あやふや昔話

鳳来 悠

文字の大きさ
上 下
2 / 2

猿かに合戦?の話

しおりを挟む
 昔々、ある戦乱の時代のお話です。
 世は二つの派閥に分かれて対立していました。


 一方を猿派、他方をかに派と人々は呼びました。猿派はすばしっこく、高低さがあるところでは負けなしでした。かに派は集団戦法が得意で、武器を使うのに長けていました。

 対立は20年にも及びました。だんだん両方とも疲弊してきたので、決着をつけるべく両派閥のトップによる秘密の会合の場が設けられました。腹をわって話そうとしたので勿論二人だけです。
 話し合いは夜通し続きました。議論はどんどん白熱していきました。


 そして気がついた時には…………。






 後に彼らはこう語ります。

 猿のトップ『……あの時は、酒に物凄く弱いくせに相手に見栄を張ろうとして、飲みすぎてベロンベロンに酔ってしまったんだ。そして気がついた時には、もう、手遅れだったんだ……。まさか相手も自分と同じくらい酒に弱いなんて思わないだろ?むしろ強いらしい、なんて噂を聞いたこともあったからなおさら。

 ……実は始まって1時間くらいで、もう記憶は途切れているんだ。だからその後は何を話していたのかは分からない。――え?最初の1時間は何を話していたのか、って?……あ、いや、別に、ふ、普通の事を話していただけだ!だ、だから、普通の事だって!!えっ、と、その……あーもう何でも良いだろ!?そもそも秘密の会合だから内容も人に言ってはいけない決まりだから!もう二度と聞くんじゃないぞ。絶対だからな!』


 かにのトップも同じような事を言っていました。



 一体彼らに何が起こったのでしょうか?







 実は、気付いた時には彼らは入籍して結婚披露宴の直前だったのです。そうなのです、あの夜彼らは酔っぱらった後お互いに告白して婚姻届けに記入し、役場に提出しに行ったのです。



 猿『……ずっとお前が好きだった。でも対立している派閥同士での結婚なんて皆に反対されるから諦めていた。……だがこの対立に決着がつけば、お前と一緒になれる。……すまん、こんな機会二度と無い気がしてな、つい言っちまった。俺の気持ちが迷惑なら忘れてくれ。』


 かに『………………』


 猿『……おい、何か言ってくれよ。別にお前を困らせたくて言った訳じゃないから。望みがないならきっぱり振ってもらって構わない。』


かに『……しも………き…』


 猿『何だ?しもきって……下北沢の事か?』


 かに『そんなわけないでしょ!何でこのタイミングで下北沢なのよ!!そもそも下北沢ってどこなのよ!……そうじゃ、なくって、……私も、 ずっと……。ずっと、あんたの事が好きだったの……!』


おおー。両思いだったのですね。

この後テンションが上がった二人は、どこからともなく落ちてきた証人の欄が記入済みの婚姻届けに名前を書き、ルンルン気分で役場に提出しに行ったそうです。
 何故証人の欄が記入済みだったのかは……詮索しないでおきましょう。



 こうして対立は無くなり、新たに一つの臼派が出来ました。
 そして、平和な世の中にするべく頑張っていったそうです。

  めでたしめでたし!



 ――実は彼ら以外の他の人は、だいたい彼らが好きあってる事に気づいていたそうです。ただ彼らの性格からして、素直に思いを認めないだろうと皆が思っていたのでひたすら見守っていたそうですよ。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

「おまえを愛することはない!」と言ってやったのに、なぜ無視するんだ!

七辻ゆゆ
ファンタジー
俺を見ない、俺の言葉を聞かない、そして触れられない。すり抜ける……なぜだ? 俺はいったい、どうなっているんだ。 真実の愛を取り戻したいだけなのに。

冤罪で追放した男の末路

菜花
ファンタジー
ディアークは参っていた。仲間の一人がディアークを嫌ってるのか、回復魔法を絶対にかけないのだ。命にかかわる嫌がらせをする女はいらんと追放したが、その後冤罪だったと判明し……。カクヨムでも同じ話を投稿しています。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

〈完結〉遅効性の毒

ごろごろみかん。
ファンタジー
「結婚されても、私は傍にいます。彼が、望むなら」 悲恋に酔う彼女に私は笑った。 そんなに私の立場が欲しいなら譲ってあげる。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

処理中です...