上 下
3 / 21

敬語と名前

しおりを挟む
…まず最初に何しよう。あ、でもその前に1つ言っとかなきゃ!


「あのね、マリー。私と二人きりの時は、もっと砕けた感じで話して欲しくて。それと、お嬢様、じゃなくて、ロゼリアって呼んで欲しいの!!」

前世はただの一般庶民だったのだ。四六時中敬語を使われ様付けされると疲れてしまいそうである。

流石に最初から敬語なし!は拒否されそうだから、ここは折衷案として砕けた話し方を提案してみる。ゆくゆくは敬語なしで話して貰いたいが……………うん、頑張ろう、私。


「砕けた話し方、で御座いますか?……あの、恐
    れながら、それは一体どのような感じなので
    御座いますか?そしてお嬢様を呼び捨てには 
    出来ません、申し訳ありません…………」

心底困った顔を向けられ、心が痛む。しかし、私も撤回する気はない。何としてでも了承させてみせる!!

「砕けた話し方、と言うのは、語尾に『です・ます』を付けるくらいの話し方の事。本当は、ですますも要らないけど、それだと絶対頷いてくれないでしょ?だから砕けた感じで話して欲しいの。あと、名前で呼んでくれた方が私も安心できるって言うか……………どうしても駄目?」

「えっと…………」

お!!承諾して貰えそうな気配がする。
良いぞ~良いぞ~!よし、だめ押しで…


「お願い、マリー」
言いながら少し涙ぐみ、上目遣いでマリーを見る。大女優顔負けの演技を披露する私である。


「ぐっ………可愛すぎる…………何でも言うこと聞いちゃいそうだわ………ハアハア」


何やらマリーが言っているが、相変わらず声が小さいので聞き取れない。心なしか息も荒くなっているような……?気のせいかな。それにしてもマリーは声が小さい方なのだろうか?

私は前世では、残念ながら声がよく通ってしまう方だったのでナイショ話など勿論出来なかった。授業中に喋っても、私ばかり怒られた記憶が………………うん、思い出すのは止めようか。



「ロゼリア様」
「うえっ!?……は、はい」

いけない、完全に気を抜いてた。やばいやばい。
目の前には意を決したようにこちらを見るマリー。

「お嬢様、いえ、ロゼリア様と二人きりの時は、なるべく砕けた話し方になるように努力致します。……しかし、やはり呼び捨ては…」


おおー!やったね!砕けた話し方にしてくれるって!やっぱり私の名演技が効いたのかなぁ。あーでも呼び捨てはハードル高いのか、やっぱり。あまり無理させるのもな~。

ーーーーーあ、それなら…


「『ロザリー』って呼ぶのはどう?ロゼリア、じゃないから気持ち的にも呼びやすいと思うし、あだ名みたいで嬉しいって言うか、その……………」


あ、何か自分で言い始めたくせに、今ものすごく恥ずかしい……。コレ絶対耳まで赤くなってる気がする。それによく考えると、自分からあだ名を提案する人ってあんまり居ないよね…。
マリーだって下向いちゃってるし…。あ~どうしようかなぁ。


「………分かりました。そこまで仰られるのなら『ロザリー』と、呼ばせていただきますわ!」

「えっ!!本当!?本当に!!?」

「はい」

「ありがとう、マリー。大好きだよ!」


そう言ってにっこり微笑むと、何故かマリーが照れだした。どうしたんだろ。


「何と勿体ないお言葉…!!!ありがとうございます!」

「よし、じゃあ今から二人きりの時は『です・ます』口調ね!あと、『ロザリー』って呼ぶこと!良い?」

「はい、了解です!!」


ふ~~~~~~第一関門突破かな!これで気苦労で倒れる未来は回避できただろう。良かった良かった!

