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21.仲違い
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私は桜さんと別れたあと、食材を持って帰宅していた。そしてすぐさまスマホでウイークリーマンションを探す。
最初からこうしていればよかったんだ。
私がヤマトとのことで傷ついてたから、ふらふらとトモキの家に来てしまっただけで、誰かに側にいて欲しくて、トモキに彼女がいるかどうかも聞かずに部屋に転がり込んでしまった。
でも。まさか自分の部屋に呼んでおきながら、本命の彼女が別にいるなんて考えもしなかった。そして彼女がいる気配も微塵も感じなかった。トモキが浮気をするのはこれが初めてじゃないのかもしれない。
いきなり手を出すのはさすがに同級生だから躊躇して、時間をかけて私の気持ちが自分に向くようにしていたのかもしれない。
そんな考えがずっと堂々巡りしている。
それから私はある駅のウイークリーマンションに問い合わせをした。駅から離れているウイークリーマンションじゃないと家賃が出せない。でも、これでいよいよ私もお尻に火が付いた。いつまでもトモキに甘えていたからこんなことになってしまったんだ。条件とかじゃなく、早く自分の家を探さなければ。
ウイークリーマンションに問い合わせのメールをした後も、私は夜ご飯を作る気持ちになれなかった。明日はトモキが帰って来るので、少しは手の込んだものを作ろうかと思っていたけど、そんな気持ちも当然沸かない。私が彼女だったら、自分が仕事とはいえ日本を離れている間に他の女と一緒に暮らしてるだけでも腸が煮えくり返る思いだ。それなのにさらに手料理まで食べてるとなったら、心の底からいい気はしない。
心の中のモヤモヤをどうにか鎮めようとしていたとき、スマホがリンという音を鳴らした。画面に目をやると、トモキからのメッセージを受信していた。
「毎日弁当飽きた」
なーにが毎日弁当飽きただ!!! っとすぐにでも返信したくなった。だけどもう返信もしたくない。トモキは最低だ。こんなやつだと思わなかった。私はトモキからの通知をオフにしてからスマホを机の上に置いた。そして自分の部屋に行って、スーツケースを広げる。そこに自分の荷物を入れていく。
以前ヤマトの部屋から荷物を運び出して来たとき、春夏物の洋服は段ボールに詰め直していて、今もそのままだった。だからスーツケースに入れるのは今自分が普段使っているものだけということになる。それでもまた何度かトモキの部屋とウイークリーマンションを往復することになりそうだった。
でも、今度ばかりはそうも行かない。少し費用はかかるけど、運送会社に取りに来てもらうサービスを利用して、一気に荷物を運び出さなくては。今年の冬のボーナスは全部使い切ることになりそうだなと覚悟を決めた。
翌日の夕方前、トモキが玄関を開ける音が部屋の中に響いた。
今日の日中、私は昨日の夜に問い合わせをしていたウイークリーマンションから、内見はできないという返信をもらっていたので、実際に現地に行って周辺の様子を見て来ていた。駅から遠いこともあって住宅街に建っていたことを確認し、近くのスーパー、コンビニ、銀行のATMなどの位置を確認してそのままウイークリーマンションの契約をしてきていた。そして今は、運送会社の送り状にウイークリーマンションの住所を書いているところだ。書き終わったら段ボールに貼って、今度は引き取りに来てもらう準備をしなくてはならない。
「ただいま~」
トモキが部屋の中に入って来たのが分かった。私がいないからか、今度は私の部屋のドアをノックする。
「こずえ? いる?」
「・・・おかえり」
同じ家の中にいて居留守が使えるわけもないので、返事だけはしておいた。だけど私の声が暗いのが分かったのか、トモキが心配そうに言葉を続ける。
「どうした? 何かあったのか? 大丈夫?」
「なんでもない」
いつになくぶっきらぼうで素っ気ない返事に、いよいよ何かあったのかと思ったのだろう。トモキがなおも声をかけて来る。
「なんかあったんだろ? 出て来いよ」
「ほっといてよ」
「・・・」
私はイライラが止まらなかった。本命の彼女がいるのに他の女性を部屋に住まわせるトモキが。桜さんと私を傷つけたトモキが。私の中の感情が怒りでいっぱいになっていく。
「こずえ? どうしたんだよ。俺なんかした?」
私が何も知らないと思ってそんなことを言っているんだろうか。許せない。知ってるんだと言ってしまおうか。私のことなんてなんとも思ってないくせに、キスなんかしてきたトモキに、イライラが止まらない。
「わけわかんねーよ。なんなの?」
トモキも段々イライラしてきているのが声から伝わってきた。
「とにかくちょっと出てこいよ」
「話したくない」
ドア越しに、トモキのため息が聞こえた。私は鼻の頭がツンとなるのを必死に耐えていた。
