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第6話 セシリーの頼み事。

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ふふっ…読者諸君は天使を見た事があるかい?

今、俺の目の前に天使がいる。

******************

ダンジョンの10階層「ルーク」の配達が終わり、「トム爺の郵便屋さん」に帰ると、「スーダンのかまど亭」の看板娘セシリーちゃんが事務所の長椅子に座っていた。

肩に掛かる赤毛に清楚な顔立ち。にこっと柔らかい笑顔でいつも話しかけてくる。チャームポイントの八重歯がまた可愛い♡
いやあ~天使っているんだね。ニヤケ顔が止まらん。ニヤニヤ。

「コホン。リオンも帰ってきた事だし、お話を伺いましょうかな?セシリーさん」とトム爺。

「すみません。お忙しいのに。あの~実はリオンさんにお願い事がありまして…」

「なに⁉︎なに⁉︎セシリーちゃん!!」

「ちょっと!!がっつくな!!ほんとあんたヒューマンの女の子好きねえ~」とアローラ。
「ヒューマンの女の子なら誰でも好きじゃねーよ!変な事言うな!!」

「あ、あ、あの…~…」

「だって本当の事じゃない!!この前だって…」

「あのッッッ!!ア、ア、アローラさん⁉︎   わ、わ、わ、私、リオンさんとお、お話してるんですけど!!」
と、セシリーちゃんが話を遮った。
よほど勇気を振り絞ったのかお顔が真っ赤だ。

「え…   あ、あ…    ゴ、ゴメンね?セシリーさん。 わ、私お茶淹れてくるね?」とそそくさと席を立つアローラ。

「フッ で、リオンに話とは?」手持ちの鏡で自分の髪型をチェックするナルシス。

「実はお手紙を届けて欲しいんです」

「うちは郵便屋さんじゃからの?お安いご用じゃ。じゃが、なぜリオンなんじゃ?」

「俺がそれだけセシリーちゃんに頼られてるって事だろ?」とドヤ顔の俺。フフン♪

「お前はだまっとれ!」

シュン…

「皆さんがうちのお店によくいらしてくれて、リオンさん達が冒険者だって知ってます。それで…冒険者でもあるリオンさんにならって思って、このお手紙を届けて欲しいんです」と大きめの封筒を差し出す。

「ふむ。冒険者のリオンに届けて欲しい手紙とな?」差し出された手紙を受け取るトム爺。

カチャカチャ。アローラがテーブルにみんなの分の紅茶を置く。

「ダンジョン最下層にいる父への手紙です」

「ダンジョン最下層⁉︎じゃと⁉︎」

「はい。父は世界を渡り歩く人でした。いつも父の周りには父を頼る人達が訪れて、その人達に応えるように父は働いていました」

「人望の厚いお父さんだったのね」

「はい。いつも父はみんなの為に働いていました。
母の体に病魔が巣くってることも知らずに…」

「………父が母の病気を知った時にはもう手遅れでした。母の最後を看取った父は、その後誰にも会わなくなりダンジョンの最下層に籠るようになったのです」

「うっうううっっ!!う~ッッッ!!悲しい!!悲しすぎるぞ!!その悲しさもまた美しい!!  うううッッッ~!!」と、ハンカチを片手にナルシスは号泣モードに入った。人の不幸な話を一緒に悲しむナルシスを俺は好きだ。

「あれから、私も父とは会っていません。母の死を父に責めた私です。会おうと思っても会ってくれないでしょう。ですから、お手紙に父に会いたい。帰ってきて欲しいと文を込めました。最下層までのダンジョンは危険なのは承知です!!でも、リオンさんなら!!と思って…     その手紙をどうか父ヴェラードに届けて欲しいのです…」
「ヴェラード?ふむ。どこかで聞いた覚えのある名じゃな。」と考え込むトム爺。

「ウワーッッッ!!うわあぁぁあぁぁ!!」急にナルシスの大号泣が始まった!
「なんて悲しい話なの⁉︎ダメ!!私も涙が止まらな~いッッッ!!うえ~んッッッ!!」お前もかいッ!!アローラ!!

