郵便屋さんとスーパーカブとその日常。

げこすけ

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第15通 郵便屋さんの一大イベント。 年末繁忙期編1 郵便屋さんのグレーゾーンな事務処理 〜年賀状編〜

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ジングルベールジングルベール♪
鈴が鳴る~♪
クリスマスソングが流れる夜の街並みは色鮮やかに彩られ、至る所にクリスマスツリーが。
そして山下達郎の名曲クリスマス・イブがJR東海のCMの勢いのままにテレビ、ラジオ、そして街中で耳に入らない日はないぐらい流れます。

世間はクリスマスムード一色の12月に入りました。
11月1日に中途採用された私にとって、初めての郵便屋さんの一大イベントが始まろうとしています。

そう。年末年始の年賀状の季節がやってきました。

12月上旬になると、転居届けの原簿の整理や年賀状配達のアルバイトの学生さん達に持たせる配達地図の現行化など、日々の配達後にそういった事務作業に追われるようになります。

今回は私の初めての年末繁忙期の体験を語る前に、年賀状の取り扱いも含む郵便屋さんの配達以外の事務処理をちょっとグレーゾーンな部分も絡めてお話ししたいと思います。

現在では転居届けなどの入力はパソコン(以下PC)を使用し、インターネットで郵便局が管理する情報サーバーに送信され管理されていますが、この頃はまだ全て手作業の時代です。

毎日の様に朝の始業前の班ミーティングで班長から渡される転出入の原簿を転居ファイル。転入ファイルにそれぞれ綴じていきます。

この転居届けについて誤解されてる方が多いので少し説明します。

みなさん。引っ越しされた時に市役所に新しい住所等届けますよね?
意外と多いトラブルが、市役所に転出入の届けをしたので郵便局にその事が伝わっていると思っているお客さんが多いのです。
転出入の届け出は必ず郵便局にも届けてください。
郵便局と市役所はそういう情報は一切共用していませんから。

「新しい住所に手紙が全く届かない!一体どうなってるんだ!!」と、お叱りの電話が掛かります。
そういう電話が掛かるとまず疑われるのが誤配です。
だけど、お客さんが言われる住所の付近の家に誤配調査に行っても間違って配達された事は無いと言われる。
うーん。おかしいなあ?
そもそも、その新しい住所って郵便局に転居届けが来てるのか?
で、転入原簿を調べます。

んー… 届け出は無いよね?

再度お客さんに問い合わせてみると、
「え?郵便局にも届けを出さないとダメなんですか!?」
「じゃあ、今まで届かなかった郵便は…?」
「以前に住まわれていた住所に配達されてると思いますよ」
「わかりました!明日、郵便局で転居届けを出します!!
あの、以前の住所に配達された郵便はどうすれば?」
「以前住まわれていた地域の郵便局にお問い合わせ下さい」
で、後日に10通程の転居郵便がその転入された家に配達されるといった事はよくあるんですね。

ちなみに転居届けの有効期間は1年間なのもお忘れなく。
1年過ぎると「あて所に訪ねあたりません」の還付印を押されて差出人に返されますのでお気をつけ下さい。

で、年末になると大掃除も兼ねて溜まった転居届け1年切れの原簿を処分していきます。
転居切れの郵便は先程述べた様に還付されます。
それは年賀状も同じです。

ここでグレーゾーンが発生するんです。

年賀状は通常郵便物と違い一年に一度のお正月のイベントです。
なので、せっかくの年賀状だから12月中に転居届けの1年間が切れるものに関しては転居切れにせずに配達する様に温情のある指示を出す上司もいれば、
転居が切れたものは全部還付しろと通常郵便物と同じ扱いを命じる上司の2種類の発言が出てくるんです。
なぜ、そんなあやふやな事が起こるのか?
実は転送期間が切れた郵便は還付するという決まりは全国統一されてるのですが、ケースバイケースの決め事が無いんですよね。
上司によって指示の内容も違うし、結局は現場に任せるというあやふやな事が多いんです。

今も昔も郵便屋さんって結構グレーゾーンが多い仕事なんですよ実際。
普段の業務からして各郵便局の集配課長(今では集配部長)や班長の判断に任せる事が多いのです。
正規の扱いをするならば年賀状でも通常郵便でも転居届けが切れていれば即還付なんです。

ですが、例えば12月27日に転居切れの人がいたとします。
本来ならば28日以降の郵便は還付されます。(遅れて到着する郵便もありますので転居切れから三日程は転居先に送る場合もあります。)
しかし、年末の年賀状の季節になると
「28日以降に郵便局に届いた年賀状も還付するのか?
年に一回のみんなが楽しみにしている年賀状だぞ!そんな血も涙も無い話あるか?転居先に回そう!」
「いや!規則は規則だろ!還付だ!!」
などと班内で揉める時があるんです。
だいたいちょっとクセのあるややこしい班員がすぐに還付したがります。

そして、還付するとほとんどの確率でクレームが来ます。
「なんでうちの年賀状は届かないんだ!他の親戚の年賀状は届いてるぞ!」
「27日に転居届けが切れていまして還付しました」
「なんだと!うちは26日に郵便ポストに出しているんだ!!どういう事だ!
説明しろ!!」

といったやりとりになります。
実際こういう事ほんとにあります。

「12月1日とか12月上旬に転居切れになった人はどうする?」
「さすがに元旦から一ヶ月近くも前に転居切れになってる年賀状は返した方が良いだろう?」
という意見が多く出るのでそれらは還付する事が多いです。
だいたい現場の各班の判断になりますが、先のクレーム案件のようなトラブルを避ける為に年賀状は年賀状引き受け日の12月15日以降に転居切れになるものは元旦配達する場合が多いです。(これは私の職場での経験です。他の郵便屋さんはどうなってるのかはわかりません)

しっかりした集配課長(部長)の場合は年末年始繁忙期ミーティングで各班員に渡すレジメでそういう場合の取り決めを書いて集配課に統一させるんですが、あまりそういう方はいませんでしたね。

私はキャリアの後半は班員達に指示を与える立場だったので、私の上の上司にどうしたら良い?とあまりにも班員達が年賀状の事故処理に対して揉めていたので相談してみました。(毎年年賀状の転居切れの還付の事で揉めます)
「それは今までの経験で判断したら良いじゃないか?何年局員やってるの?」と煙に巻きます。
上司達は直接決め事の様な指示は出さず、グレーなままで進めます。
なぜか?

だってほら、直接指示を出してその責任取りたく無いでしょ?

今回は年末の転居切れ郵便の取り扱いを含む郵便屋さんのグレーゾーンについてのお話でした。

一番良いのは12月に転居届けを出されてる方は転送期間が切れる前に転居届けを出して更新するのが良いですね。

今回もご愛読ありがとうございました。
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