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第8章 無駄な経費削減編

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「そうか。秀英の複雑な家庭の話を聞いて晏寿は心痛め、涙したということか?」
「いや、頭突きをされた」
「女のすることか!?」
「俺も惚れた女にそんな事されるとは思ってもみなかった」
「お前達の関係って何なんだよ…」

淡々と話す秀英に景雲はがっくりと肩を落とす。
しかし抜け目のない景雲は、秀英の発言から重要な言葉を聞き逃さない。

「伯家のことをそんなに簡単に俺に話していいのか」

それは試すような、確認するような問いかけだった。
秀英を見据える景雲であったが、秀英はちらりと一瞥して普段通りに話す。

「景雲は俺を陥れるようなことをしない。信頼できる友だと思っているが違うか?」
「違わない。
というか、そういう小っ恥ずかしいことをいつもの調子で言われると流石に恥ずかしいからやめてくれ」
「?」

顔半分を手で覆い、照れているのを隠そうとする景雲の行動が秀英には理解できず、小首を傾げる。
平然を保とうと景雲は咳払いをし、流れを変えようとする。

「ま、とにかく話を聞く限り、晏寿も戸惑っているのだろう。無闇に追いかけても逃げるだけだ。そっとしておけ」
「どのくらい?」
「晏寿から話しかけてくるまでだ。本当に恋愛には不器用だな」
「今まで必要性を感じなかった。景雲がいて良かった」

再び秀英の発言に、景雲は言葉を失うのだった。


秀英から逃げ回っていた晏寿は、ため息を吐きながら書庫に篭って必要な書物を探していた。
一緒に来ていた凱が心配そうに声をかける。

「体調が優れませんか?」
「あ、いや、大丈夫。心配ありがとう」
「そうですか」

そこで一度会話が途切れ、妙な間が生まれる。
何処と無く気まずい空気を感じていた晏寿に、凱が話しかけた。

「昨日、医療班の近くを通ったとき、陽明を見かけました」
「陽明君を?」
「はい。あいつ、一緒に仕事していたときは暗い顔しかしてなかったのに、医療班で見習いしている今のほうが、大変そうだけど生き生きとしていたんです。
それが嬉しいような、少し悔しいような、ちょっと複雑な気持ちなんです」
「そっか。でもずっとやりたいことだったから、陽明君も頑張れるんだろうね。凱君は?やりたいこと」

質問が飛んできて、凱は答えを探して悩む。
難しい質問をしたつもりはなかった晏寿であったが、真面目に考えている凱にこっそりと笑ってしまった。

「そうですね…今は目の前のことに精一杯ですけど、玲峯殿のような人になりたいです」
「兄様みたいに?」
「はい。初仕事のとき李大臣が不在で、玲峯殿が面倒をみてくださったんです。キリッとしててかっこよくて、すごく頼もしかったんです」

嬉しそうに話す凱に対し、晏寿は「また大臣はサボっていたのか」と違う方向に頭が働いていた。
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