郵便屋さんとスーパーカブとその日常。

げこすけ

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第28通 郵便屋さんの一大イベント。 年末繁忙期編11 〜地獄の3丁目前編〜

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前回は年賀状の内務作業での出来事をお話ししました。
今回はある外務アルバイト員のお話しをしましょう。

前回にもお話ししましたが、年末年始のアルバイトには大勢の高校生を中心とした応募があります。
それぞれの適応力やスキルに個人差があり、ベテラン顔負けの作業が出来る子もいれば、何度教えても理解できない子もいます。
それは仕方がない事で、当時では生まれて初めてのアルバイトが郵便局のアルバイトという子が珍しくない時代です。
その中でそれぞれの生まれ持った適応力が郵便屋さんの仕事に合うかどうかという事で、郵便屋さんのアルバイトよりも喫茶店でのアルバイトの方が自身のスキルが発揮される子も当然いるわけです。
ですが、中にはこのアルバイト員は本当にこの先社会人になってもきちんと仕事が出来るのか?社会に溶け込んでいけるのか?と心配になるような人もいるわけで…

それは私が郵便屋さんになって数年後の年末年始繁忙期の事でした。

私の担当区の外務アルバイト員に高校生の他に大学生が採用されたのです。
名前はMAさん。
大学生で車の免許を持っているので原付カブが乗れるとの事。班員みんなで期待されていました。
原付カブが乗れるという事なので自転車配達の高校生よりも当然配達範囲や物量も多くなります。
普段からスクーターは乗っているので運転は心配しなくても良いとの事。

私よりも年上で大学生。
メガネを掛けやや太めの体格で、その当時日本中を震撼させた事件を起こした某ビデオオタクに少し雰囲気が似ていましたが、落ち着いてる様に見えるし、今年の年賀は楽が出来るな。と私は思っていたのですが…

随伴訓練で先頭を走る私の後ろに着いて走ってもらうのですが、なかなか着いてこれない。
いや、自転車レベルだぞ?このスピードは。
まあ、初めてカブに乗るって言ってたし、普段はスクーターに乗ってると聞いてるからその内慣れるだろう。

ですが、どれだけ随伴訓練を続けてもスピードが上がりません。
私もさすがにイラついて来ます。
何よりもMAさんのクセのある動作が気になるんです。

基本的にカブでの配達では停車時にはサイドスタンドを立てて停まります。
止まる直前で左足でサイドスタンドをクイッと引っ掛けてカブを停めて降りて配達先のポストに向かって走って配達してカブに跨り左足でサイドスタンドを引っ込めて、次の配達先に向かいます。
これがカブでの配達の一連の動作です。

ところがMAさんは随伴訓練中でも、配達中でもバイクから降りる時にサイドスタンドではなくセンタースタンドを立てて停まるのです。

最初、私はすごく低速で走るし停まるたびにセンタースタンドでカブを引き起こして停まる姿を見て『随分と几帳面な人だな』と思いました。
「あ、MAさん。カブを停める時はセンタースタンドじゃなくてサイドスタンドを使って停めた方が良いですよ。
いちいちセンタースタンドでバイクを立てて停めてたら手間が掛かるし、体力的にも大変でしょ?」
「はい。わかりました!」

で、カブを走らせ停まって後ろのMAさんを見ると…
センタースタンド立てて停めてるんですよ。

「MAさーん!サイドスタンドで降りましょうよ?
あと、もう少し運転スピード上げてください。自転車と同じスピードだとバイク配達の意味無いんで」

「はい!わかりました!!」
と、返事は元気なんです。

で、随分訓練を続けて後ろを見ると…

遥かに後ろにいるんです。
随伴中だから遠慮してスピード出して無いからなのか?
配達させてみるか?
お試しに郵便を渡して配達させると今度は配達の度にセンタースタンド停め。
下手したら自転車で配達してるより遅いぞ!?
いや、自転車より遅いよ!!

後編に続きます。

今回もご愛読いただきありがとうございました。
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