スーパーカブに乗る異世界の郵便屋さんは冒険がしたい。

げこすけ

文字の大きさ
上 下
40 / 45

第40話 デモンラグノとファントムナイト

しおりを挟む
ー『デモンラグノ』ー

黒と白のシマ模様の体だけでも3メートルはあろう毒蜘蛛のモンスターだ。

 背中や足の表面に甲殻類の様な硬質な白い殻を持ち、図体の割に俊敏な動きをする。
その長い手足からの攻撃と口から吐き出される蜘蛛の糸は脅威だ。
そして、噛まれるとゆっくりゆっくりと効いて死に至る猛毒を持つ。
図体の割に遅延性の猛毒を持つのはじっくりと獲物が衰えていくのを楽しんでいるのか?それとも獲物を狩る事を楽しむ本能なのかわからない。
ただ言えるのは残忍な『肉食』のモンスターだ。
その肉食のデモンラグノの口から出した蜘蛛の糸がシバの体を包み込むとそのままシュルルルルと口元に巻き取る!!

「お?おわわわわわぁ~!」と蜘蛛の糸で体中ぐるぐる巻きにされて顔だけ出してるシバが驚きの顔でふわりと宙に舞い上がると、まるでスパゲティを啜る様にデモンラグノの口元に吸い込まれそうに!

ブワッッッ!!

俺は反射的にマントをひるがえす!!
アーティファクト『風切りのマント』は風の塊を弾き出し、その風圧はシバを口元に吸い込もうとするデモンラグノの蜘蛛の糸を引きちぎり、シバの体をさらに高く舞い上げた!

「シバ!!」
思わずリザードマンが叫ぶ。

だけど、俺は慌てない。
『え?ちょっと待てリオン?
お前の風切りのマントは風のコントロールが難しいんだろ!?
小さな子供がお前の風で飛び上がってるんだぞ!無責任な奴め!!』だって?
君達、読者諸君が呆れる気持ちや怒る気持ちもわかるけど、落ち着いてよーく見てくれ。

いや、そっちじゃない。
俺の指先。上の方だ。

俺の指先が指す方向には脅威的な跳躍で飛び上がったニンジャが空高く舞い上がったシバをキャッチすると優しく抱き抱え、そしてクルリと前宙をするとふわりと降り立った。

な?慌てなくても大丈夫だろ?俺には頼れる仲間がいるからさ。

 しかし、これで収まるわけはない。
獲物を横取りされたデモンラグノは目を真っ赤に光らせ怒りに燃えていた。
図体の割に俊敏な動きで俺達に襲いかかる!
あの長い手足は厄介だ!
俺達のパーティには槍使いはいない。俺とナルシスの長剣でインファイトを挑むのも簡単ではないな。(ナルシスはまだのびてるが…)
頼みの綱はアローラの魔法なんだけど…

「むごーっ!むがっむがーっっ!!」とリザードマンに投げられ顔に張り付いているガムの実を剥がすのに悪戦苦闘している。
トム爺のショートスティックも力不足だし、ギャルはすっかりビビって動けない。ニンジャはシバを守って動けない。

「さーて、どうすっか?」と不敵に呟きながら剣を構えた時、俺の隣から凄まじい殺気を感じた。
さっき俺の首筋に槍を当てた時とは比べものにならない殺気を纏ったリザードマンは両足を開くと腰を落とし、あの漆黒の槍を構える。
リザードマンが発する殺気もそうだが、艶のない漆黒の槍から発するオーラも半端ない。

間違いない。
あの槍は…

 —アーティファクト『ファントムナイト』—

漆黒の槍から繰り出される攻撃はまるで夜の世界に踊り狂う亡者の様に素早く翻弄されるという。
そしてその槍の切っ先を目にした時、亡者に引き込まれる様に待っているのは死だ。
噂では聞いた事があるが、まさかこんな所でお目にかかるとは…

その槍とリザードマンの姿に圧倒された俺は思わずゴクリと生唾を飲み込んだ。

その刹那、大きく切れ長で眼光鋭い目をギラリと光らせると、リザードマンから繰り出される槍の連打が空気が切り裂く!!
ボッ!ボボッ!ボボボボボボッッッ!!

ドンドンドンッッッ!!とデモンラグノの体は次々と削り取られる様に無数の穴が開けられ、グシャッと崩れ落ちた。

凄まじい連打!そしてこの威力!
アーティファクト『ファントムナイト』の力もさることながら、このリザードマン只者じゃない。

「にいーにっ!つよーいっ!」と、ニンジャにデモンラグノの蜘蛛の糸から解放されたシバが兄リザードマンの足元に笑顔で飛びついた。
「すげーな!その槍!!ファントムナイトだろ!?初めて見たぜ!」
俺も腕を広げ興奮しながらリザードマンに近ずく。
が、めっちゃ睨んで無言で俺に向かって槍を構える。
「りーおん!りーおんもすごいねっ!ありがと!」と、今度は笑顔で俺の足元に抱きついてきた。うん。可愛い。

「おい…シバから離れろ」
シバを引き離す兄リザードマン。
「あのね?にいーにっ!りーおんはね。クッキーもおいしいんだよ?」
「…なに?」槍を構えながらシバを見る兄。
「うん!おいしいクッキー、たくさんくれるんだ♪」
「そ、そうだよ!!な?クッキー食ったの本当の事だろ?」俺は慌てながらリザードマンに説明する。
こんな奴が敵に回ったらたまったもんじゃない。
「俺たちは迷子のシバを助けようと…!」

リザードマンの弁明に必死になってる途中で俺達は新しい殺気を感じる!
しかも、この気配はただ事じゃない!

あたりを見回すと無数の赤い目!!

どうやらデモンラグノの群れに俺達は囲まれたようだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした

高鉢 健太
ファンタジー
 ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。  ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。  もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。  とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

処理中です...