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15.ヤマトからの連絡
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あの日、荷物を運び出した翌日から、ヤマトから電話がかかってくるようになった。いつもお昼の休憩時間の時間帯だ。その着信が1週間続いていたが、私は1度も出なかった。その代わり、私は「何かあればメッセージでお願いします」とひどく他人行儀なメッセージを送っていた。ヤマトからは「電話で直接話したいから電話に出ろ」というメッセージが届いていたけど、電話に出るつもりなんてさらさらない。
「何か忘れ物があったなら捨ててくださって結構です」とメッセージを送っても連日電話がかかってくる。幸い、昼の時間帯だけなので、トモキに着信があることはバレてはいないようだ。もちろん、私とトモキは恋人でもなんでもないから、ヤマトから電話があるとバレたところで構わないのだけど。
今日はトモキは病院に泊まると言っていたので、自分だけの簡単なご飯でいい。私はスーパーで買って来た豆乳、サツマイモ、にんじん、タマネギ、冷凍ブロッコリーを机の上に並べた。今日は食物繊維多めにサツマイモの豆乳鍋にするつもりだ。多めに作って、明日の朝も食べよう作戦。
自分1人の胃袋を満たせばいいだけなら、この程度で十分だ。なんて気楽なんだろう。とはいっても、トモキも手の込んだ料理は期待していないみたいで、こういう鍋とか簡単に出来るもので喜んでくれるもんだから、比較的楽といえば楽ではある。特に生理の時は身体が怠く、包丁なんか持ちたくない。キャベツのサラダとヨーグルトでも食べていたいし、食欲があるときは食パンにチョコを塗って食べるだけでもいい。ときには焼きそばだけが妙に食べたくなる月もある。ヤマトはそういう食生活を送ってる私を見て「俺もそれに付き合わなきゃいけないの?」ってうんざりした表情を浮かべていた。とはいっても私も無理ができず、その間はコンビニや外食で済ませてもらっていたけれど、そういうのも私がフラれた原因の1つなのかもしれない。
そんなことをぼんやり考えながら、鍋で具材を煮込んでいると電話から着信音が聞こえてきた。画面を見ると、そこにはヤマトの名前が表示されている。いつもは昼しか電話をかけてこないのに、夜に電話をかけてくるとは。仕事中じゃないのかなと思いながら画面を見つめる。
電話に出て要件さえ聞けば満足してくれるかもしれない。そう思って私は右手で着信を受け、左手に携帯を持ち替えた。
「はい」
「やっと電話に出た」
久しぶりのヤマトの声。耳元で聞こえて、少し気分が悪くなった。こんなに近くでヤマトの声なんか感じたくないなと、瞬時に思ってしまったのだ。
「なんの用?」
「いや、あの日いたヤツ誰かなって」
なんでそんなこと言われないといけないんだろう。私達はもう別れたし、なんならヤマトは他に女がいるのに、私のことに首を突っ込んでくるあたりがなんだか薄気味悪い。
「関係ないじゃない。こんなことのために毎日電話してきたの?」
「お前こそ、他に男いたんじゃん」
全くの見当違いだけど、反論する元気もなかった。あの日、同窓会の帰りに私達が暮らしていた部屋に女性を連れ込んでいたのが分かったあの瞬間、どうやら私の心は急速に冷え切ってしまったらしい。
「全然違うし。っていうか、話すことないから、もう切るね。迷惑だから、もう2度と電話してこないで」
「おいっ!」
私はヤマトの電話を一方的に切った。
プライドが高いヤマトのことだから、これでもう私に連絡をしてくることはないだろう。
それにしても、自分は浮気しておいて、よくそんなことがいえるなと腹が立って仕方がなかった。
こんな日は、トモキと一緒に夜ご飯が食べたかったなと、ふと思った。
「何か忘れ物があったなら捨ててくださって結構です」とメッセージを送っても連日電話がかかってくる。幸い、昼の時間帯だけなので、トモキに着信があることはバレてはいないようだ。もちろん、私とトモキは恋人でもなんでもないから、ヤマトから電話があるとバレたところで構わないのだけど。
今日はトモキは病院に泊まると言っていたので、自分だけの簡単なご飯でいい。私はスーパーで買って来た豆乳、サツマイモ、にんじん、タマネギ、冷凍ブロッコリーを机の上に並べた。今日は食物繊維多めにサツマイモの豆乳鍋にするつもりだ。多めに作って、明日の朝も食べよう作戦。
自分1人の胃袋を満たせばいいだけなら、この程度で十分だ。なんて気楽なんだろう。とはいっても、トモキも手の込んだ料理は期待していないみたいで、こういう鍋とか簡単に出来るもので喜んでくれるもんだから、比較的楽といえば楽ではある。特に生理の時は身体が怠く、包丁なんか持ちたくない。キャベツのサラダとヨーグルトでも食べていたいし、食欲があるときは食パンにチョコを塗って食べるだけでもいい。ときには焼きそばだけが妙に食べたくなる月もある。ヤマトはそういう食生活を送ってる私を見て「俺もそれに付き合わなきゃいけないの?」ってうんざりした表情を浮かべていた。とはいっても私も無理ができず、その間はコンビニや外食で済ませてもらっていたけれど、そういうのも私がフラれた原因の1つなのかもしれない。
そんなことをぼんやり考えながら、鍋で具材を煮込んでいると電話から着信音が聞こえてきた。画面を見ると、そこにはヤマトの名前が表示されている。いつもは昼しか電話をかけてこないのに、夜に電話をかけてくるとは。仕事中じゃないのかなと思いながら画面を見つめる。
電話に出て要件さえ聞けば満足してくれるかもしれない。そう思って私は右手で着信を受け、左手に携帯を持ち替えた。
「はい」
「やっと電話に出た」
久しぶりのヤマトの声。耳元で聞こえて、少し気分が悪くなった。こんなに近くでヤマトの声なんか感じたくないなと、瞬時に思ってしまったのだ。
「なんの用?」
「いや、あの日いたヤツ誰かなって」
なんでそんなこと言われないといけないんだろう。私達はもう別れたし、なんならヤマトは他に女がいるのに、私のことに首を突っ込んでくるあたりがなんだか薄気味悪い。
「関係ないじゃない。こんなことのために毎日電話してきたの?」
「お前こそ、他に男いたんじゃん」
全くの見当違いだけど、反論する元気もなかった。あの日、同窓会の帰りに私達が暮らしていた部屋に女性を連れ込んでいたのが分かったあの瞬間、どうやら私の心は急速に冷え切ってしまったらしい。
「全然違うし。っていうか、話すことないから、もう切るね。迷惑だから、もう2度と電話してこないで」
「おいっ!」
私はヤマトの電話を一方的に切った。
プライドが高いヤマトのことだから、これでもう私に連絡をしてくることはないだろう。
それにしても、自分は浮気しておいて、よくそんなことがいえるなと腹が立って仕方がなかった。
こんな日は、トモキと一緒に夜ご飯が食べたかったなと、ふと思った。
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