郵便屋さんとスーパーカブとその日常。

げこすけ

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第33通 郵便屋さんの一大イベント。元旦出発式〜きっちり作ろう年賀状の調査一覧表

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いつもよりも早く起きて身支度をすると、日の出前に郵便局に向かってバイク通勤です。

う~寒い!!いつもより1時間早く家を出るとこんなに寒いんだ!寒すぎるよ~

ガタガタ震えながらバイクを走らせます。
今日は元旦1月1日。
いよいよ年賀状配達本番日です。
今日はいつもの8時出勤ではなく、7時出勤。出勤簿に押印すると郵便局の発着場広場にアルバイトが乗る自転車を並べて7時半から始まる出発式を待ちます。
当然、それまでにアルバイトが出勤しなければいけないのですが…

「おい?アイツまだ来てないぞ!家に電話しろ!」
「はい!わかりました!」
「え?今、起きた!?今、起きたそうです!!」
「マジか!?早くこっちに来る様に言っとけ!!」
「はい!!」
と、言ったやりとりもありますね。
中には当日に体調不良や連絡つかずに休むアルバイトもちらほらと。
私は元旦に休んでしまうアルバイトの担当になった事はありませんが、随伴訓練の次の日に辞める高校生や、12月30日頃に急に意味不明な理由を付けて辞めると言い出す年配の方とかはいましたね。

アルバイトが出勤すると、住所と名前が書ける一覧表の様なペーパーと鉛筆を渡します。
これは何かというと、配達中に年賀状が一枚も無かった家を書き出していくのです。
この一覧表をキチンと書いてあると後々お客さんからの問い合わせの対応がスムーズになるのです。
このバブルの頃からお正月を海外や国内旅行で過ごす人が増えだしました。
すると、お正月の三が日やお正月がとっくに終わった頃に
「うちの年賀状が1通も届いてないぞ!」という問い合わせが必ずあるんです。
その対応にこの一覧表があれば、実際に配達されているのかいないのか?が分かるわけです。

その名簿に問い合わせのあったお客様のお名前が無い場合は配達されているはずです。
よくあるのが家族の方が電話をした方よりも先に受け箱から年賀状を出していて、部屋のいつもと違う場所に置いてあって気づいていない場合。
郵便受けの奥や受け箱の蓋を開けた時に死角になって見えない場所にあって気づかない場合。
などがあります。
ですので、名簿に名前が無い場合は一度お客様の方で確認していただきます。
他にはあってはならない事ですが、年賀状のお年玉景品を目的に誰かに盗まれるといったケースも実際にありました。

では、名簿に名前がある場合はどうなのか?
名簿に名前があるって事は年賀状が1通も無かったって事じゃないですか?と思われますよね?
いえ、これは実は厄介なんです。
一人暮らしで普段から郵便が少ない家は年賀状が1通も無い場合は珍しくありません。
ですが時はバブル期、ほとんどのご家庭に年賀状が配達される時代です。
普段も普通に郵便は配達されるのに年賀状が1通も届かないと云った問い合わせがある。
考えられのは年賀状の誤配です。

一番多いパターンは、問い合わせのあったお客様の隣の家、配達順路でいえば一つ手前の家に配達されるパターンです。
年賀状は一軒一軒細い輪ゴムで把束されています。
その束をお客様の受け箱に配達する時に一軒分のつもりが輪ゴムが引っかかって二軒分ひっつけて配達してしまう事があるのです。
もう一つは年賀状の順立て作業時に一軒にまとめる時に誤って隣の家の年賀状も一緒にまとめて把束してしまう場合です。

この二つのパターンは割と誤配調査で見つかりやすいのですが、順立て作業時に誤って他の同姓の家に入れてしまう場合だと厄介です。
まず、年賀状が届かないと連絡があったお客様の家の前後2軒程で誤配された年賀状が無かったか聴き取り、次に周辺の同姓の家に誤配されてないか?と調査に行くんですが、不在の場合もあるのでこの調査はなかなか難航する場合がありますね。

この年賀状が届かないと云った中に、友人から来るはずの年賀状が無い。
息子から来るはずの年賀状が無い。
と云った事案もあるのですが、実際に元旦に届くように出されているのか?
そもそも年賀状を出しているのか?など、雲を掴む様な調査もあります。

さて、この調査一覧表は高校生の方々は本当に純真に仕事をしてくれるのですごく丁寧に書いてくれました。
問題は職員の方なんです。
機械区分機の進歩により内務作業のアルバイトや配達バイトの雇用が無くなり、現在では職員が全てを行っています。
当然、元旦配達も。
職員の中には、年賀状があったかどうかは覚えてるから一覧表なんか作らなくて良いと言い張る者が出てきます。
で、元旦配達が始まりお客様から届かないとお電話が。
「お前、あそこの家の年賀状があったかどうか覚えてるか?」
「んーどうだったかなあ?
無かったんなら無かったんじゃないですか?」
といい加減な返答をする職員が多く、当然そういう班員は誤配調査もいい加減な場合が多く、結局その尻拭いを役職者がやる羽目になるわけですよ。

高校生のピュアな行動力に郵便屋さんはいろんな面で助けられていたわけですね。



今回もご愛読いただきありがとうございました。
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