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第7章 晏寿の奮闘編
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「それに関しては大丈夫だ」
晏寿に代わって秀英がしれっとした表情で言う。
「晏寿は初めて大臣と会った日に啖呵を切っている」
「ええ!?」
「それに、李大臣は意見を言わないほうが好きではない。言いたいことははっきり伝え、結果を出せというのが方針だ」
淡々と説明する秀英の後ろで晏寿と景雲は、
「そんなことあったな」
「ねー」
とまるで他人事のように話していた。
「とにかく、陽明は何も気にすることはないよ。あとは胸を張って次のことを頑張るのみ!」
「仕事のことは気にするな。晏寿の手助けなら俺達がする」
「多少の無理は慣れたもんさ。ま、俺は無理をする二人を止める係だがな」
晏寿達の言葉に陽明は言葉を詰まらせる。
そして深々と頭を下げ、
「ありがとうございます…!」
と今までで一番大きな声で感謝を述べるのだった。
陽明の仕事を引き継ぐこととなった晏寿は、早々に業務のことを確認した。
「えっと、今甜丈君達がやっているのは軍の資金ね」
「はい。資金の調達から何にいくら使うのかという帳簿を付けています。他にも遠征にかかる食費や持っていく食糧についても考えています」
「家計簿みたいなものか」
「えっと…それはちょっと分かりかねます」
晏寿は甜丈から説明を受けていた。
規模の大きくなった家計簿のようなものと思って話を聞いており、秀英と景雲が不在の中後輩達は「違う」とツッコミをいれていいものかどうか考えていた。
ある程度の説明を聞くと、晏寿は資料を片付け立ち上がる。
「だいたいはわかったわ。陽明君が抜けた分を頑張るから凱君も甜丈君もよろしくね」
「こちらこそよろしくお願いします」
二人も深々と頭を下げ、晏寿に感謝の意を伝えた。
晏寿は自身の仕事をすべく、持ち場に帰ろうとしていたところに玲峯と会った。
「晏寿、さっきは盛大にやり合ってたな」
「はは、戸が開けっ放しだったからね…」
先程の儀円とのやりとりを揶揄う。玲峯の言葉に乾いた笑みで誤魔化した。
「あそこまで言えるのはお前くらいじゃないか?」
「そんなことないよ。兄様だって違うと思ったら言うでしょ」
「違うと思えばな」
兄妹の会話を横で聞いていた他の文官達は
「あの大臣に意見を言えるのは柳兄妹しかいない」
と思っているのだった。
翌日。
晏寿は軍の状況を確認するため、帳簿をめくっていた。
するとそこには、目を疑うようなことばかりが記載されていた。
「武具の破損による支出ってこんなに必要なの…?こっちに書かれている武具の値段一覧と購入した個数を掛け合わせても合わないし…
そもそも食費と軍隊の人数とで比例がとれていないわ。人数増えているのに、食費が横ばいってどういうことよ…」
ぶつぶつと呟きながら算盤をパチパチと弾く。その異様な雰囲気に周囲は声をかけられないでいた。
そして最後まで行き着くとバンと勢いよく帳簿を閉め、凱と甜丈のところにやってきた。
「この帳簿を付けていたのは誰?」
「その帳簿は今まで軍の人達に任せていたものです。ふと杜補佐が収入と支出が合ってないんじゃないかってことで、こちらに割り振られたんです」
凱の返答に晏寿は頭が痛くなってきた。杜補佐が気づかなければ、今後もおかしなお金のやりくりで軍が動くことになっていたことになる。
「ちょっと軍の人達と話してくる!」
「え!今からですか!?」
凱の驚きも聞かず、晏寿は走って武官達が演習を行っている演習場へと向かっていった。
晏寿に代わって秀英がしれっとした表情で言う。
「晏寿は初めて大臣と会った日に啖呵を切っている」
「ええ!?」
「それに、李大臣は意見を言わないほうが好きではない。言いたいことははっきり伝え、結果を出せというのが方針だ」
淡々と説明する秀英の後ろで晏寿と景雲は、
「そんなことあったな」
「ねー」
とまるで他人事のように話していた。
「とにかく、陽明は何も気にすることはないよ。あとは胸を張って次のことを頑張るのみ!」
「仕事のことは気にするな。晏寿の手助けなら俺達がする」
「多少の無理は慣れたもんさ。ま、俺は無理をする二人を止める係だがな」
晏寿達の言葉に陽明は言葉を詰まらせる。
そして深々と頭を下げ、
「ありがとうございます…!」
と今までで一番大きな声で感謝を述べるのだった。
陽明の仕事を引き継ぐこととなった晏寿は、早々に業務のことを確認した。
「えっと、今甜丈君達がやっているのは軍の資金ね」
「はい。資金の調達から何にいくら使うのかという帳簿を付けています。他にも遠征にかかる食費や持っていく食糧についても考えています」
「家計簿みたいなものか」
「えっと…それはちょっと分かりかねます」
晏寿は甜丈から説明を受けていた。
規模の大きくなった家計簿のようなものと思って話を聞いており、秀英と景雲が不在の中後輩達は「違う」とツッコミをいれていいものかどうか考えていた。
ある程度の説明を聞くと、晏寿は資料を片付け立ち上がる。
「だいたいはわかったわ。陽明君が抜けた分を頑張るから凱君も甜丈君もよろしくね」
「こちらこそよろしくお願いします」
二人も深々と頭を下げ、晏寿に感謝の意を伝えた。
晏寿は自身の仕事をすべく、持ち場に帰ろうとしていたところに玲峯と会った。
「晏寿、さっきは盛大にやり合ってたな」
「はは、戸が開けっ放しだったからね…」
先程の儀円とのやりとりを揶揄う。玲峯の言葉に乾いた笑みで誤魔化した。
「あそこまで言えるのはお前くらいじゃないか?」
「そんなことないよ。兄様だって違うと思ったら言うでしょ」
「違うと思えばな」
兄妹の会話を横で聞いていた他の文官達は
「あの大臣に意見を言えるのは柳兄妹しかいない」
と思っているのだった。
翌日。
晏寿は軍の状況を確認するため、帳簿をめくっていた。
するとそこには、目を疑うようなことばかりが記載されていた。
「武具の破損による支出ってこんなに必要なの…?こっちに書かれている武具の値段一覧と購入した個数を掛け合わせても合わないし…
そもそも食費と軍隊の人数とで比例がとれていないわ。人数増えているのに、食費が横ばいってどういうことよ…」
ぶつぶつと呟きながら算盤をパチパチと弾く。その異様な雰囲気に周囲は声をかけられないでいた。
そして最後まで行き着くとバンと勢いよく帳簿を閉め、凱と甜丈のところにやってきた。
「この帳簿を付けていたのは誰?」
「その帳簿は今まで軍の人達に任せていたものです。ふと杜補佐が収入と支出が合ってないんじゃないかってことで、こちらに割り振られたんです」
凱の返答に晏寿は頭が痛くなってきた。杜補佐が気づかなければ、今後もおかしなお金のやりくりで軍が動くことになっていたことになる。
「ちょっと軍の人達と話してくる!」
「え!今からですか!?」
凱の驚きも聞かず、晏寿は走って武官達が演習を行っている演習場へと向かっていった。
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