スーパーカブに乗る異世界の郵便屋さんは冒険がしたい。

げこすけ

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第14話 ジェリー夫妻と懲りないギャル。

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「これで全部かい?お父さん」
「あらまあ。すんごいキレイなお洋服でないかい?はあ~…一度は着てみたいねえ」
ヒューマンでいうと30代半ば頃の垂れ下がった目に口元に髭がある人の良さそうな細身のドワーフと、ぽっちゃりした温和な女性ドワーフが馬車にアローラとギャルが爆買いした品物を積み込む。
トム爺の息子夫婦、ジェリー夫妻だ。

アローラとギャルが爆買いした服やバッグ等はジェリー夫妻の馬車に取りに来てもらって「トム爺の郵便屋さん」でひとまず預かってもらう事になった。

しかし、あの2人の金銭感覚には驚いたね。
セシリーちゃんから貰った高額支度金の半分以上の金額になるブランド洋品を勢いで買っちまうとは。
あの2人と付き合ってる男共が気の毒に思えてくる。

さて、2人が爆買いした品物だが、俺達の世界ではみんな生きる事に必死だ。返品などのクーリングオフとかは無い。売ってしまえば商品は買った物の責任になる。
読者諸君の世界の様にメルカ○やヤフ○クと言ったものがあれば良いけど、俺達の世界にはそんな便利な物は無い。
直接、俺たちが欲しい人に売るしかない。
あんなセレブリティな品物が簡単に売れるのか?…
ダメだ。考えただけで暗くなる…

「すまんな。ジェリー」
「いやあ、これくらいなんて事ないよ。これ、頼まれていたお金です。
お父さんもいつも働き詰だし、たまには若い奴らと楽しく冒険するのも良いんじゃないですか?」とお金が入った革袋をトム爺に渡す。この先の旅の資金の追加もジェリーさんに持ってきてもらったみたいだ。
「まあ、お義父さんもたまには若いもんと一緒にハメを外して楽しんできてくだされ。」と、ジェリーさんの奥さんが笑いながら馬車に乗り込む。

「すまん。かたじけない」と薄くなった頭を掻きながら頭を下げるトム爺。

「ジェリーさん。ゴメン!!俺がいながら。仲間の不始末は俺の不始末だ!!」と頭を下げた。
「いや、良いよリオン。
お礼を言うのはこっちの方さ。
ありがとな、リオン」

「リオン達と冒険に出る事が決まってから親父もウキウキしながら今日の出発まで楽しんでカブの整備をしてた。
あんな親父を見るのは久しぶりさ。
ありがとうリオン」と笑顔を見せるジェリーさん。
なんて良い人なんだ!!

「じゃあ、戻るよお父さん。
張り切りすぎてハメを外しちゃダメだよ?」
「なんじゃ!?ハメを外せだの、外すなだの、一体どっちじゃ!!」
「ハハハハハ!
じゃあ、無理せずに冒険を楽しんで来てくださいお父さん。」
「お義父さん。お土産も待ってますからね?」と微笑む奥さん。
2人の馬車は「トム爺の郵便屋さん」までの帰路についた。

ジェリー夫妻の馬車を見送っていると、メイクを直しに行っていたアローラとギャルが戻ってきた。

「あ、ジェリーさん帰っちゃった?
お礼言いたかったのに。
帰ったら言わなくちゃだね」
と、アローラは出発時の冒険者の姿に戻っている。流石に反省してる様だ。

「ぜ~ったい!モンスターとか狩りまくって、宝石も探しまくって、あの服とバッグをウチらのモンにしようね!!アロっち!!」
と、ギャルはあんまり懲りてなさそう
…だ…

ん?あれ?

「おい?ギャル!!お前!?
ちゃっかり上着の中にさっきの服着込んでんじゃねーよっ!!!!」

「あちゃ。バレたか?」
と、上着の中のブラウスが胸元を強調した高そうな服に変わってる。
「アロっちにも気に入った服だけは着ようよって誘ったんだけどねえ?
なんか、ノリ悪くってさー」

「ははは…さすがに大人としては、それはちょっとねえ」と、気まずそうに愛想笑いをするアローラ。

「ほんと!反省しねーな!?お前は!!
なんだ!その胸が見えそうな服は!?」

「アロっち!リオンがかわいいって!!キャハ♪」
「どんな耳してんだーッッッ!!」

「フッ まあ、良いではないか?仲間が美しくなるのはとても良いことだぞ?」と、鏡を見ながら髪型を整えるナルシス。
「お前もさっきからずっと鏡で自分を見てるけど、よく飽きないよな?」とさすがの俺も呆れてきた。

「なにを言っている?リオン」とキョトンとするナルシス。
「飽きるわけがない。俺こそが究極の美だからな!!」とドヤ顔だ。

「もう、いいわ…」
疲れた。出発前から疲れた。

「とりあえず、出発の準備しようぜ?
早いとこ10階層の宿屋でゆっくりしたいよ」とカブに跨る。

「そういやニンジャはどうした?」

シュッ!! スタッ!!

と、背後に何かが降りた!!

「うわっ!!なんだっ!?」とカブのおにぎりBOX越しに後ろを振り向くと

シュッ!! と何かが消えた。

「はは……  はははは。 …元気みたいだな」
「…出発しようか。」ははは…

はあ…

くっ…ダメだダメだ!!
パーンとほっぺを両手で叩く!!
気を取り直して再出発だ。

一斉にみんなのカブのエンジンが掛かった。
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