すっかり涙するタイミングを逃してしまった…

「ふむ。セシリーさん。事情はわかりました。
しかし、最下層まで行くとなるとそれなりに費用がかかるんじゃ。我々が持っているダンジョン通行証は20階層の「キング」まで。その先は配達に行こうにも危険が大きいので、お客さんの費用持ちになる。最下層までの費用は1人分でも高額じゃぞ?」
「それに、リオン1人では行かせれんのでパーティでの行動にもなる。その人数分の最下層までの通行券、装備、食料、等の必要経費。そして我々への危険手当。
結構な値段になるが、セシリーさんに払えるかの?」

「おい⁉︎おい⁉︎それぐらいまけてやれよ!!こんな可哀想なセシリーちゃんの頼み事だぞ!!」

「黙っとれい!!このバカモンが!!
わしはお前らの雇い主じゃ。その雇い主がお前達の身の安全と生活、その為の保険として当然の対価を求めるのは当たり前の事じゃろう⁉︎ 頭を冷やせリオン!」

そりや当然の事だ。しかし…  クソっ!!頑固ジジイ!!

「大丈夫です!それ、全て私が払います!」

「え~ッッッ!!!!!!」と、一同。

「フフフ。父の預金は私も使えるようになってるんです。お父さん、お金持ちなんですよ?フフフ。 
全てお支払いします。
今日も頭金として少々ですがお持ちしました♡」 
と、金貨の入った袋をテーブルに置いた。
ドスン!
「ちょ?ちょっと⁉︎これ、300万ブールはあるわよ!!」
目がキラキラしてるアローラとトム爺。

「あの~…とりあえずのお金なんですが、足りますか?」

「足ります!足ります!!足りてます!!!!」全員大興奮だ!!

「良かったァ~私、あんまり世間の事知らなくて。足りなかったらどうしようかと思ってました~」
「足りなかったら遠慮なく言ってくださいね?
あ、成功報酬はちゃんと別に用意してありますからァ」と手を重ねて満面の笑みで微笑む。 
天使!!
どっかのアバズレとは大違いだ!

「あ⁉︎なんか言った!?」
「な、なんも言ってねーし!!」ホント地獄耳!!

「ふむ。商談成立じゃな。」

ダンジョン最下層までセシリーちゃんの手紙のお届けか?
パーティでの行動だ。

ん?

ちょっと待てよ?

「これってよ?タダで最下層まで冒険できるって事じゃんか!!」

「キャーッッッ!!久しぶりの冒険!!久しぶりの最下層!!
やったわ!!セシリーさん大好き!!」セシリーちゃんに飛びつくアローラ。
う、う、俺もハグしたい…
「やったな!リオン!!美しき冒険の再開だ!!!!」
俺の肩に腕を掛けて硬く握りしめるナルシス!俺もナルシスも最高の笑顔だ!!

「ふむ。よし。わしも行こう」

「え~ッッッ⁉︎」と一同大ブーイングだ。

「何を言っとる⁉︎最下層までの仕事じゃ。装備も多くなる。道中のカブのトラブルや整備も必要じゃ。わしはサポート魔法は使えるから、その分アローラの魔力の消費も抑えれるだろう」

まあ、確かに前回最下層まで行った時はほとんど装備も尽きてボロボロになりながら帰ったんだっけ?手柄も上級モンスターの皮とちょっとした宝石を手に入れるので精一杯だった。

「確かにサポートメンバーがいる方がいいな。トム爺頼むよ」

「うむ」と手を握り合う。トム爺の目が金貨みたいになってるが気にしないでおこう。成功報酬の分前狙いが見え見えだ。

「フフフ。リオンさん冒険に出れるのがそんなに嬉しいのですね?もう私の事なんて忘れてるみたい?」と微笑みながらみんなを見渡すセシリーちゃん。

「よーしっ!!まずは装備の準備とアイツらに連絡だ!!」

「アローラ!ギャルにニンジャに連絡してくれ!!」
「オッケェーイ!!」

ギャルにニンジャ?誰だって?

俺たちのパーティの大切な仲間さ。
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