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第2章 北楊村編

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そして、話しあいの場が整ったようで二人はそちらへと向かった。

村で暴挙を続けていた丹良を含めた男たちと三人は向かい合って座った。
この場の進行は景雲と丹良で、この二人によって話が進められた。

「それで、この村に何故役人と偽って金を取ってたんだ?」
「それが手っ取り早かったんだ。
賊のなりじゃ、相手にされないから」

景雲の質問に丹良が答える。
そして今度は晏寿が質問する。

「どうしてこの村を狙ったの?
あと金が欲しかった理由は?」
「前にこの村の管轄だった役人がしっかりと仕事してないと聞いて、それなら上手くやれるんじゃないかと思ってな。金が欲しかったのは、遊ぶためじゃねぇ」
「じゃあ何故?」
「糸家に家族を人質に取られた。
解放するには金を用意しろと脅され、この村に手をつけるしかなかったんだ。
名のある家の人質ならそれなりに優遇されるが、俺らのような身分じゃ奴隷も同然に扱われるから」

丹良の話を聞いて、晏寿は胸がざわついた。
糸家には晏寿の母が奉公という名で人質に取られているし、自身ももう一歩でそうなりかけた。
まるで他人事のようには聞こえなかった。
晏寿の動揺には気付かずに、景雲が息を吐く。

「また糸家か…
そしてどんだけ氾大臣のところは怠慢なんだよ」
「糸家は今すぐにはどうにもできないが、氾大臣のことは早急に報告すべきだな」
「だな」

晏寿が押し黙っている間に、秀英と景雲で話を進めていく。
晏寿の頭の中には男達の家族をどうやって糸家から助け出そうかということばかりだった。

「役人の姉さん」
「っ!な、何?」

丹良が声をかけてきたことによって、はっと我に返る。
慌てて返事をして、丹良を見れば神妙な面持ちで晏寿を見つめていた。

「さっきは本当にすまなかった」
「え…あ…」

丹良は両手の拳を地面につき、頭を下げた。
晏寿はそれに対して焦ることもなく、冷静に聞いていた。

「男の欲でああいう行動をとってしまった。
もう一人のチビにも悪かったと思ってる」
「それは…私の立場を聞いたから、自分の行動を改心したの?」
「…」

晏寿が淡々と言うため、丹良は面喰う。
そして、晏寿の言いたいことがわかったから、言葉が出てこなかった。

「私が官吏じゃなくて、景雲の同僚じゃなくて、この村の人間だったら、後ろめたさもなくその先を実行できたの?
もしそうだったら、私はあなたを許さない。
どんなに頭を下げられても」

「…あんたの言いたいことはわかる。
でも、本当に悪かったと思っているし、これからはしないと誓う」
「本当に?」
「ああ。なんなら、小指を切ろうか」
「そんなこと、望むわけないじゃない!」

丹良の申し出に慌てて首を横に振る晏寿。
結局晏寿は丹良のことを許すのだった。
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