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第7章 晏寿の奮闘編

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晏寿は早速昂全に全体の大まかな流れと道具の位置などを教えていった。
昂全は小さく返事をするだけで、晏寿が「何か質問ある?」と聞いても、「大丈夫っす」と返すだけだった。
晏寿もやってみないとわからないかと一人で納得し、特に深追いすることもなかった。

「晏寿はいるか」

途中入口のほうから名前を呼ばれ、そちらを向くと秀英が立っていた。

「秀英、おはよう」
「おはよう。調理を担当する者を連れてきた」

そう言って秀英は後ろにいた者を紹介する。

りんだ」

そこにいたのは、不機嫌そうな表情の、晏寿を最初に下女と間違えた少女・鈴であった。


秀英は鈴を置いてさっさと行ってしまった。
残された晏寿と鈴の間には微妙な空気が流れる。

「えっと、これから三日間よろしくね?」
「…早く仕事を教えてください」

鈴の態度はぶっきらぼうで、晏寿もたじたじになる。
それでも仕事は仕事ということで、昂全は下働き達と一緒に下処理に入ってもらい、晏寿は鈴にも昂全と同じ内容を説明した。
晏寿が説明するのを鈴はただ黙って聞いていた。

「これで流れは終わりだけど、疑問とかある?」
「ないです。私は何をしたらいいんですか」

抑揚のない台詞に晏寿も言葉を失いかけるも、「それじゃあ向こうで食器の準備を」と何とか絞り出すことができたのだった。

「文官ちゃん文官ちゃん」

鈴が仕事に混ざったところで、越がこそっと晏寿に近寄って小声で話しかける。

「あの嬢ちゃん態度悪すぎやしないかい?せっかく文官ちゃんが教えてんのに、返事すらしない」
「うーん、恐らく初対面が最悪だったから拗れてるのかなぁ。でも仕事ができたら問題ないわ」
「そうかい?俺ぁやだよ、あんな無愛想」
「慣れてないってのもあるよ」

そうこうしていると他の人から二人ともお呼びがかかり、会話は中断した。
慌ただしく料理を作っていき、あっという間に食事の時間となる。

「昂全君はそのまま片付けを、鈴ちゃんは私と一緒にこっちに来て」

鈴だけを連れてやってきたのは武官達の休憩所である。

「さ、ここで今度は配膳を行うわ」
「全武官のを!?」
「自分で注ぐ人も希にいるわ。始めるわよ」

鈴が信じられないという表情の中、晏寿はテキパキと支度をしていく。
武官達はその間にもぞろぞろと入ってきていた。

「お、今日は可愛い子がいる!」
「本当だ!小さくて可愛い」
「花があるなぁ~」

武官達は鈴の姿を確認すると、口を揃えて「可愛い」と褒めちぎった。
鈴が対応に困っていると、尚一層武官達は頬を緩めた。

「ほら!早く食べないと時間ないわよ!」

晏寿は武官達の態度が気に入らなくきつく当たるも、どこ吹く風である。
結局鈴のほうに長蛇の列ができたのだった。
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