101 / 133
第7章 晏寿の奮闘編
13
しおりを挟む
「…好き放題言いやがって!こんなところ辞めてやる!」
一人が負け惜しみで叫び、他の二人も我に返ったように「そうだ!」と呼応する。
「どう困るのはお前らだ!金にならねぇなら辞めたほうがましだ!」
そう言い残して、男達は逃げるように出ていった。
急に静まり返った部屋で、晏寿はずっと秀英に支えてもらっていた事に気づく。
「秀英、ありがと…場も納めてくれて」
「いや、勝手な振る舞いに頭にきただけだ。しかし武官達の食事問題をどうするか」
「それは私が作るよ。他にできる人いないし」
晏寿の発言に秀英の眉がぴくりと動いた。
晏寿はその事に気付かず、仕事に戻ろうとする。
「…どうしてお前はそうなんだ?」
「?秀英…?」
「何故一人で全てを行おうとする?今晏寿は自身の業務に陽明から引継がれた業務で人の倍は働いている。そして更に武官達の食事まで作るだと?何故他に頼ろうとしない?」
「だってそれは私が蒔いた種だから…」
「全てが中途半端になる懸念はしていないのか?」
「ちゃんと全てやり切るわ!」
乗り込んできた男達には冷静に対応していたのに、晏寿と秀英のやりとりはどんどんと過熱していく。
周りもどうやって止めたらいいのかわからず、思わず近くにいなかった景雲を探しにいくほどだった。
「景雲殿!こちらです!」
「あいつらはまた…」
甜丈が景雲を呼び、なおも二人の口論は激しくなる。
景雲はその姿を見て、呆れるしかなかった。
「さっきは私の実力を認めてくれたじゃない!」
「もちろん晏寿の頑張りはわかっている。だが時と場合があるだろう!」
そろそろ止めようと景雲が割って入ろうとした矢先だった。
「そうやって一人で溜め込む晏寿のことは、嫌いだ」
「あ」
「っ!」
晏寿の目が大きく見開かれる。景雲はまずいという表情で二人を見た。
発言した秀英も自分の言葉に驚いており、ぐっと手を握ると踵を返し「頭を冷やしてくる」と言って出ていった。
晏寿は暫く動かなかったが、腰を抜かしてその場にへたり込む。
景雲が近づき、晏寿の肩を叩く。
「晏寿…?」
「…、ぅう、けいうんー!」
景雲の顔を見ると晏寿の目からぶわっと涙が溢れ出した。
いきなり泣き出した晏寿に景雲もわたわたとする。
「だ、大丈夫か?」
「しゅ、しゅぅえいが、き、嫌いって…!」
わぁあっと大きな声を上げて泣く晏寿に周囲もまさか大泣きするとは思ってもみなかったため、皆が慌て出す。
「秀英も本心ではないさ!本人も驚いた顔をしていた!」
「で、でもしゅえい、は、うそ言わな、もん」
顔をぐしゃぐしゃにしながら泣く晏寿には、先程まで男達に憮然と立ち向かっていた姿は全く見られなかった。
「とにかく落ち着け。でないと秀英と話もできない」
「ぅ…ぐずっ…」
一人が負け惜しみで叫び、他の二人も我に返ったように「そうだ!」と呼応する。
「どう困るのはお前らだ!金にならねぇなら辞めたほうがましだ!」
そう言い残して、男達は逃げるように出ていった。
急に静まり返った部屋で、晏寿はずっと秀英に支えてもらっていた事に気づく。
「秀英、ありがと…場も納めてくれて」
「いや、勝手な振る舞いに頭にきただけだ。しかし武官達の食事問題をどうするか」
「それは私が作るよ。他にできる人いないし」
晏寿の発言に秀英の眉がぴくりと動いた。
晏寿はその事に気付かず、仕事に戻ろうとする。
「…どうしてお前はそうなんだ?」
「?秀英…?」
「何故一人で全てを行おうとする?今晏寿は自身の業務に陽明から引継がれた業務で人の倍は働いている。そして更に武官達の食事まで作るだと?何故他に頼ろうとしない?」
「だってそれは私が蒔いた種だから…」
「全てが中途半端になる懸念はしていないのか?」
「ちゃんと全てやり切るわ!」
乗り込んできた男達には冷静に対応していたのに、晏寿と秀英のやりとりはどんどんと過熱していく。
周りもどうやって止めたらいいのかわからず、思わず近くにいなかった景雲を探しにいくほどだった。
「景雲殿!こちらです!」
「あいつらはまた…」
甜丈が景雲を呼び、なおも二人の口論は激しくなる。
景雲はその姿を見て、呆れるしかなかった。
「さっきは私の実力を認めてくれたじゃない!」
「もちろん晏寿の頑張りはわかっている。だが時と場合があるだろう!」
そろそろ止めようと景雲が割って入ろうとした矢先だった。
「そうやって一人で溜め込む晏寿のことは、嫌いだ」
「あ」
「っ!」
晏寿の目が大きく見開かれる。景雲はまずいという表情で二人を見た。
発言した秀英も自分の言葉に驚いており、ぐっと手を握ると踵を返し「頭を冷やしてくる」と言って出ていった。
晏寿は暫く動かなかったが、腰を抜かしてその場にへたり込む。
景雲が近づき、晏寿の肩を叩く。
「晏寿…?」
「…、ぅう、けいうんー!」
景雲の顔を見ると晏寿の目からぶわっと涙が溢れ出した。
いきなり泣き出した晏寿に景雲もわたわたとする。
「だ、大丈夫か?」
「しゅ、しゅぅえいが、き、嫌いって…!」
わぁあっと大きな声を上げて泣く晏寿に周囲もまさか大泣きするとは思ってもみなかったため、皆が慌て出す。
「秀英も本心ではないさ!本人も驚いた顔をしていた!」
「で、でもしゅえい、は、うそ言わな、もん」
顔をぐしゃぐしゃにしながら泣く晏寿には、先程まで男達に憮然と立ち向かっていた姿は全く見られなかった。
「とにかく落ち着け。でないと秀英と話もできない」
「ぅ…ぐずっ…」
0
お気に入りに追加
23
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった
ミズノみすぎ
ファンタジー
「黒騎士ゼクード・フォルス。君を竜狩り精鋭部隊【ドラゴンキラー隊】の隊長に任命する」
15歳の春。
念願のS級騎士になった俺は、いきなり国王様からそんな命令を下された。
「隊長とか面倒くさいんですけど」
S級騎士はモテるって聞いたからなったけど、隊長とかそんな重いポジションは……
「部下は美女揃いだぞ?」
「やらせていただきます!」
こうして俺は仕方なく隊長となった。
渡された部隊名簿を見ると隊員は俺を含めた女騎士3人の計4人構成となっていた。
女騎士二人は17歳。
もう一人の女騎士は19歳(俺の担任の先生)。
「あの……みんな年上なんですが」
「だが美人揃いだぞ?」
「がんばります!」
とは言ったものの。
俺のような若輩者の部下にされて、彼女たちに文句はないのだろうか?
と思っていた翌日の朝。
実家の玄関を部下となる女騎士が叩いてきた!
★のマークがついた話数にはイラストや4コマなどが後書きに記載されています。
※2023年11月25日に書籍が発売!
イラストレーターはiltusa先生です!
※コミカライズも進行中!
明智さんちの旦那さんたちR
明智 颯茄
恋愛
あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。
奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。
ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。
*BL描写あり
毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる