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第3話 ナルシスとアローラ
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「トム爺、帰ったよ。なんだ、誰もいないのか」
納屋を改装したガレージの中にスーパーカブを止め、配達カバンを近くの机に置く。
「トム爺の郵便屋さん」はその名の通りトム爺がやってる郵便屋さんだ。
年季の入った建物にはガレージとお届け物を引き受ける窓口。その奥には仕分けする作業場などもある。
「相変わらず防犯意識が低くねえ?泥棒に入られても文句言えねえぞ」
と、ため息を吐きゴーグルを首元に下ろした…瞬間!!
ドカーンッッッ!!
ガレージの扉をぶち破ってスーパーカブが飛び込んできた!!
「うわあッッッ!!」
必死に避けるとカブに乗ったその男は
「ふむ。やはり、ブレーキの効きが甘い…
ぐはあっっ!!」
セリフの途中でカブに乗った男はブロンド女子のボディブローでくの字になって吹き飛んでいく!!
「扉を壊すなと何度言ったらわかるの!!」
相変わらず見事なパンチだ…と後退りしてると、
「おおー!リオン!!もう戻っていたのか?さすが俺が認めた男だな」とボディブローがまるで効いていないようにその男は俺に話しかけてきた。
金色のくせ毛のショートヘアで恐ろしく整ったその顔は、どっかの国の王子か貴公子のようだ。男の名はナルシス。
俺の相棒。同じヒューマンで冒険者だ。
美しいものと自分が大好きなナルシスは名前の通りナルシストで鏡を見れば自分の顔や髪型を気にしている。
「ちょっと!人の話聞いてる⁉︎」
先程ナルシスに見事なボディブローを叩き込んだのはアローラ。
「トム爺の郵便屋さん」の受付嬢のエルフだ。
ブロンドをなびかせスタイル抜群の魔法が得意な彼女だが、どちらかというと武闘派だね。
「あ?なんか言った?リオン!!」
「なんも言ってねーよ」
あっぶねー相変わらずの地獄耳だ。
「それよりリオン。いつまで私達ここでアルバイトしなきゃなんないのよ?もうそろそろ次の冒険に行くぐらいのお金は貯まったんじゃない?」
「フッ、美しき冒険の日々が俺たちを待っているのではないかリオン?」
「まだだ。まだ最下層まで行くには金が足りね~。今行ってもダンジョンの半分まで行ければ良いところだぜ。」
「本当、あの通行料さえなければねえ。
あの欲張り王め!」と、手のひらを叩いて悔しがるアローラ。
そう、ナルシスとアローラは俺のパーティの仲間だ。
仲間と何度もヘリオスのダンジョンに挑んでるが、なかなか金銀財宝ザックザクとはいかない。
まだ見つかってない財宝もあるし、レベルの高いモンスターを倒して賞金を稼ぎたいが、何にしろ最下層まで行くとなると装備も簡単にはいかない。
結局、金なんだよね。
「なんじゃ?騒がしいの?
なんじゃ!!また扉を壊したのか⁉︎ナルシス!
扉はカブでノックするんじゃない。手でノックするんじゃ」
奥から初老のドワーフが出てきた。
「トム爺の郵便屋さん」の主人。
トム爺だ。
「フッ、前にも言ったがブレーキがエクセレントではないのだ」
「前にも言ったが、ブレーキは自分で調整できるがの?」
そう言いながら前輪のブレーキ調整のネジを締め込む。
「扉の修理代はお前らの給料から引いとくからの?」
「嘘だろ⁉︎ちょっと待てよ!!」
「それは美しくない!!」
「そんなの魔法で簡単に治るじゃない⁉︎なんなら私が治すわよ!!」
「ダメじゃダメじゃ!!ここでの魔法はわしが許さん!!全体責任じゃ!!」
「そんな?嘘だろ…?」
「ちょっと待ってよ!!シェリルの新作のワンピースが出るのよ~お願いだから私の給料からは引かないで~」もはや号泣状態のアローラだ。
「ふう…お前らは冒険者だろう?何が起こってもそれは自分達で解決するのじゃ。それがパーティの絆を深めるのはわかっておろう?」
「でも、でも~!シェリルのワンピ~…」
気の毒なアローラだが、トム爺は一度決めた事は曲げない。諦めるしかない。
「はあ~…しょうがない。ここは諦めていつもの店に行って酒でも飲もう。」
「うむ。スーダンのかまど亭だな?リオン。あそこの飯はエクセレントだ。」
「もう、今日は飲みまくるわよ!!リオン良いよね⁉︎」
「お、おう。ほどほどにな」
やれやれ、こんな調子じゃいつになったら冒険にいけるのやら。
今夜は「スーダンのかまど亭」の看板娘セシリーちゃんに癒してもらうしかないな。
納屋を改装したガレージの中にスーパーカブを止め、配達カバンを近くの机に置く。
「トム爺の郵便屋さん」はその名の通りトム爺がやってる郵便屋さんだ。
年季の入った建物にはガレージとお届け物を引き受ける窓口。その奥には仕分けする作業場などもある。
「相変わらず防犯意識が低くねえ?泥棒に入られても文句言えねえぞ」
と、ため息を吐きゴーグルを首元に下ろした…瞬間!!