「あっそ。わけわかんねーよ。もういい」
そういうと、トモキの気配がドアの前から消えた。私の瞳からは涙がポタポタ零れてきた。
最初からこうしていればよかったんだ。
私がヤマトとのことで傷ついてたから、ふらふらとトモキの家に来てしまっただけで、誰かに側にいて欲しくて、トモキに彼女がいるかどうかも聞かずに部屋に転がり込んでしまった。
でも。まさか自分の部屋に呼んでおきながら、本命の彼女が別にいるなんて考えもしなかった。そして彼女がいる気配も微塵も感じなかった。トモキが浮気をするのはこれが初めてじゃないのかもしれない。
いきなり手を出すのはさすがに同級生だから躊躇して、時間をかけて私の気持ちが自分に向くようにしていたのかもしれない。
そんな考えがずっと堂々巡りしている。
それから私はある駅のウイークリーマンションに問い合わせをした。駅から離れているウイークリーマンションじゃないと家賃が出せない。でも、これでいよいよ私もお尻に火が付いた。いつまでもトモキに甘えていたからこんなことになってしまったんだ。条件とかじゃなく、早く自分の家を探さなければ。
ウイークリーマンションに問い合わせのメールをした後も、私は夜ご飯を作る気持ちになれなかった。明日はトモキが帰って来るので、少しは手の込んだものを作ろうかと思っていたけど、そんな気持ちも当然沸かない。私が彼女だったら、自分が仕事とはいえ日本を離れている間に他の女と一緒に暮らしてるだけでも腸が煮えくり返る思いだ。それなのにさらに手料理まで食べてるとなったら、心の底からいい気はしない。
心の中のモヤモヤをどうにか鎮めようとしていたとき、スマホがリンという音を鳴らした。画面に目をやると、トモキからのメッセージを受信していた。
「毎日弁当飽きた」
なーにが毎日弁当飽きただ!!! っとすぐにでも返信したくなった。だけどもう返信もしたくない。トモキは最低だ。こんなやつだと思わなかった。私はトモキからの通知をオフにしてからスマホを机の上に置いた。そして自分の部屋に行って、スーツケースを広げる。そこに自分の荷物を入れていく。
以前ヤマトの部屋から荷物を運び出して来たとき、春夏物の洋服は段ボールに詰め直していて、今もそのままだった。だからスーツケースに入れるのは今自分が普段使っているものだけということになる。それでもまた何度かトモキの部屋とウイークリーマンションを往復することになりそうだった。
でも、今度ばかりはそうも行かない。少し費用はかかるけど、運送会社に取りに来てもらうサービスを利用して、一気に荷物を運び出さなくては。今年の冬のボーナスは全部使い切ることになりそうだなと覚悟を決めた。
翌日の夕方前、トモキが玄関を開ける音が部屋の中に響いた。
今日の日中、私は昨日の夜に問い合わせをしていたウイークリーマンションから、内見はできないという返信をもらっていたので、実際に現地に行って周辺の様子を見て来ていた。駅から遠いこともあって住宅街に建っていたことを確認し、近くのスーパー、コンビニ、銀行のATMなどの位置を確認してそのままウイークリーマンションの契約をしてきていた。そして今は、運送会社の送り状にウイークリーマンションの住所を書いているところだ。書き終わったら段ボールに貼って、今度は引き取りに来てもらう準備をしなくてはならない。
「ただいま~」
トモキが部屋の中に入って来たのが分かった。私がいないからか、今度は私の部屋のドアをノックする。
「こずえ? いる?」
「・・・おかえり」
同じ家の中にいて居留守が使えるわけもないので、返事だけはしておいた。だけど私の声が暗いのが分かったのか、トモキが心配そうに言葉を続ける。
「どうした? 何かあったのか? 大丈夫?」
「なんでもない」
いつになくぶっきらぼうで素っ気ない返事に、いよいよ何かあったのかと思ったのだろう。トモキがなおも声をかけて来る。
「なんかあったんだろ? 出て来いよ」
「ほっといてよ」
「・・・」
私はイライラが止まらなかった。本命の彼女がいるのに他の女性を部屋に住まわせるトモキが。桜さんと私を傷つけたトモキが。私の中の感情が怒りでいっぱいになっていく。
「こずえ? どうしたんだよ。俺なんかした?」
私が何も知らないと思ってそんなことを言っているんだろうか。許せない。知ってるんだと言ってしまおうか。私のことなんてなんとも思ってないくせに、キスなんかしてきたトモキに、イライラが止まらない。
「わけわかんねーよ。なんなの?」
トモキも段々イライラしてきているのが声から伝わってきた。
「とにかくちょっと出てこいよ」
「話したくない」
ドア越しに、トモキのため息が聞こえた。私は鼻の頭がツンとなるのを必死に耐えていた。
「あっそ。わけわかんねーよ。もういい」
そういうと、トモキの気配がドアの前から消えた。私の瞳からは涙がポタポタ零れてきた。
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