郵便屋さんとスーパーカブとその日常。

げこすけ

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第12通 コネを使って郵便屋さんになった人の話。 後編

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今は随分と少なくなったようですが、1990年代では地域にもよりますが、何処の町にも一軒は暴力団事務所がありました。
いろいろ問題のある今回の主人公Mさんがある暴力団事務所に裁判所からの特別送達を配達に行った時のお話しです。

この特別送達というものは取り扱いが面倒な書留です。
配達証自体が普通の書留と違い、いろんな事を書かないといけない特別な配達証です。

配達先では配達日時、配達先の住所と受取人本人のフルネームのサインか印鑑。代わりの者が受け取った場合はフルネームのサイン。それを一字の間違いなく書かなくてはいけません。裁判所に提出する配達証なので一字でも間違うと再度そのお客さんに書いてもらったり訂正印を押してもらわないといけないとか物凄く面倒なんですね。

その書留を暴力団事務所に届けようとしたMさん。
事務所の前でバイクから降りようとしたのですが、あまりの緊張でカブから降りずにぐるぐる回ってたらしいのです。

どうしようどうしよう?

暴力団事務所への特別送達の取り扱いに完全にビビったMさんは迷った挙げ句に配達せずに持ち帰ってしまうんです。

それの一部始終を見ていた暴力団の方から「おい!なんでお前んとこの郵便配達がうちの事務所の前をウロウロして帰ってくんや⁉︎今日は書留が来るはずや?なんで配達せんのや⁉︎説明せい!!」とお叱りの電話が掛かってきたのです。

このMさんの一件で、配達班の班長と課長代理、そして課長と謝罪に向かい事なきを得たのですが配属の班員達はもう我慢の限界です。
「辞めさせろ!!Mのケツ拭きに我々は限界です!!」
「ウチの班ではもう面倒見きれない!!」
大騒ぎです。

ついにA郵便局も動きだし、Mさん本人に戦力外通告が出されました。
約2年程働いていたMさん。郵便屋さんを務めるスキルが無いのは周りからも明白でした。
そのMさんの母親もその事は予測できていたようです。
最終的にはMさんの母親が局長に丸三年は勤めさせて欲しい。3年勤めれば退職金も支給される。そうすれば郵便局の仕事を勤め上げたことになる。(自衛官の任期満了と同じ考えですね)とお願いしたそうです。

もともと代議士からのコネで入局した職員ですのでその母親のお願いは受理され、雇用3年でMさんの郵便屋さんは幕を閉じたのです。
その後Mさんはどうなったのかは分かりません。
今になって思えば、何かしら発達障害等を持っていたのかも知れません。その息子を少しでも社会人として育て上げたかった親心がその母親にあったのでしょう。
その母親には郵便屋さんのイメージはよくドラマやCMにあるのんびりした田舎で配達したり配達先のお客さんとのんびり談笑したりする、ゆるい仕事に思えたのでしょうね。
その当時はそういう郵便局エリアもあったのかも知れませんが、実際は毎日配達に追われたり、男子校の様な職場ですから班員同士で配達スピードを競ったり配達が速い職員が腕がいい、実力がある。といった実力主義な職場です。

現在ではこれにさらに時間指定の配達やAmazonなどの小物配達がプラスになっているので更に時間に追われる仕事になっています。私がいた頃にはこれに営業ノルマがついていました。現在はノルマの方は少し緩くなってるそうです。
もし、現在の郵便局にこのMさんが就職していたらきっと1ヶ月も持たないと思います。

今回はコネで入局したMさん。そしてそのMさんの母親の親心のお話しでした。

今回もご愛読ありがとうございました。
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