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8.先輩への告白(中編)
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今日の作戦、翔は自分が彼女にどうやって接しているか、そしてそれを真似しろとかなんとか言っていたが、とても真似なんかできなかった。というのも、パーク内に入ってからも翔と翔の彼女のラブラブっぷりは変わらず、アトラクションに並んでいる間もずっと手を繋いでいるし、翔が翔の彼女の腰を抱き寄せている。こんなこと付き合ってもいない僕ができるわけがないだろう。それにこいつらは恥ずかしくないのだろうか、特に翔。俺という同級生が隣にいるのにこんなふうに自分の彼女とイチャつけるなんて僕とは根本的にもう人間の造りが違うとしか思えない。
僕達はボートに乗ってジャングルの中を冒険するというアトラクションに乗ることにした。いよいよ僕達の順番が回ってきたとき、最初に翔がボートに乗りこみ、彼女に手を差し出す。
「ほら、カノン、揺れるから、手」
「ありがとう、翔くん」
翔の彼女は翔の手を取りボートの上に立ち、ぎゅっと抱き着いてからベンチに腰を下ろした。翔はボートの上で彼女に抱き着かれた一瞬で僕を見ていた。その目は『お前もやれよ』と訴えかけているようだった。これくらいなら、なんとかできるかもしれない。事実ボートはゆらゆらしているし、不自然にはならないだろう。
僕も続いてボートに乗り込み、体をリコ先輩の方に向け、手を差し出した。リコさんは手すりを持って船の乗り口につま先を乗せているところだった。
「・・・・・・リコ先輩」
恥ずかしくて翔のように「手を」なんて言えなかったけど、手を差し出してるからリコ先輩にも意図は伝わっているはずだ。そして僕の願い通り、リコ先輩は僕の手を取ってボートに下りてきてくれた。
「ありがとう、相良」
「・・・・・・いえ」
リコ先輩ににっこりされて僕の心臓が跳ねる。僕は翔の隣に腰を下ろし、リコ先輩は僕の右隣に座った。翔と翔の彼女はアトラクションの最中も変わらず手を繋いだままだったが、僕とリコ先輩はそんなことできない。ぴったりくっついて座る翔たちと比べて、僕とリコ先輩の間には拳半分くらいの距離もあった。
アトラクションから降りるとき、リコ先輩が1番最初に岸に上がる。そして驚くことに、岸から僕に向かって手を差し出してくれた。手すりもあるし、リコ先輩の手を借りるまでもなかったが、手に触れたいという欲求を抑えきれずに僕はリコ先輩の手を取った。しかし、それを後から翔にからかわれるのが恥ずかしくてすぐに手を離してしまう。
昼の食事の時間はレストランに入って4人掛けのテーブルに座ることにした。もはや翔と翔の彼女のことについてはなんの言葉も出ない状態だった。
ところが、翔の彼女が翔の食事を見て「翔君、それ食べてみたい~」とお願いし始めると、翔もそれに応えて「いいよ、はい、あーん」と食べさせ始めた。リコ先輩も見ていけないと思っているのか、視線はずっと食事ばかりを見ている。僕もついつい呆れた顔を翔に向けてしまっていたようで、翔と視線がかち合った。そしてあろうことか、再度『お前もやれよ』と言わんばかりの目つきを向けてくる。さすがにできないと思って小さく顔を振るが、翔のジト目は変わらない。
食べさせあいっこは絶対に無理だが、無言のまま食事をするのも憚られたので「・・・・・・リコ先輩のも美味しそうですね」と言ってみた。
「あ、うん、なかなかスパイシーで美味しいよ!」
リコ先輩は僕の目を見ながら口をもぐもぐさせている。一生懸命食べてる感じがとても可愛い。
