があります。
そういった年賀状は通常年賀状とは形状が違う物が多いので私が所属していた郵便局では通常年賀状とは別扱いされ、配達アルバイトには渡さず職員が配達していました。

 なぜ、職員が配達していたか?
理由は二つあります。まず、基本的に通常年賀状と形が違う物ですから年賀状の順立て区分がやりにくいんですね。
バブルの当時では今と違ってインターネットもメールもありませんから、結構年賀状に凝っている人も多かったのです。
それらには年賀状用のお年玉くじ付きの切手を貼って送られるものですから、あまり雑に扱うと剥がれてしまうんですね。取り扱い中に剥がれてしまったくじ付き切手を探しまわった経験あります。
 そして理由のもう一つは、差し出し人と受取人の方が暴力団事務所やヤクザ関係者の場合が多かったのです。
しきたりや挨拶などを大事にされてる方々ですから、綺麗な真っ白な金縁の葉書に筆書きで正月の挨拶文が書かれている年賀状はまず間違い無くそういう方々の年賀状でした。
折れ曲がったり、汚れたり、雨に濡れたりすると大変なので取り扱いは要注意です。そういった年賀状を配達アルバイトに渡して、もし何かあった場合は大変な事になるので当然職員が配達するのです。
ポストに配達する時は緊張しましたねえ。同じように『破門状』といった葉書も送られてくる時代でしたから、取り扱いには細心の注意が必要でした。
 この書状年賀はだいたい12月30日辺りに各班に郵便課から渡され配達順路に事前に職員が組み立てて用意します。
それを元旦の午前中に書留と共に配達するわけです。

 配達アルバイトがそれぞれの配達区の半分くらいの年賀状を配達したであろう時間が来ると、我々職員が配達に出発します。
書状年賀はまだ良いのですが、年賀状が配達される前にチラシ等のDM年賀状を配達すると、お客様から「年賀状の前にチラシが配られたぞ?チラシなんかいらないから早く年賀状を配ってくれないか?ずっと待っているんだが?」といった電話が掛かってくるトラブルを避ける為に時間をずらして配達に出るわけなんです。
 ちなみに、正月に配達する書留のほとんどはお年玉が入っているのですが、私が勤めてる後半は普通にクレジットカード等も正月の書留に配布されていたので、あまり早く配達すると「なんだ?カードか?それより年賀状じゃないのか?」と、これまたお叱りを受けるんですよ。
この、年賀状が配られているであろう時間帯を探りながら配達するのも骨が折れました。だって、私のキャリアの後半は普通にクレジットカードなどの書留が正月から多くあったり、TSUTAYAレンタルやAmazon等記録郵便など多く出ていて、正月といっても普段となんら変わりありませんでしたから。
 そういう風に郵便屋さんのお正月の午前中は過ぎていきます。
そんな年賀状の午前中配達で思いもよらない、まさにバブル時代の様な出来事もありました。
次回はそのお話しをお伝えします。


今回もご愛読いただきありがとうございました。
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