124 / 133
第8章 無駄な経費削減編
12
しおりを挟む
晏寿と秀英が持ち場に帰り着いた時には、すでに景雲が戻ってきていた。
「遅いぞ、二人とも」
「随分と厠から早く戻ったのだな」
びしっと指摘する景雲の態度に秀英は呆れる。
すると景雲は不敵な笑みを浮かべ、晏寿を手招きした。
晏寿が首を傾げながら近づくと、耳元で囁く。
「せっかく二人の時間を作ってやったんだ。無駄にはしていないだろうな?」
「!」
晏寿はばっと景雲から距離を置き、頬を赤らめながら自身の口元を手で覆う。その反応で、上手くいったことを推測した景雲は更に笑みを深めた。
「お前たちはわかりやすすぎるんだよ」
にやにやする景雲に、段々と苛立ちが募り始めた晏寿は苦し紛れに
「仕事終わらせてくれてありがとう!」
と叫ぶのだった。
「…あれ?」
景雲が済ませたという仕事の書類を確認していると、景雲の筆跡とは違うものを見つける。
景雲の筆跡は文字を流れるように書き、線の太い・細いを使い分けている。
しかし、晏寿が見つけた書類は最初から最後まで同じ墨色で大きさも整っている。
晏寿はすぐにこの書類を作成したのは、秀英だと気づいた。
秀英はまるで自分は関与していないように言っていたが、何割かは行っている事実に晏寿は秀英にも感謝を伝えなければと顔を上げた。
しかし、秀英は既に自分の仕事を行っており、他の人と打ち合わせしていた。
機会を逃してしまい、残念な気持ちで秀英の横顔を見やる。
通った鼻筋、キリッとした目元と眉、真剣な表情をしている秀英を思わず見つめていた。
すると視線に気づいたのか秀英がこちらを向き、目が合い晏寿の心臓が跳ねる。
慌てて視線を外し、邪念を払うように頭を振る。
そんな晏寿の奇妙な行動に秀英は首を傾げるのだった。
自身の仕事は二人が片付けてくれたため、晏寿は後輩達に今後の武官達の食事について引き継ぎを行った。
今後の献立は昴全と最低五日分は考え、必要な食材はこちら側から調達することにした。こうすることで以前のような横流しや物資不足を無くし無駄な経費をかけないようにした。
「あと、削減できそうなところは…」
手元の資料に目をやりながら、次に行うべきことを頭の中で組み立てていく晏寿であった。
「遅いぞ、二人とも」
「随分と厠から早く戻ったのだな」
びしっと指摘する景雲の態度に秀英は呆れる。
すると景雲は不敵な笑みを浮かべ、晏寿を手招きした。
晏寿が首を傾げながら近づくと、耳元で囁く。
「せっかく二人の時間を作ってやったんだ。無駄にはしていないだろうな?」
「!」
晏寿はばっと景雲から距離を置き、頬を赤らめながら自身の口元を手で覆う。その反応で、上手くいったことを推測した景雲は更に笑みを深めた。
「お前たちはわかりやすすぎるんだよ」
にやにやする景雲に、段々と苛立ちが募り始めた晏寿は苦し紛れに
「仕事終わらせてくれてありがとう!」
と叫ぶのだった。
「…あれ?」
景雲が済ませたという仕事の書類を確認していると、景雲の筆跡とは違うものを見つける。
景雲の筆跡は文字を流れるように書き、線の太い・細いを使い分けている。
しかし、晏寿が見つけた書類は最初から最後まで同じ墨色で大きさも整っている。
晏寿はすぐにこの書類を作成したのは、秀英だと気づいた。
秀英はまるで自分は関与していないように言っていたが、何割かは行っている事実に晏寿は秀英にも感謝を伝えなければと顔を上げた。
しかし、秀英は既に自分の仕事を行っており、他の人と打ち合わせしていた。
機会を逃してしまい、残念な気持ちで秀英の横顔を見やる。
通った鼻筋、キリッとした目元と眉、真剣な表情をしている秀英を思わず見つめていた。
すると視線に気づいたのか秀英がこちらを向き、目が合い晏寿の心臓が跳ねる。
慌てて視線を外し、邪念を払うように頭を振る。
そんな晏寿の奇妙な行動に秀英は首を傾げるのだった。
自身の仕事は二人が片付けてくれたため、晏寿は後輩達に今後の武官達の食事について引き継ぎを行った。
今後の献立は昴全と最低五日分は考え、必要な食材はこちら側から調達することにした。こうすることで以前のような横流しや物資不足を無くし無駄な経費をかけないようにした。
「あと、削減できそうなところは…」
手元の資料に目をやりながら、次に行うべきことを頭の中で組み立てていく晏寿であった。
0
お気に入りに追加
23
あなたにおすすめの小説
