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第8章 無駄な経費削減編
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直球で尋ねてくるあたりが秀英らしい、と晏寿は思った。
もうここまで来たら隠せないと観念した晏寿は全てを話すことにした。
「とある方の教育係を務めた仕事での話よ。
とある方っていうのは、宝 京雅殿下。私は殿下の仮の皇太子妃という形で後宮入りして、殿下に国を統べる者として必要な知識をつけていただくために勉学を教えたり、身の回りのお世話をしたりしていたわ。
紅露は私を追いかけてきて、侍女として私の身の回りのお世話をしてくれていた。紅露がまだ帰ってきていないということは、まだ後宮に残っているということよ」
大体のあらましを話すと秀英は、顎に手を当てて考え込む。
「文のやりとりをしていた際に楓茗殿を紹介されたが、楓茗殿との関係は?」
「彼女は私が後宮入りから出るまでのお世話を全て担ってくれていた人よ。ちなみに李大臣のお姉様だから信頼も厚い」
「なるほど…では、巷に流れていた皇太子妃の名前が『授 安里』であったが、晏寿のことを指すのか?」
「そうよ。偽名を使うよう言われてたから。あの頃は柳家というだけで、背後に糸家が見え隠れしていたから分が悪かったの。だから出生不明の姫を作り上げた。名前は李大臣が私の名前をひっくり返して付けただけだけどね」
そこまで話を聞いて秀英は目を閉じ長く息を吐く。
しばらく考えたのち、目を開いた。
「確かに簡単には口にできない話だな」
「もちろん箝口令が出されていた。それを破ってしまったから謹慎になったんだけど」
「誰に話してしまったんだ?」
「殿下本人」
それは流石にまずいだろうと秀英も思う。
「一番話してはいけない方に話してしまったのではないか?」
「偽りでも夫婦だったからね。隠し事は無しって態度を取られてしまっては話すしかなかったの。それに情も湧いていたから、騙していることに背徳感があったわ」
「無情になりきれなかったのか。ちなみにその情とは愛情か?」
ずいっと前に出てきて晏寿に確認する。晏寿はおののきつつ、うーんと考えた。
「愛を知らない人だったから、愛を教えるとは話したわ。でも、私が抱いていた殿下に対する情は愛情でも同情でもなかったと思う。では何だったのかと問われれば、答えられないけれど」
「愛を教えるとは、その、つまり、夫婦の営み…的なことを教えたということか?」
「違うわよ!」
秀英が言葉を選びながら言ったことに赤面しながら即座に否定する。
秀英はどこかほっとした面持ちで晏寿の反応を見ていた。
「人と人とのふれ合いとか、繋がりとかの意味合いのことを教えたの。そういうことも希薄だったから。それに仮の妃が身篭ったなんてそれこそ公私混同だし、地位目当てだって後ろ指さされるわ」
「では体の関係は無かったんだな?」
「…ええ」
晏寿は言ってて恥ずかしくなったが、秀英にとっては重要なことであり、晏寿と京雅の関係が無いということに安堵した。
もうここまで来たら隠せないと観念した晏寿は全てを話すことにした。
「とある方の教育係を務めた仕事での話よ。
とある方っていうのは、宝 京雅殿下。私は殿下の仮の皇太子妃という形で後宮入りして、殿下に国を統べる者として必要な知識をつけていただくために勉学を教えたり、身の回りのお世話をしたりしていたわ。
紅露は私を追いかけてきて、侍女として私の身の回りのお世話をしてくれていた。紅露がまだ帰ってきていないということは、まだ後宮に残っているということよ」
大体のあらましを話すと秀英は、顎に手を当てて考え込む。
「文のやりとりをしていた際に楓茗殿を紹介されたが、楓茗殿との関係は?」
「彼女は私が後宮入りから出るまでのお世話を全て担ってくれていた人よ。ちなみに李大臣のお姉様だから信頼も厚い」
「なるほど…では、巷に流れていた皇太子妃の名前が『授 安里』であったが、晏寿のことを指すのか?」
「そうよ。偽名を使うよう言われてたから。あの頃は柳家というだけで、背後に糸家が見え隠れしていたから分が悪かったの。だから出生不明の姫を作り上げた。名前は李大臣が私の名前をひっくり返して付けただけだけどね」
そこまで話を聞いて秀英は目を閉じ長く息を吐く。
しばらく考えたのち、目を開いた。
「確かに簡単には口にできない話だな」
「もちろん箝口令が出されていた。それを破ってしまったから謹慎になったんだけど」
「誰に話してしまったんだ?」
「殿下本人」
それは流石にまずいだろうと秀英も思う。
「一番話してはいけない方に話してしまったのではないか?」
「偽りでも夫婦だったからね。隠し事は無しって態度を取られてしまっては話すしかなかったの。それに情も湧いていたから、騙していることに背徳感があったわ」
「無情になりきれなかったのか。ちなみにその情とは愛情か?」
ずいっと前に出てきて晏寿に確認する。晏寿はおののきつつ、うーんと考えた。
「愛を知らない人だったから、愛を教えるとは話したわ。でも、私が抱いていた殿下に対する情は愛情でも同情でもなかったと思う。では何だったのかと問われれば、答えられないけれど」
「愛を教えるとは、その、つまり、夫婦の営み…的なことを教えたということか?」
「違うわよ!」
秀英が言葉を選びながら言ったことに赤面しながら即座に否定する。
秀英はどこかほっとした面持ちで晏寿の反応を見ていた。
「人と人とのふれ合いとか、繋がりとかの意味合いのことを教えたの。そういうことも希薄だったから。それに仮の妃が身篭ったなんてそれこそ公私混同だし、地位目当てだって後ろ指さされるわ」
「では体の関係は無かったんだな?」
「…ええ」
晏寿は言ってて恥ずかしくなったが、秀英にとっては重要なことであり、晏寿と京雅の関係が無いということに安堵した。
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