そんなやり取りをしていたら、翔が足で僕の足を軽く蹴った。何事かと思って一瞬視線が止まる。すると次の瞬間、翔が突然水を一気に飲み干し、紙コップを持って立ち上がった。
「カノン、一緒に水取りに行かない?」
「うん、行く!」
「2人は?お代わりいります?」
翔はにっこり笑ってリコ先輩を見る。リコ先輩は「私はまだあるので」と断っていたが、僕は「・・・・・・じゃあ」とお水のお代わりをお願いする。翔は「OK」とだけ声に出して彼女と一緒にサーバーの方へと歩いて行った。
これは・・・「俺たちがいない隙に同じことをやれよ」という無言の圧力だろうか。いやでも言えるわけがないんだが・・・。とはいえ、今日の目標はリコ先輩に僕を少しでも男として意識してもらうというのもあった。以前のデートでは手も繋いでみたし、僕の部屋で抱きしめたりしたこともあったけど、今日は今日で頑張らなければ。
「・・・・・・リコ先輩の、一口もらえませんか」
勇気を出してリコ先輩にお願いしてみる。
「あ、うん、いいよ、どうぞ」
リコ先輩はなんでもないことのように返事をすると、ずいっとお皿を僕の方に差し出した。僕は一瞬お皿を見つめてからリコ先輩の食事を食べてみる。
「・・・・・・あ、本当だ、ちょっと辛い」
「でしょでしょ」
僕は自分のお皿をリコ先輩の方に差し出し「・・・・・・僕のもどうぞ」と言ってみる。
「あー・・・。いいの?ありがとう」
リコ先輩が僕の食事を食べる。その姿を見ているだけなのに、僕はまたドキドキし始めてしまった。
「・・・・・・スープも、美味しかったんで飲んでみてください」
「分かった」
そんなつもりはなかったのに、僕は自分が注文したチキンとエビの塩ラーメンのスープも飲むように薦めてしまった。リコ先輩は僕が口をつけたレンゲを掴むと、ふうふうと冷ましながらスープを口に運ぶ。
「こっちのも美味しいね!次来ることがあったらこっちにしようかな」
「・・・・・・じゃ、今度は半分こしましょう」
リコ先輩が自分の使ったレンゲを口にしたのを見て本当はすぐにでもそのレンゲを使いたかったが、それを隠すために塩ラーメンの他に頼んでいた豚の角煮丼を食べる。さりげなく、また今度2人で来たいと伝えてみたが、リコ先輩からの返事を聞く前に翔と翔の彼女が戻って来てしまった。
僕達はボートに乗ってジャングルの中を冒険するというアトラクションに乗ることにした。いよいよ僕達の順番が回ってきたとき、最初に翔がボートに乗りこみ、彼女に手を差し出す。
「ほら、カノン、揺れるから、手」
「ありがとう、翔くん」
翔の彼女は翔の手を取りボートの上に立ち、ぎゅっと抱き着いてからベンチに腰を下ろした。翔はボートの上で彼女に抱き着かれた一瞬で僕を見ていた。その目は『お前もやれよ』と訴えかけているようだった。これくらいなら、なんとかできるかもしれない。事実ボートはゆらゆらしているし、不自然にはならないだろう。
僕も続いてボートに乗り込み、体をリコ先輩の方に向け、手を差し出した。リコさんは手すりを持って船の乗り口につま先を乗せているところだった。
「・・・・・・リコ先輩」
恥ずかしくて翔のように「手を」なんて言えなかったけど、手を差し出してるからリコ先輩にも意図は伝わっているはずだ。そして僕の願い通り、リコ先輩は僕の手を取ってボートに下りてきてくれた。
「ありがとう、相良」
「・・・・・・いえ」
リコ先輩ににっこりされて僕の心臓が跳ねる。僕は翔の隣に腰を下ろし、リコ先輩は僕の右隣に座った。翔と翔の彼女はアトラクションの最中も変わらず手を繋いだままだったが、僕とリコ先輩はそんなことできない。ぴったりくっついて座る翔たちと比べて、僕とリコ先輩の間には拳半分くらいの距離もあった。