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

男女比が偏っている異世界に転移して逆ハーレムを築いた、その後の話

やなぎ怜
恋愛
花嫁探しのために異世界から集団で拉致されてきた少女たちのひとりであるユーリ。それがハルの妻である。色々あって学生結婚し、ハルより年上のユーリはすでに学園を卒業している。この世界は著しく男女比が偏っているから、ユーリには他にも夫がいる。ならば負けないようにストレートに好意を示すべきだが、スラム育ちで口が悪いハルは素直な感情表現を苦手としており、そのことをもどかしく思っていた。そんな中でも、妊娠適正年齢の始まりとして定められている二〇歳の誕生日――有り体に言ってしまえば「子作り解禁日」をユーリが迎える日は近づく。それとは別に、ユーリたち拉致被害者が元の世界に帰れるかもしれないという噂も立ち……。 順風満帆に見えた一家に、ささやかな波風が立つ二日間のお話。 ※作品の性質上、露骨に性的な話題が出てきます。

【完結】推しの悪役にしか見えない妖精になって推しと世界を救う話

近藤アリス
恋愛
「え、ここって四つ龍の世界よね…?なんか体ちっさいし誰からも見えてないけど、推しから認識されてればオッケー!待っててベルるん!私が全身全霊で愛して幸せにしてあげるから!!」 乙女ゲーム「4つの国の龍玉」に突如妖精として転生してしまった会社員が、推しの悪役である侯爵ベルンハルト(通称ベルるん)を愛でて救うついでに世界も救う話。 本編完結!番外編も完結しました! ●幼少期編:悲惨な幼少期のせいで悪役になってしまうベルるんの未来を改変するため頑張る!微ざまあもあるよ! ●学園編:ベルるんが悪役のままだとラスボス倒せない?!効率の良いレベル上げ、ヒロインと攻略キャラの強化などゲームの知識と妖精チート総動員で頑張ります! ※推しは幼少期から青年、そして主人公溺愛へ進化します。

美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました

市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。 私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?! しかも婚約者達との関係も最悪で…… まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!

美醜逆転世界でお姫様は超絶美形な従者に目を付ける

朝比奈
恋愛
ある世界に『ティーラン』と言う、まだ、歴史の浅い小さな王国がありました。『ティーラン王国』には、王子様とお姫様がいました。 お姫様の名前はアリス・ラメ・ティーラン 絶世の美女を母に持つ、母親にの美しいお姫様でした。彼女は小国の姫でありながら多くの国の王子様や貴族様から求婚を受けていました。けれども、彼女は20歳になった今、婚約者もいない。浮いた話一つ無い、お姫様でした。 「ねぇ、ルイ。 私と駆け落ちしましょう?」 「えっ!? ええぇぇえええ!!!」 この話はそんなお姫様と従者である─ ルイ・ブリースの恋のお話。

私が美女??美醜逆転世界に転移した私

恋愛
私の名前は如月美夕。 27才入浴剤のメーカーの商品開発室に勤める会社員。 私は都内で独り暮らし。 風邪を拗らせ自宅で寝ていたら異世界転移したらしい。 転移した世界は美醜逆転?? こんな地味な丸顔が絶世の美女。 私の好みど真ん中のイケメンが、醜男らしい。 このお話は転生した女性が優秀な宰相補佐官(醜男/イケメン)に囲い込まれるお話です。 ※ゆるゆるな設定です ※ご都合主義 ※感想欄はほとんど公開してます。

転生したので猫被ってたら気がつけば逆ハーレムを築いてました

市森 唯
恋愛
前世では極々平凡ながらも良くも悪くもそれなりな人生を送っていた私。 ……しかしある日突然キラキラとしたファンタジー要素満載の異世界へ転生してしまう。 それも平凡とは程遠い美少女に!!しかも貴族?!私中身は超絶平凡な一般人ですけど?! 上手くやっていけるわけ……あれ?意外と上手く猫被れてる? このままやっていけるんじゃ……へ?婚約者?社交界?いや、やっぱり無理です!! ※小説家になろう様でも投稿しています

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

処理中です...