スーパーカブに乗る異世界の郵便屋さんは冒険がしたい。

げこすけ

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第28話 イダテン現る!! 魅惑のチキチキわくわく大レース!!前編

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バルルーンッッッ
バルッッッ!!

コーナーの立ち上がりで後輪が軽く滑るがお構い無しに俺とナルシスはカブを飛ばす。
10階層『ルーク』から12階層まではワインディングロードが続き未舗装だがレースには持ってこいな道が続く。
ダンジョンが作られた時は馬車が通る事を想定して作られた道だが、この道を作った者もまさか異世界のスーパーカブが走り回るとは思ってもなかったろうな。

俺とナルシスは『スーダンのかまど亭』の「魅惑のわくわくディナーコース」のペアチケットを賭けてデッドヒートを繰り返しているんだけど、11階層に来てからなーんか視線を感じるんだよなー?
俺とナルシスのスピードには、もはやアローラもトム爺もついて来れない。
いくら瞬足のニンジャでもこのスピードにはついて来れないはずだ…

なんだ?誰に見られてるんだ!?

おっと!
それどころじゃなかった!
ナルシスとのレースに勝って、ギャルが差し出したこの賞品のペアチケットをゲットしてセシリーちゃんと「魅惑のわくわくディナーコース」を楽しむんだ♪
ムフフ♡

*******

「ぶわっかもーーーんッッッ!!!!」

出発の朝、旅館『さくら』の支払いカウンターでのトム爺の怒鳴り声は周りの空気が凍る勢いだった…

「あはっ♪あははは…♪
みなさーん♪なんでもないですよー♪
お構いなく~♪…」
と冷え切った周りの空気を和らげようと必死な笑顔で他の旅館のお客さん達に愛想笑いをするアローラ。
支払いカウンターで旅館費の支払い待ちをしてる冒険者や、ロビーでくつろいでいる家族で冒険旅行をしている者達も愛想笑いでアローラに笑みを返していた。

「お前らは一体何をやっとるんじゃ!!
ピンポン球の支払いだと!?
わかっておるのか!?
ピンポン球の素材のアーケロンの卵の希少価値を!?」

「ご、ごめんよ~トム爺…」
と申し訳なく謝る俺とナルシス。

昨夜の旅館のピンポン球全壊事件の頃、トム爺は大好物のカニと酒をたらふく食べて布団の中で極楽の夢の中だったのが、朝食を済ませ出発前の旅館費の支払い時に高額なピンポン球全球の支払いまで請求されて幸せの絶頂から怒りの絶頂に変わったのだ。

「しかも、何もワシに言わずに平気な顔して朝メシを平らげおって!
どういう神経しとるのじゃ!?」

「フッ…
空腹には敵わないからな。
そして、朝食も美味だった」
と全く悪気無く朝食の美味さを思い出しながら軽く髪をかき上げるナルシスのセリフを俺は止めようとしたが、もう遅い。
トム爺の怒りの表情が怖くて見れないよ。
ほんと!空気読まねーよなお前はよ!!

その後、しばらく他の客の目も気にせずトム爺の説教が続いた後、カブに荷物を載せて出発準備をする俺達。
はあ…さすがにあんだけ怒られたら気分も下がるな。

ギャルとアローラは自分達の荷物をクロスカブに載せると携帯用ミラーを覗きながらメイクの手直しをしている。
「あーあ!
すっかり凹んでるよリオンとナルたん」
「まあ、さっすがにねえ?
今回ばかりはねえ?
ほんとアイツらいつまで経っても子供よ」と呆れながらアイシャドウを塗るアローラ。

トボトボと荷物を積み込む俺達を見て、
「もう!
しょうがないなぁ!」と肩から掛けているポーチ兼用のショッキングピンクの矢筒のポケットから何かを取り出すと、場の空気を盛り上げようとギャルが満面の笑みで弾むように話しかけてきた。

「ジャッ♪ジャジャーンッッッ♪
今からレースを♪はっじめるよー♪」

「はあ?
そんな気分じゃねえよ?」と膨れっ面な俺。
「えぇ~??
そんな事言って良いぃのお?」いたずらっぽく探りを入れるような笑顔で俺に話し掛けるギャル。
「賞品は…
なんと!
『スーダンのかまど亭』の『魅惑のわくわくディナーコース』ペアチケットでーすッ♪!!」

