柔よく剛を制す

薬袋 藍(ミナイ ラン)

文字の大きさ
上 下
131 / 133
第9章 怜峯の縁談編

1

しおりを挟む
その日、自宅にて晏寿は母・瑚蘭と共に怜峯に呼び出され並んで座っていた。

向かいに座る怜峯は神妙な面持ちである。

「兄様、改まってどうしたの?」

なかなか口を開こうとしない怜峯に痺れを切らし、晏寿が問う。

「ああ…実は、結婚を考えている」

「ええー!?」

家中に晏寿の驚きの声が響き、瑚蘭はいつも通り「あらあら」とのほほんとしているのだった。


「怜峯もようやく身を固める気持ちになったのねぇ。良かったわ。
それで、心に決めた方がいるのかしら?」

瑚蘭がにこにこと嬉しさを隠さないままに怜峯に問う。
この場で通常運行で進められるのは瑚蘭だけであろう。
晏寿は、母はなぜこうまで驚かないのだろうかと横で見ていた。

「この人という相手がいる。おそらく断られることはないとは思う」
「そうなのね!じゃあ早く出さなくちゃ」
「ちょっと待って!」

着々と進んでいく話についていけず、晏寿は話を遮ってしまう。
けれど、どうしても懸念事項があったのだ。

「兄様が心に決めた人がいることは私も嬉しいけど、水を差すようでごめんなさい。でもね、うちは一度落ちぶれた家だよ?そう簡単に進む話なの?」
「言い方は悪いが相手も二度目の婚姻になるから、寧ろ体裁的に身を固めたいと望んでいる。そこに俺は付け入ったようなものだ」
「え?二度目の婚姻?兄様、情報が追いつかないよ?」

益々混乱する晏寿に怜峯はとどめを刺す。

「相手は容家の次女、杏歌殿だ」

晏寿はその場に卒倒しそうになるのだった。


翌日職場にて、あまり寝付けなかった晏寿はふらふらしながら仕事をしていた。

あの後、瑚蘭はさらに大喜びし、すぐに容家に連絡をいれようと準備を始めた。

晏寿自身、杏歌が義姉になることに異論はない。
だが、手放しに喜べない引っかかることがあるのだ。

「晏寿、どうかしたか?」
「今日はふらふらしているぞ」

そこに秀英とくだんの家の長男、景雲が晏寿の様子見にやってきた。
はっと晏寿は景雲に縋り付く。

「景雲、今日この後時間ある!?」
「なんだ?晏寿、とうとう俺の良さに気づいたのか…って秀英!俺の腕を抓るな!」
「晏寿、景雲でなくとも俺が時間をとろう」
「ううん、今日は景雲じゃなきゃ駄目なの!」

秀英、あえなく撃沈する。
しかし晏寿は秀英に構えるほど余裕はなかった。
景雲は後で友の心をどうやって慰めるかを考えるのだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

皇帝は虐げられた身代わり妃の瞳に溺れる

えくれあ
恋愛
丞相の娘として生まれながら、蔡 重華は生まれ持った髪の色によりそれを認められず使用人のような扱いを受けて育った。 一方、母違いの妹である蔡 鈴麗は父親の愛情を一身に受け、何不自由なく育った。そんな鈴麗は、破格の待遇での皇帝への輿入れが決まる。 しかし、わがまま放題で育った鈴麗は輿入れ当日、後先を考えることなく逃げ出してしまった。困った父は、こんな時だけ重華を娘扱いし、鈴麗が見つかるまで身代わりを務めるように命じる。 皇帝である李 晧月は、後宮の妃嬪たちに全く興味を示さないことで有名だ。きっと重華にも興味は示さず、身代わりだと気づかれることなくやり過ごせると思っていたのだが……

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

完全なる飼育

浅野浩二
恋愛
完全なる飼育です。

由紀と真一

廣瀬純一
大衆娯楽
夫婦の体が入れ替わる話

ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~

ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。 そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。 そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。

処理中です...