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第7章 晏寿の奮闘編
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「文官の嬢ちゃん、何作ってるんだ?もう武官達の飯はできただろう?」
「これ?皆のご飯作ってるの。お腹空いたでしょ。余り物で作った簡単なものだけど」
「俺達にも飯があるのか!?」
「食べていいのか!」
晏寿の作っているものは余り物で作った所謂賄い料理であったが、下働き達は大層喜んで食べた。
その様子を見て満足した晏寿は 、今度は配膳をすべく武官達の休憩所に行った。
「なんだこれ!今日は祝い事か何かか?」
武官達はいつもより多い品数の料理に驚く。晏寿は心中でほくそ笑みながら、配膳を行う。
「今日は私も手伝ったの!沢山あるからいっぱい食べて!」
「娘文官ちゃんが作ったのか?どの飯だ?」
「野郎が作ったものより娘文官が作ったもののほうがいい!それを分けてくれ」
「俺も!」
武官達はこぞって列をなし、あっという間に休憩所は満員になった。そこでも晏寿はテキパキと動き、時折聞こえる「うまい」という声に喜びを隠せなかった。
その日作られた料理は武官達の腹に全て収まり、配膳が終わったところで朝からずっと立ちっぱなしだった晏寿はやっと座ることができた。
身体は料理に囲まれていたせいか、空腹を感じない。
ずしりとくる倦怠感は動き回っていたせいか、はたまた朝から号泣したせいか。
どちらもだろうなと考えがまとまったところで、あと自分が何をしなければならないのかを考える。
「残りの時間で、自分の仕事と陽明君から引き継いだ仕事、甜丈君と凱君にあれは指示を出して…そうだ、新しい調理長も探さなきゃ」
指折り数えて、そこで言葉を切り切なそうに目を細める。
「…秀英と景雲に謝らなくちゃ」
秀英は自分のことを思って怒ってくれていた。
秀英と喧嘩して大泣きした自分を景雲は必死に慰めてくれた。
二人とも晏寿のことを思って行動している。
それなのに晏寿は自分のことばかり考え、我儘を押し通してしまっている。
二人のために何かしたことがあっただろうかと考えてみるも、疲れた頭では何も浮かんでこず、ただ自分の未熟さだけが募っていく。
気持ちと身体を引きずりながら、片付けは下働き達に任せて晏寿は武官達の休憩所を出た。
とぼとぼと自分の持ち場に帰る途中で、「晏寿さん!」と声をかけられた。
そちらを振り向くと先日一緒に帳簿がおかしいと話した誠真が爽やかな笑顔で手を振っていた。
「誠真さん」
「お疲れ様。なんだか疲れた顔してるね。大丈夫?」
「ええ。朝から立ち仕事だったからそれでかもしれないです」
誠真は晏寿に近づくと、首を傾げながら心配してくる。
「これ?皆のご飯作ってるの。お腹空いたでしょ。余り物で作った簡単なものだけど」
「俺達にも飯があるのか!?」
「食べていいのか!」
晏寿の作っているものは余り物で作った所謂賄い料理であったが、下働き達は大層喜んで食べた。
その様子を見て満足した晏寿は 、今度は配膳をすべく武官達の休憩所に行った。
「なんだこれ!今日は祝い事か何かか?」
武官達はいつもより多い品数の料理に驚く。晏寿は心中でほくそ笑みながら、配膳を行う。
「今日は私も手伝ったの!沢山あるからいっぱい食べて!」
「娘文官ちゃんが作ったのか?どの飯だ?」
「野郎が作ったものより娘文官が作ったもののほうがいい!それを分けてくれ」
「俺も!」
武官達はこぞって列をなし、あっという間に休憩所は満員になった。そこでも晏寿はテキパキと動き、時折聞こえる「うまい」という声に喜びを隠せなかった。
その日作られた料理は武官達の腹に全て収まり、配膳が終わったところで朝からずっと立ちっぱなしだった晏寿はやっと座ることができた。
身体は料理に囲まれていたせいか、空腹を感じない。
ずしりとくる倦怠感は動き回っていたせいか、はたまた朝から号泣したせいか。
どちらもだろうなと考えがまとまったところで、あと自分が何をしなければならないのかを考える。
「残りの時間で、自分の仕事と陽明君から引き継いだ仕事、甜丈君と凱君にあれは指示を出して…そうだ、新しい調理長も探さなきゃ」
指折り数えて、そこで言葉を切り切なそうに目を細める。
「…秀英と景雲に謝らなくちゃ」
秀英は自分のことを思って怒ってくれていた。
秀英と喧嘩して大泣きした自分を景雲は必死に慰めてくれた。
二人とも晏寿のことを思って行動している。
それなのに晏寿は自分のことばかり考え、我儘を押し通してしまっている。
二人のために何かしたことがあっただろうかと考えてみるも、疲れた頭では何も浮かんでこず、ただ自分の未熟さだけが募っていく。
気持ちと身体を引きずりながら、片付けは下働き達に任せて晏寿は武官達の休憩所を出た。
とぼとぼと自分の持ち場に帰る途中で、「晏寿さん!」と声をかけられた。
そちらを振り向くと先日一緒に帳簿がおかしいと話した誠真が爽やかな笑顔で手を振っていた。
「誠真さん」
「お疲れ様。なんだか疲れた顔してるね。大丈夫?」
「ええ。朝から立ち仕事だったからそれでかもしれないです」
誠真は晏寿に近づくと、首を傾げながら心配してくる。
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