郵便屋さんとスーパーカブとその日常。

げこすけ

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第30通 緊急執筆編  被害者は誰か?本当に悪いのは?

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今回はある事件の事で、どうしても書きたくなり本編から外れた番外編をお届けしたいと思います。

2024年9月某日、ある郵便局で配達職員のロッカーから配達されるはずの郵便が発見され、その職員は懲戒解雇された事件が報道されました。
聴き取りによると後で配達するつもりだった。との事。
郵便局側は今後ロッカー検査を増やし、コンプライアンス研修を実施し、その配達職員は刑事告訴されたそうです。

この事件の報道を知った時、「私は相変わらず変わらないな」と思いました。
それは何か?郵便局の体質です。

まず、皆さんはこの事件の被害者は誰だと思いましたか?
まず、第一の被害者は当然その郵便を受け取るお客様です。
では、第二の被害者は?

それはロッカーに隠し持っていた郵便局員なんです。

何言ってんの?郵便物を隠していたこの職員は加害者の方だろ?
被害を受けたのは刑事告訴を行った郵便局だろ?
勝手な想像でいい加減な文章書いてるなよ?
と、思うところはあるでしょう。
当然今回の事件は許されない行為で、正当な配達をされているのか?社員教育はどうなっているのか?と郵便屋さんに対する不信感を抱かせる事件です。

そこで皆さんに、なぜ配達しなかった(できなかった)郵便物を隠したのか?そうせざるを得なくなってしまったか?
その背景を考えていただきたいのです。

郵便配達は人間が行なっているので、不慣れな配達員が配達場所が分からなかったり、なんらかの事情で配達が出来なかった場合は郵便局に持ち戻り、後日配達します。(これは基本動作であり、郵便局によっては夜間便の配達にまわしたり対処の仕方が違います)
なのに、この職員はそれをしなかった。
記事によると後で配達するつもりでポケットに入れたまま忘れてロッカーにしまったとありましたが、1通ならあり得るかも知れませんが9通はまずあり得ない。
その郵便物を破棄しなかったという事は、この職員は少なくともその郵便物を配達する意思はあったと思います。
ですが隠してしまった。

この背景にはパワハラやモラハラ等のハラスメントが存在してると私は思います。
過去にもこういった配達できなかった郵便をロッカーに隠した事例や雑木林に捨てたといった事例がありますが、そのほとんどの理由が配達時間に追われて配達しきれずに持ち帰ったり配達する家が分からずに郵便局に持ち帰ったりすると班員や上司に怒られるから。と言った理由なんです。

私が所属していた班ではそういった職員を追い込む様なハラスメントはありませんでしたが、他の班では配達できなかった班員をコテンパンに罵る人もいました。幸い郵便物を隠したり破棄する職員はいませんでしたが、郵便を持ち帰り翌日廻しにする班員を毛嫌いする班員がいます。
なぜか?
班の事情によりますが、人員配置がスムーズな班ではほぼ毎日担当区がローテーションのように変わります。翌日に残された郵便を代わりに配達する班員が捲し立てるのです。
だいたいそういう班員は仕事が速く「できる」人が多いです。
逆に郵便を残してしまう職員は「できない」人が多い。

「できる」人は天狗になってる人が多いもんですから「できない」人を下に見ます。そして、人権を無視した発言や行動を取る場合があるんです。

その「できる」人の行き過ぎた行動を止める事を上司はしないんです。むしろ一緒になって「アイツは本当にダメな奴だな?お前も気の毒だな?」と天狗になってる班員に笑いながら話し掛けるのが日常茶飯事です。
「できない」人の擁護をしないんですよ。

私が「相変わらず変わらないな」と思う郵便局の体質というのはここなんです。
郵便を隠してしまった原因。
なぜそうなってしまったか?の原因の本質を改善せずに、ただ隠した職員を罰してその再発防止に努める。で終わるんです。

郵便配達は通常郵便の配達と同時進行で「時間帯指定」の郵便物や小包、そして書留や速達郵便、特定記録やバーコード付郵便を配達します。当然、年賀はがきやイベント小包等の商品の営業活動もあります。
10時頃に郵便局を出発して12時45分の休憩までに午前中の配達と時間指定の配達、書留、速達、特定記録、バーコード付郵便を配達。
休憩後に昼配達の準備をして14時頃に郵便局を出発して午前中配達と同じ内容の事を日没までに行います。午後配達時に午前中配達完了したエリアに再度申し出郵便や書留を配達する手間のかかる配達も普通にあります。(これは郵便局によりいろいろな配達方法があり、事情も違うので全てがこういうケースではありません。私が所属していた郵便局のパターンです)
そして郵便局には労働時間にも三六協定というものがあって二ヶ月間で80時間、年間360時間以上の残業はできないという規定があります。しかも一ヶ月40時間以内に抑えなければいけない(原則45時間以内だがそれを越えさせない為に40時間以内に抑える)
最初の一ヶ月に60時間の残業を行い、次の二ヶ月目に20時間内に収めるって事が昔はできたのですが、現在はできません。
これ、本当に大変なんです。配達物が多くあるのに残業制限があるのが。

そのハードな毎日の中、能力の差に違いがある班員同士に亀裂が生まれます。
パワハラ、モラハラも。

要は配達員の仕事の負担を軽減すれば少しでも改善されるんですね。
でもそれを日本郵便という組織はしない。
他社の運送会社のサービスよりもうちは安いし便利ですよと配達員の負担も考えずに配達指定の時間帯を増やしたり、手間の掛かる郵便商品を増やしたりする。皆さんはご存じでしょうか?近年宅配ボックスの利用を推奨しますが、宅配ボックスに荷物を預ける手間やお客様が不在時に不在通知書などを書く手間を。
皆さんが思っているより時間と労力がいります。
なのに残業を抑えろ、郵便配達は原則当日配達といった足枷がある。
その結果、郵便物の隠匿や破棄といった事件が起きてしまうんです。

この事件を今後繰り返さない方法。
それは職場のロッカー点検を増やしたり、コンプライアンス研修を増やしたりする「形」だけの事を行うだけではなく、上司や班員のパワハラ、モラハラに対しての指導や罰則を強化して、円満な職場作りを本気で考える事。
そして日々時間に追われている郵便配達員の負担を無くす為の「現場に対する本当の働き方改革」を実現する事だと私は思います。

毎日、暑い中、寒い中、悪天候の中、日々の業務にあたっている郵便配達員の皆さん毎日ご苦労様です。
交通事故など危険性もあるお仕事です。
本当にその仕事は大変ですが、私はお客様が待っていた郵便物を手に取った時の笑顔と感謝の言葉を思い出すと本当にやりがいがあった仕事だと退職した今でも思ってます。
お仕事大変ですが頑張ってください。


今回もご愛読ありがとうございました。
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