アトラクションから降りるとき、リコ先輩が1番最初に岸に上がる。そして驚くことに、岸から僕に向かって手を差し出してくれた。手すりもあるし、リコ先輩の手を借りるまでもなかったが、手に触れたいという欲求を抑えきれずに僕はリコ先輩の手を取った。しかし、それを後から翔にからかわれるのが恥ずかしくてすぐに手を離してしまう。
昼の食事の時間はレストランに入って4人掛けのテーブルに座ることにした。もはや翔と翔の彼女のことについてはなんの言葉も出ない状態だった。
ところが、翔の彼女が翔の食事を見て「翔君、それ食べてみたい~」とお願いし始めると、翔もそれに応えて「いいよ、はい、あーん」と食べさせ始めた。リコ先輩も見ていけないと思っているのか、視線はずっと食事ばかりを見ている。僕もついつい呆れた顔を翔に向けてしまっていたようで、翔と視線がかち合った。そしてあろうことか、再度『お前もやれよ』と言わんばかりの目つきを向けてくる。さすがにできないと思って小さく顔を振るが、翔のジト目は変わらない。
食べさせあいっこは絶対に無理だが、無言のまま食事をするのも憚られたので「・・・・・・リコ先輩のも美味しそうですね」と言ってみた。
「あ、うん、なかなかスパイシーで美味しいよ!」
リコ先輩は僕の目を見ながら口をもぐもぐさせている。一生懸命食べてる感じがとても可愛い。
そんなやり取りをしていたら、翔が足で僕の足を軽く蹴った。何事かと思って一瞬視線が止まる。すると次の瞬間、翔が突然水を一気に飲み干し、紙コップを持って立ち上がった。
「カノン、一緒に水取りに行かない?」
「うん、行く!」
「2人は?お代わりいります?」
翔はにっこり笑ってリコ先輩を見る。リコ先輩は「私はまだあるので」と断っていたが、僕は「・・・・・・じゃあ」とお水のお代わりをお願いする。翔は「OK」とだけ声に出して彼女と一緒にサーバーの方へと歩いて行った。
これは・・・「俺たちがいない隙に同じことをやれよ」という無言の圧力だろうか。いやでも言えるわけがないんだが・・・。とはいえ、今日の目標はリコ先輩に僕を少しでも男として意識してもらうというのもあった。以前のデートでは手も繋いでみたし、僕の部屋で抱きしめたりしたこともあったけど、今日は今日で頑張らなければ。
「・・・・・・リコ先輩の、一口もらえませんか」
勇気を出してリコ先輩にお願いしてみる。
「あ、うん、いいよ、どうぞ」
リコ先輩はなんでもないことのように返事をすると、ずいっとお皿を僕の方に差し出した。僕は一瞬お皿を見つめてからリコ先輩の食事を食べてみる。
「・・・・・・あ、本当だ、ちょっと辛い」
「でしょでしょ」
僕は自分のお皿をリコ先輩の方に差し出し「・・・・・・僕のもどうぞ」と言ってみる。
「あー・・・。いいの?ありがとう」
リコ先輩が僕の食事を食べる。その姿を見ているだけなのに、僕はまたドキドキし始めてしまった。
「・・・・・・スープも、美味しかったんで飲んでみてください」
「分かった」
そんなつもりはなかったのに、僕は自分が注文したチキンとエビの塩ラーメンのスープも飲むように薦めてしまった。リコ先輩は僕が口をつけたレンゲを掴むと、ふうふうと冷ましながらスープを口に運ぶ。
「こっちのも美味しいね!次来ることがあったらこっちにしようかな」
「・・・・・・じゃ、今度は半分こしましょう」
リコ先輩が自分の使ったレンゲを口にしたのを見て本当はすぐにでもそのレンゲを使いたかったが、それを隠すために塩ラーメンの他に頼んでいた豚の角煮丼を食べる。さりげなく、また今度2人で来たいと伝えてみたが、リコ先輩からの返事を聞く前に翔と翔の彼女が戻って来てしまった。
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