【完結】浮気男はごめんです!再会した同級生は一途に愛する

葉月光

文字の大きさ
上 下
11 / 26

11.さようならの決心

しおりを挟む
 「おはよう」
 「ああ、おはよ」

 なんとなく気まずくて目を合わせることができなかった。
 
 昨日は結局、お風呂のお湯が張るまでトモキは黙ったまま私の隣にいてくれて、私も無言のまま泣いていた。お風呂から出たあと、トモキは私の方を見ないで「もう寝ちまえよ」とだけ言ってくれたので、私もそのまま部屋に行って寝ることにしたのだ。
 
 そして迎えた今朝、私は勝手に朝ごはんを作っていた。と言っても、トモキの家にあった食パンにバターを塗ってトーストしたものと、目玉焼きを焼いただけなんだけど。トモキの家の冷蔵庫は家族用の大型のものなのに、野菜類が全く入っていなかった。

 「ねえ、冷蔵庫の中、なんにも入ってなくてびっくりなんですけど?」
 「いつも朝はそんなに食べない。それにほぼ外食だし」
 「こんなに立派な冷蔵庫があるっていうのに・・・」
 と、ついついブツブツ文句を言ってしまった。本当は「昨日はありがと」とかお礼を言いたいのに、トモキと一緒だとついつい高校生のころのような口調になってしまう。

 トモキはじーっと私を見つけた後、ふいっと洗面台の方に行ってしまった。やっぱりトモキも私の泣き顔なんて見てしまったから少し気まずいのだろう。申し訳ないことをした。さらに、昨日私は着の身着のままトモキの家に来てしまったから、手持ちの化粧品もメイク直しのために持って行ったもので、つまりは私は今ほぼすっぴんだ。とりあえず眉毛だけ描いた状態。高校生のころなんかメイクもしてなかったし、好きな人でもないから、全く気にせずすっぴんを晒してしまったけれど、もしかしたらこのすっぴん顔を見てドン引きしたのかもしれない・・・。

 とりあえず私はパンと目玉焼きが載ったお皿をダイニングに運ぶ。顔を洗って来たであろうトモキが、先ほどよりシャンとした目つきでリビングに戻って来た。

 「おー、さんきゅー」
 「目玉焼き焼いただけだし」

 トモキはさっそくトーストしたパンに噛り付いた。パンを焼いて目玉焼きを作っただけなので感想を求めていたわけでもないのに、ふいにトモキが「うまいな」と呟いた。

 「・・・目玉焼き、焼いただけなんですけど」
 「うん、そうなんだよな。卵がうまいんだろうな」
 「そんな高級卵だったの?」
 「いや全然。普通に買っただけ」

 確かに冷蔵庫の中に入っていた卵は普通の白い卵だったし、パッケージも普通の見慣れたものだったから、スーパーかコンビニで買って来たんだろう。

 お互いほとんど無言のまま朝ごはんを食べ終え、私は軽くメイクをして、昨日も着ていた洋服を着た。

 「何時ころ行く?」
 「うーん」
 「昼でも夜でもいいけど、お礼はハンバーグでいいぞ」
 「ええっ! ちょっと面倒なヤツを・・・!」
 「高校の時、調理実習で作ったから作れるだろ?」
 「もう! 何年前の話よ! そうじゃなくても普通に作れますからっ!」
 
 ハンバーグは自分でも大好きなメニューだが、どうも玉ねぎに毎回泣かされてしまう。対策として水泳用のゴーグルをつけてみたら涙は出なかったけど、目の周りにクッキリハッキリとゴーグルの跡がついてしまって恥ずかしい思いをした。その後は、野菜をみじん切りできるキッチンアイテムを買って来て、それでみじん切りにしている。とはいえ、みじん切りのアイテムの中に入れる前に玉ねぎを小さくカットする時点で涙は出てきているんだけど。この家にはそんなものもなさそうだから、これは久しぶりに大きな戦いになりそうだ。

 「一応、何時に行っていいか聞いてからにしようかな。ほら、勝手に行って勝手に荷物持って来て、後から『あれがない』『これがない』って言われてもヤだし」
 そう言って、さっそくヤマトに今日荷物を運び出すこと、何時だったら行ってもいいか確認のメッセージを送った。

 少ししてから、ヤマトから返事に来た。今日は家にいるから何時でもいいけど、できれば昼過ぎくらいに終わらせて欲しいとのことだったので、支度したら行くとメッセージを送り、私はトモキとヤマトの家に向かった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

邪魔しないので、ほっておいてください。

りまり
恋愛
お父さまが再婚しました。 お母さまが亡くなり早5年です。そろそろかと思っておりましたがとうとう良い人をゲットしてきました。 義母となられる方はそれはそれは美しい人で、その方にもお子様がいるのですがとても愛らしい方で、お父様がメロメロなんです。 実の娘よりもかわいがっているぐらいです。 幾分寂しさを感じましたが、お父様の幸せをと思いがまんしていました。 でも私は義妹に階段から落とされてしまったのです。 階段から落ちたことで私は前世の記憶を取り戻し、この世界がゲームの世界で私が悪役令嬢として義妹をいじめる役なのだと知りました。 悪役令嬢なんて勘弁です。そんなにやりたいなら勝手にやってください。 それなのに私を巻き込まないで~~!!!!!!

私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない

文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。 使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。 優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。 婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。 「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。 優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。 父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。 嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの? 優月は父親をも信頼できなくなる。 婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

命を狙われたお飾り妃の最後の願い

幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】 重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。 イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。 短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。 『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

わたしは夫のことを、愛していないのかもしれない

鈴宮(すずみや)
恋愛
 孤児院出身のアルマは、一年前、幼馴染のヴェルナーと夫婦になった。明るくて優しいヴェルナーは、日々アルマに愛を囁き、彼女のことをとても大事にしている。  しかしアルマは、ある日を境に、ヴェルナーから甘ったるい香りが漂うことに気づく。  その香りは、彼女が勤める診療所の、とある患者と同じもので――――?

処理中です...