「なにーッッッ!!」
意外にも真っ先に食い付いたのはナルシスだった。
「あ、あ、あの伝説の…ペアで食事をすると永遠の愛で結ばれると言われるあの『魅惑のわくわくディナーコース』のペアチケットだと!?
間違いでは無いのだな?ギャルよ!!」

「にっひっひっ!
ホントホント!本物のチケットなのだよん♡」ニンマリと笑うとヒラヒラとチケットを見せるギャル。

「おい?ちょっと待てよ?なんでナルシスがそのチケット欲しがるんだよ?
そんなの無くても十分モテるだろうが?」不思議に思って聞いてみた。
「フッ!確かに俺は美しい!!
だが、噂によるとその料理はとんでもなく美しく美味だと聞く!!
その料理こそ俺の舌に相応わしい!!」

「ペアチケットよ?誰と食べるのよ?」
怪訝そうにアローラが聞いてみた。
「そうだな?最近一緒にメシを食ってないアデルでも誘うか?リオンと一緒に食うのも良いな?」
そのナルシスの言葉がアローラの耳に入ると脳内では薔薇の花びらがブワッと一面に咲き乱れ、その中に俺とアデルとナルシスが上半身裸でテーブルを囲み、微笑みながらディナーを食べている光景が浮かんだ。
「イ、イ、イヤーッッッ!!」と耳に手を当て涙目で首をブンブン振り回すアローラ。
おーい。もういい加減BLネタはやめてくれないかアローラ?

しかし、恋人同士で食べると永遠の愛を約束するディナーだと!?
そんなディナーチケットがあるなんて初耳だ。
もし、そのディナーをセシリーちゃんと食べたら…

( 「はい♡アーンして下さい♡リオンさん♪」
「ア~ン♡」ぱくっ♪
「リオンさん? 美味しい?♡」
「美味ちいでちゅー♡」 )

2人で微笑みながらディナーを食べている甘~い光景が頭に浮かんだ。
ふふ♪
ふふふ♪
ふふふふふふふふふ♪♪

「おーい!頭飛んでる変な奴いるよー?」
と、相変わらずアローラが毒を吐いてるが気にしない♡

「よっしゃああああああっ!!
やろうぜレース!!」
パチンと掌を拳で叩く!!
俄然やる気出てきた!!!!
もうこりゃ俺が勝ってチケット取ってセシリーちゃんのハートも取るしかないでしょ!!!!

「オッケェーイ!!そのチケット私がいただくわ!!
久しぶりにエリンとラブラブするんだもんね♡♡♡!!」
「フム。久しぶりに婆さんと美味いメシを食うのも良いな。よし!ワシもそのレース出るぞ!!」

「な、なにーッッッ!!アローラはともかくトム爺は自分の歳を考えろよ!?
て、いうか、また別の男の名前が出てないか?アローラ!?」

「ごめんねえ?リオン。
私って恋多き女なの♡
チケットはいただくわッッッ!!」
「ワシはまだ若い!!年寄り扱いしおって!!
貴様ら若造には負けはせん!!」

あちゃーッッッ!!
アローラとトム爺の導火線にも火がついたよ?

「ヨシ、ヨシ、ヨッシーッッッ♪
じゃあ!
魅惑のチキチキわくわく大レースはっじめるよーッッッ!!!!」
とブワッ!とギャルが上着を剥ぎ取って投げ捨てると何故か肩にフワフワのシュシュが着いて背中にはドラゴンの小さい翼が着いた胸元を強調した黒いヘソ出しTシャツに黒のミニのプリーツスカート
膝下までの黒いブーツ。
まるで小悪魔なレースクイーンの姿に変わってた。
おまけに髪型もフワフワのクルクルカールの髪がツインテールに結ばれてる!?

「どうなってんだ!?それ!!!!」
突然の変身に思わずツッこまずにはいられない!!
「う~ん。これも魔法の力?かな??」
と頭に手をやりながら照れ笑いするギャル。

「おめえ魔法使えねーじゃんよッッッ!!」

「細かい事は抜き抜きでぇっ!♪
レース…スタートォォオッッッ!!」
と、チェッカーフラッグがギャルの手で振られた!!

突然のスタートに戸惑いながらゴーグルを掛けて一斉にアクセルを吹かしスタートする俺たち!!
このレース絶対負けねえっ!!
チケットは俺のもんだッッッ!!
4台のカブは凄まじい轟音と共に爆走する!!

それにしても、あのチェカーフラッグもどっから出したんだろ??
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