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第8章 無駄な経費削減編
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秀英に後で話すとは言ったものの、話す場所に困っていた。
王宮内で話せばどこで聞かれているかわからない状況になるし、晏寿の家には胡蘭と玲峯がいる。
玲峯は口止めすれば黙っていられるだろうが、胡蘭はついうっかりが恐ろしい。
晏寿は頭を悩ませていた。
「ならうちの屋敷に行くか?」
「伯家のお屋敷?」
「離れもあるし、人はらいもできる」
伯家の屋敷には一度入口までは行ったことがあるが、とても大きかったことを覚えている。
離れがあるということも納得できた。
晏寿は秀英の言葉に甘えて伯家へと行くことにした。
「鈴はうまくやって行けそうか?」
歩く道中、秀英は自分の家から出した使用人のことを尋ねてきた。
「すごく気が利くし、配慮が細かいよ。まだ一日目でわからないことだらけなはずなのに、すぐ先回りして仕事してくれるから助かっちゃった」
「元々鈴は気配りの上手い娘だ。だから今回のことに推薦したというのもある。それに幼い頃から伯家に仕えてきて伯家以外のことを知らないから、今後のことを考えれば一度でも外の世界を知っておいたほうがいい」
「…なんだか父親みたい」
ぼそりと言った言葉だったが秀英の耳には届いていた。
ふと、柳家が落ちぶれていった原因は晏寿の父の死だということを秀英は思い出し、晏寿に問いかける。
「晏寿の父上はどんな方だったんだ?」
「父様?そうね、小さい時の記憶しかないけど、厳しくも優しい人だったと思う」
「その話も後で聞いてもいいか?」
「きっと面白い話ではないよ?」
「晏寿のことなら何でも知りたい。晏寿の父上とは会うことができないからなお話を聞きたい」
秀英は至って真面目な様子なため、晏寿は言葉を詰まらせる。
真っ直ぐ前を向く秀英の横顔を見て、顔が赤くなるのを感じるのだった。
秀英の屋敷に到着し、晏寿は離れに通された。
茶の準備がされたところで、茶を持ってきた使用人に秀英は誰も立ち寄らないようにと指示を出していた。
使用人が恭しく出ていくまでをぼんやりと見ていた晏寿は、やはり自分の家とは違うということを感じていた。
「どうかしたか?」
ぼんやりとしていた晏寿に首を傾げながら秀英が声をかける。
「いや、うちとは違うなーって思って。うちは母屋しかないし、お茶も自分で用意するから」
「離れがあっても管理や維持が必要だ。それに何でも自分でできるほうが俺はすごいと思う。少なくとも俺は茶は淹れられない」
椅子に腰掛けながら、晏寿の感じていた違和感のようなものを一蹴する秀英。
帰宅中の会話といい、とことん自分のことを持ち上げてくる秀英を今度はむず痒く感じる。
そんな気持ちを知ってか知らずか、秀英は真っ直ぐと晏寿を見つめながら聞いてきた。
「昼間、誤魔化したことについて聞かせてもらおうか」
王宮内で話せばどこで聞かれているかわからない状況になるし、晏寿の家には胡蘭と玲峯がいる。
玲峯は口止めすれば黙っていられるだろうが、胡蘭はついうっかりが恐ろしい。
晏寿は頭を悩ませていた。
「ならうちの屋敷に行くか?」
「伯家のお屋敷?」
「離れもあるし、人はらいもできる」
伯家の屋敷には一度入口までは行ったことがあるが、とても大きかったことを覚えている。
離れがあるということも納得できた。
晏寿は秀英の言葉に甘えて伯家へと行くことにした。
「鈴はうまくやって行けそうか?」
歩く道中、秀英は自分の家から出した使用人のことを尋ねてきた。
「すごく気が利くし、配慮が細かいよ。まだ一日目でわからないことだらけなはずなのに、すぐ先回りして仕事してくれるから助かっちゃった」
「元々鈴は気配りの上手い娘だ。だから今回のことに推薦したというのもある。それに幼い頃から伯家に仕えてきて伯家以外のことを知らないから、今後のことを考えれば一度でも外の世界を知っておいたほうがいい」
「…なんだか父親みたい」
ぼそりと言った言葉だったが秀英の耳には届いていた。
ふと、柳家が落ちぶれていった原因は晏寿の父の死だということを秀英は思い出し、晏寿に問いかける。
「晏寿の父上はどんな方だったんだ?」
「父様?そうね、小さい時の記憶しかないけど、厳しくも優しい人だったと思う」
「その話も後で聞いてもいいか?」
「きっと面白い話ではないよ?」
「晏寿のことなら何でも知りたい。晏寿の父上とは会うことができないからなお話を聞きたい」
秀英は至って真面目な様子なため、晏寿は言葉を詰まらせる。
真っ直ぐ前を向く秀英の横顔を見て、顔が赤くなるのを感じるのだった。
秀英の屋敷に到着し、晏寿は離れに通された。
茶の準備がされたところで、茶を持ってきた使用人に秀英は誰も立ち寄らないようにと指示を出していた。
使用人が恭しく出ていくまでをぼんやりと見ていた晏寿は、やはり自分の家とは違うということを感じていた。
「どうかしたか?」
ぼんやりとしていた晏寿に首を傾げながら秀英が声をかける。
「いや、うちとは違うなーって思って。うちは母屋しかないし、お茶も自分で用意するから」
「離れがあっても管理や維持が必要だ。それに何でも自分でできるほうが俺はすごいと思う。少なくとも俺は茶は淹れられない」
椅子に腰掛けながら、晏寿の感じていた違和感のようなものを一蹴する秀英。
帰宅中の会話といい、とことん自分のことを持ち上げてくる秀英を今度はむず痒く感じる。
そんな気持ちを知ってか知らずか、秀英は真っ直ぐと晏寿を見つめながら聞いてきた。
「昼間、誤魔化したことについて聞かせてもらおうか」
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