さようなら、私の初恋。あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。
ごろごろみかん。
ファンタジー
結婚式の夜、私はあなたに殺された。
彼に嫌悪されているのは知っていたけど、でも、殺されるほどだとは思っていなかった。
「誰も、お前なんか必要としていない」
最期の時に言われた言葉。彼に嫌われていても、彼にほかに愛するひとがいても、私は彼の婚約者であることをやめなかった。やめられなかった。私には責務があるから。
だけどそれも、意味のないことだったのだ。
彼に殺されて、気がつけば彼と結婚する半年前に戻っていた。
なぜ時が戻ったのかは分からない。
それでも、ひとつだけ確かなことがある。
あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。
私は、私の生きたいように生きます。
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
世の中は意外と魔術で何とかなる
ものまねの実
ファンタジー
新しい人生が唐突に始まった男が一人。目覚めた場所は人のいない森の中の廃村。生きるのに精一杯で、大層な目標もない。しかしある日の出会いから物語は動き出す。
神様の土下座・謝罪もない、スキル特典もレベル制もない、転生トラックもそれほど走ってない。突然の転生に戸惑うも、前世での経験があるおかげで図太く生きられる。生きるのに『隠してたけど実は最強』も『パーティから追放されたから復讐する』とかの設定も必要ない。人はただ明日を目指して歩くだけで十分なんだ。
『王道とは歩むものではなく、その隣にある少しずれた道を歩くためのガイドにするくらいが丁度いい』
平凡な生き方をしているつもりが、結局騒ぎを起こしてしまう男の冒険譚。困ったときの魔術頼み!大丈夫、俺上手に魔術使えますから。※主人公は結構ズルをします。正々堂々がお好きな方はご注意ください。
後宮にて、あなたを想う
じじ
キャラ文芸
真国の皇后として後宮に迎え入れられた蔡怜。美しく優しげな容姿と穏やかな物言いで、一見人当たりよく見える彼女だが、実は後宮なんて面倒なところに来たくなかった、という邪魔くさがり屋。
家柄のせいでら渋々嫁がざるを得なかった蔡怜が少しでも、自分の生活を穏やかに暮らすため、嫌々ながらも後宮のトラブルを解決します!
転生してしまったので服チートを駆使してこの世界で得た家族と一緒に旅をしようと思います
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
俺はクギミヤ タツミ。
今年で33歳の社畜でございます
俺はとても運がない人間だったがこの日をもって異世界に転生しました
しかし、そこは牢屋で見事にくそまみれになってしまう
汚れた囚人服に嫌気がさして、母さんの服を思い出していたのだが、現実を受け止めて抗ってみた。
すると、ステータスウィンドウが開けることに気づく。
そして、チートに気付いて無事にこの世界を気ままに旅することとなる。楽しい旅にしなくちゃな
7個のチート能力は貰いますが、6個は別に必要ありません
ひむよ
ファンタジー
「お詫びとしてどんな力でも与えてやろう」
目が覚めると目の前のおっさんにいきなりそんな言葉をかけられた藤城 皐月。
この言葉の意味を説明され、結果皐月は7個の能力を手に入れた。
だが、皐月にとってはこの内6個はおまけに過ぎない。皐月にとって最も必要なのは自分で考えたスキルだけだ。
だが、皐月は貰えるものはもらうという精神一応7個貰った。
そんな皐月が異世界を安全に楽しむ物語。
人気ランキング2位に載っていました。
hotランキング1位に載っていました。
ありがとうございます。
【完結】身代わり悪女ですが、殺されたくないので完璧を目指します。
曽根原ツタ
恋愛
『国民的女優』ともてはやされていた宮瀬らんかは撮影中に突如現れた鏡に吸い込まれ、異世界へ転移してしまった。
実はこの鏡、殺された皇后を生き返らせるための術に使われたものなのだが、なぜからんかが召喚されたのである。
らんかは死んだ皇后と──瓜二つの容姿をしていた。
そこで、術でらんかを呼び出した皇帝が、犯人が見つかるまで、皇后のなりすましをするように脅迫してきて……?
☆小説家になろう様でも公開中
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる