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第9章 怜峯の縁談編
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その日、自宅にて晏寿は母・瑚蘭と共に怜峯に呼び出され並んで座っていた。
向かいに座る怜峯は神妙な面持ちである。
「兄様、改まってどうしたの?」
なかなか口を開こうとしない怜峯に痺れを切らし、晏寿が問う。
「ああ…実は、結婚を考えている」
「ええー!?」
家中に晏寿の驚きの声が響き、瑚蘭はいつも通り「あらあら」とのほほんとしているのだった。
「怜峯もようやく身を固める気持ちになったのねぇ。良かったわ。
それで、心に決めた方がいるのかしら?」
瑚蘭がにこにこと嬉しさを隠さないままに怜峯に問う。
この場で通常運行で進められるのは瑚蘭だけであろう。
晏寿は、母はなぜこうまで驚かないのだろうかと横で見ていた。
「この人という相手がいる。おそらく断られることはないとは思う」
「そうなのね!じゃあ早く出さなくちゃ」
「ちょっと待って!」
着々と進んでいく話についていけず、晏寿は話を遮ってしまう。
けれど、どうしても懸念事項があったのだ。
「兄様が心に決めた人がいることは私も嬉しいけど、水を差すようでごめんなさい。でもね、うちは一度落ちぶれた家だよ?そう簡単に進む話なの?」
「言い方は悪いが相手も二度目の婚姻になるから、寧ろ体裁的に身を固めたいと望んでいる。そこに俺は付け入ったようなものだ」
「え?二度目の婚姻?兄様、情報が追いつかないよ?」
益々混乱する晏寿に怜峯はとどめを刺す。
「相手は容家の次女、杏歌殿だ」
晏寿はその場に卒倒しそうになるのだった。
翌日職場にて、あまり寝付けなかった晏寿はふらふらしながら仕事をしていた。
あの後、瑚蘭はさらに大喜びし、すぐに容家に連絡をいれようと準備を始めた。
晏寿自身、杏歌が義姉になることに異論はない。
だが、手放しに喜べない引っかかることがあるのだ。
「晏寿、どうかしたか?」
「今日はふらふらしているぞ」
そこに秀英と件の家の長男、景雲が晏寿の様子見にやってきた。
はっと晏寿は景雲に縋り付く。
「景雲、今日この後時間ある!?」
「なんだ?晏寿、とうとう俺の良さに気づいたのか…って秀英!俺の腕を抓るな!」
「晏寿、景雲でなくとも俺が時間をとろう」
「ううん、今日は景雲じゃなきゃ駄目なの!」
秀英、あえなく撃沈する。
しかし晏寿は秀英に構えるほど余裕はなかった。
景雲は後で友の心をどうやって慰めるかを考えるのだった。
向かいに座る怜峯は神妙な面持ちである。
「兄様、改まってどうしたの?」
なかなか口を開こうとしない怜峯に痺れを切らし、晏寿が問う。
「ああ…実は、結婚を考えている」
「ええー!?」
家中に晏寿の驚きの声が響き、瑚蘭はいつも通り「あらあら」とのほほんとしているのだった。
「怜峯もようやく身を固める気持ちになったのねぇ。良かったわ。
それで、心に決めた方がいるのかしら?」
瑚蘭がにこにこと嬉しさを隠さないままに怜峯に問う。
この場で通常運行で進められるのは瑚蘭だけであろう。
晏寿は、母はなぜこうまで驚かないのだろうかと横で見ていた。
「この人という相手がいる。おそらく断られることはないとは思う」
「そうなのね!じゃあ早く出さなくちゃ」
「ちょっと待って!」
着々と進んでいく話についていけず、晏寿は話を遮ってしまう。
けれど、どうしても懸念事項があったのだ。
「兄様が心に決めた人がいることは私も嬉しいけど、水を差すようでごめんなさい。でもね、うちは一度落ちぶれた家だよ?そう簡単に進む話なの?」
「言い方は悪いが相手も二度目の婚姻になるから、寧ろ体裁的に身を固めたいと望んでいる。そこに俺は付け入ったようなものだ」
「え?二度目の婚姻?兄様、情報が追いつかないよ?」
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「相手は容家の次女、杏歌殿だ」
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あの後、瑚蘭はさらに大喜びし、すぐに容家に連絡をいれようと準備を始めた。
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だが、手放しに喜べない引っかかることがあるのだ。
「晏寿、どうかしたか?」
「今日はふらふらしているぞ」
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「なんだ?晏寿、とうとう俺の良さに気づいたのか…って秀英!俺の腕を抓るな!」
「晏寿、景雲でなくとも俺が時間をとろう」
「ううん、今日は景雲じゃなきゃ駄目なの!」
秀英、あえなく撃沈する。
しかし晏寿は秀英に構えるほど余裕はなかった。
景雲は後で友の心をどうやって慰めるかを考えるのだった。
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