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第7章 晏寿の奮闘編

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部屋に入るとすぐに晏寿は頭を下げた。

「二人とも私がいない間に私の仕事をしてくれてありがとう。
それから…景雲、今朝はいきなり泣き出してごめんなさい。しかも泣き止むまで待ってくれて、本当に申し訳ない。
あと…秀英、今朝のことは本当にごめんなさい。秀英に言わせてしまった私が悪いわ」
「なに、俺のことは礼には及ばんさ。ほら、秀英」

景雲が隣に立つ秀英を肘でつつく。
秀英は口をもごもごとさせ、言いづらそうに開いた。

「俺も今朝はすまなかった。その…俺は晏寿に頼ってほしかったんだと思う。晏寿は一人で何でもやってしまおうとする。だが、一人ではできないこともあるし、適材適所というのもある。だから…」
「秀英長い。もっと簡潔に」

しどろもどろで話す秀英に痺れを切らした景雲から、ばっさりと扱われてしまう。それを受け、秀英は一つ息を長く吐いたあと続けた。

「俺は聖人君子ではないから、好き嫌いもあれば許せないこともある。だから晏寿に対して気に食わないところも感じてしまう。でも晏寿が大切な存在であることには変わりないし、そばにいてほしいのも晏寿だ」
「うん、ありがとう。正直秀英の言葉は堪えた。でも原因は私だし、秀英なら許してくれるかもって甘んじた考え方していたことが悪いわ。だから秀英もこれ以上自分のことを責めないで」

晏寿がそっと秀英の頬に手を寄せる。その行動と自身がどんな表情をしていたのかということに秀英は驚く。
晏寿の柔らかな手のひらから伝わる温もりに眉を下げて微笑んだ。
その表情を見て、晏寿もようやく緊張の糸を緩めることができた。

二人が穏やかな気持ちになっているときだった。

「はいここまで。二人きりでないことを忘れずに。この先は二人きりでやってくれ」

景雲が不意に発したため、晏寿は慌てて手を引っ込めて二人して目を見開いて景雲を見る。

「さて二人の仲を取り持つために尽力した俺への労いは?」

にやりと口角を上げる。秀英は面倒なと言わんばかりにため息をつき、晏寿はきょとんとする。
秀英は景雲の肩に手を置き、言い放った。

「よくやった」
「軽いな、おい」
「でも本当にありがとう。今度ご飯作るから許して?」
「仕方ないな。晏寿にそこまでお願いされてしまったら。俺は桃まんが食べたい」
「調子いいんだから」

景雲がいつものように振舞っていることが、晏寿と秀英にとっては有難かった。
こうして、晏寿と秀英の喧嘩(?)はひとまず幕を閉じた。
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