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おれの災難な毎日(2)

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「こいつらがすまんなぁカケル。どうか気を悪くしないでくれ」
「あはは、大丈夫ですよ。元の世界でもこういうことあったので」

大変不本意だけどな!正直慣れている自分がいることも嘘ではないのだ。おれだってもう少し成長する予定だったのだがこればかりはどうにもならなかった。

「本当なのか…それにしては成長しなかったんだな…可哀想だなオマエ」
「こーら!さっきおじいちゃんに怒られたばっかりでしょ?それはそうと驚いちゃってごめんねぇ。許してくれる?」

白い方はこてんと首を傾げておれを見る。イケメンは何してもイケメンだしなんなら子犬のような可愛さまであるのはズルくないか?くそっ、少し可愛いと思ったおれの負けだ、許した。でも赤い方のやつはあとで校舎裏な。

「本当に気にしなくて大丈夫ですよ。それよりお二人のことはなんて呼べばいいですか?」
「僕はイース・アスベット。気軽にイースって呼んでねぇ。ラーガの双子の兄です。それと僕たち同い年なんだから敬語もいらないよ!ほら次はラーガの番、それにさっきのことちゃんと謝らなきゃダメだよ」
「あ~~~もう!俺はラーガ。ラーガ・アスベットだ。それとさっきは………………た」
「ラーガ、そんなんじゃカケルに聞こえないよ?」
「分かってる!おいカケル、さっきはその……勘違いして失礼なことを言って……………その…」
「なんですか?」
「だから、すまなかったと言ってるだろ!!!!本当は聞こえてたんじゃないのか!?」
「いえ、すみません聞こえてなくて」

聞こえてなかったのは事実だけどなんとなく謝ってるような気はしてました。でもオマエがムカつくから分からないふりしてました。って言えたらな…もちろんそんなことはおじいさんの手前言わないが!もしこの場におじいさんが居なかったら言ってたかも。

「よく謝れたね、偉いよラーガ」
「うるさい!俺を子ども扱いするな!」
「はいはい」
「ラーガさんは思ってたより子どもっぽいですね」
「そうなんだよぉ~!可愛い僕の弟なんだ!カケルも良かったら仲良くしてあげてね」
「分かりました」
「おい!!俺抜きで話をすすめるな!」
「すぐ怒るところは直した方がいいですよ?ほら、笑顔ですよ笑顔」
「ラーガは笑うともっと可愛いんだよぉ」
「うるさいぞ!!!」

顔を真っ赤にして怒るラーガは弟って感じだなぁ。そういえばおれの10歳になる弟、煌太こうたみたいでちょっと微笑ましい。基本的に煌太とは年の差もありそこまでケンカするようなことにはならない。それに煌太はいつも穏やかで優しく、おれに余ったお菓子をいつも譲ってくれたっけ。でも怒るときは顔を真っ赤にして怒るからそこはラーガに少し似てるな。もちろん普段の性格は煌太の圧勝だが。しかしラーガはすぐに怒る性格は本当に直した方が良いと思うんだが。これから先、そんなにすぐ怒りの沸点に達していたら身が持たないのでは?

とそこで、先ほどから少し姿を消していたおじいさんがランプを持って部屋に戻ってきた。

「こらこらお前たち、カケルをあまり困らせるんでない。カケルはこの世界に来たばかりで疲れてるんだからそろそろ解放せんか!」
「だってじいちゃん!コイツが!」
「ラーガ!!!…わしの言いたいことは分かるな?」
「“日々の生活は体が基本。健康な身体は充分な休息から”……だろ」
「そうだ。わかっているならいい。イースもそろそろ休みなさい。カケルはこの後部屋を案内しよう。何か必要なものがあればその都度遠慮せず言いなさい」
「あ、ありがとうございます!」
「はーい!じゃあカケル、またあとでね。ラーガもいくよ!みんなおやすみぃ」
「あ、はい。おやすみなさい」

相変わらずまだ少し不服そうな顔をしたラーガを引っ張りながらイースは奥の部屋に向かった。不思議なことにイースが向かった先は真っ暗闇だったのだがイースたちが近づくと自動で周囲が明るくなった。こっちの世界にも人感センサー的なライトがあるのだろうか?

それにしてもこういうの見るとイースはお兄ちゃんだなって思う。おれもたまに寝ちゃった煌太をベッドまで運んだことあったっけな。しかもおれの服の袖を離さないからおれも一緒に寝ちゃったんだった。もし反抗期に入ったら同じベッドで寝てくれなくなるんだろうな……それまでにたくさん煌太と遊ぼう。クソ兄貴なんて言われたら一週間は引きずる自信しかないよ煌太…。

「さて、カケルよ。部屋に案内するからこのランプを持って着いてきなさい。先ほども説明したと思うが、この世界は“マワー”と呼ばれる魔法の力で動かすものがほとんどだ。カケルはこの世界に来たばかりだから少しの間移動するときはこのランプを持っていなさい。このランプにマワーが貯めてあるからとりあえず生活には困らんはずだ。詳しいことは明日話そう。今日はゆっくりおやすみ」
「ありがとうございます!暫くお借りします」

受け取ったランプはジャ○プ半分程度の大きさで、濃い緑色をした四角いランプだった。中にオーロラのような不思議な色の灯りが見え、ほんのり温かい。さらに見た目に反しとても軽かった。左右に半円型の持ち手もついている。一気に別世界に来た感じがしてワクワクしたのは言うまでもない。

その後おじいさんに連れられ部屋へ。なんだかんだ大変な1日を過ごし眠かったおれは何も考えずランプを扉近くの机に起き部屋の一番奥、円形の窓の下にあるベッドに近づく。服は成人式の後でもちろんスーツ姿のままなので、ありがたいことにベッドの上に用意されていた白っぽい服に素早く着替えさせてもらった。スーツはベッド近くのローテーブルに皺になったら大変なので畳んで置く。
おじいさん、ほんと~~~に何から何までありがとうございます!!!明日からしっかり働きます!!!という思いを胸に抱きつつ、ふかふかのベッドにダイブからの即寝で異世界生活1日目は終了したのだった。
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