ドカーンッッッ!!
ガレージの扉をぶち破ってスーパーカブが飛び込んできた!!
「うわあッッッ!!」
必死に避けるとカブに乗ったその男は
「ふむ。やはり、ブレーキの効きが甘い…
ぐはあっっ!!」
セリフの途中でカブに乗った男はブロンド女子のボディブローでくの字になって吹き飛んでいく!!
「扉を壊すなと何度言ったらわかるの!!」
相変わらず見事なパンチだ…と後退りしてると、
「おおー!リオン!!もう戻っていたのか?さすが俺が認めた男だな」とボディブローがまるで効いていないようにその男は俺に話しかけてきた。
金色のくせ毛のショートヘアで恐ろしく整ったその顔は、どっかの国の王子か貴公子のようだ。男の名はナルシス。
俺の相棒。同じヒューマンで冒険者だ。
美しいものと自分が大好きなナルシスは名前の通りナルシストで鏡を見れば自分の顔や髪型を気にしている。
「ちょっと!人の話聞いてる⁉︎」
先程ナルシスに見事なボディブローを叩き込んだのはアローラ。
「トム爺の郵便屋さん」の受付嬢のエルフだ。
ブロンドをなびかせスタイル抜群の魔法が得意な彼女だが、どちらかというと武闘派だね。
「あ?なんか言った?リオン!!」
「なんも言ってねーよ」
あっぶねー相変わらずの地獄耳だ。
「それよりリオン。いつまで私達ここでアルバイトしなきゃなんないのよ?もうそろそろ次の冒険に行くぐらいのお金は貯まったんじゃない?」
「フッ、美しき冒険の日々が俺たちを待っているのではないかリオン?」
「まだだ。まだ最下層まで行くには金が足りね~。今行ってもダンジョンの半分まで行ければ良いところだぜ。」
「本当、あの通行料さえなければねえ。
あの欲張り王め!」と、手のひらを叩いて悔しがるアローラ。
そう、ナルシスとアローラは俺のパーティの仲間だ。
仲間と何度もヘリオスのダンジョンに挑んでるが、なかなか金銀財宝ザックザクとはいかない。
まだ見つかってない財宝もあるし、レベルの高いモンスターを倒して賞金を稼ぎたいが、何にしろ最下層まで行くとなると装備も簡単にはいかない。
結局、金なんだよね。
「なんじゃ?騒がしいの?
なんじゃ!!また扉を壊したのか⁉︎ナルシス!
扉はカブでノックするんじゃない。手でノックするんじゃ」
奥から初老のドワーフが出てきた。
「トム爺の郵便屋さん」の主人。
トム爺だ。
「フッ、前にも言ったがブレーキがエクセレントではないのだ」
「前にも言ったが、ブレーキは自分で調整できるがの?」
そう言いながら前輪のブレーキ調整のネジを締め込む。
「扉の修理代はお前らの給料から引いとくからの?」
「嘘だろ⁉︎ちょっと待てよ!!」
「それは美しくない!!」
「そんなの魔法で簡単に治るじゃない⁉︎なんなら私が治すわよ!!」
「ダメじゃダメじゃ!!ここでの魔法はわしが許さん!!全体責任じゃ!!」
「そんな?嘘だろ…?」
「ちょっと待ってよ!!シェリルの新作のワンピースが出るのよ~お願いだから私の給料からは引かないで~」もはや号泣状態のアローラだ。
「ふう…お前らは冒険者だろう?何が起こってもそれは自分達で解決するのじゃ。それがパーティの絆を深めるのはわかっておろう?」
「でも、でも~!シェリルのワンピ~…」
気の毒なアローラだが、トム爺は一度決めた事は曲げない。諦めるしかない。
「はあ~…しょうがない。ここは諦めていつもの店に行って酒でも飲もう。」
「うむ。スーダンのかまど亭だな?リオン。あそこの飯はエクセレントだ。」
「もう、今日は飲みまくるわよ!!リオン良いよね⁉︎」
「お、おう。ほどほどにな」
やれやれ、こんな調子じゃいつになったら冒険にいけるのやら。
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