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第6章 景雲の姉襲来編
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その後秀英と景雲は晏寿の家で夕食を食べ、帰宅することとなった。
二人の帰宅後、杏歌は晏寿に尋ねた。
「今日は逢引だったのでしょう?せっかく二人で出かけたのに、結局景雲まで一緒になって私への贈り物を選ばなくてもよかったのではないのです?」
晏寿はしばしきょとんとした後、はにかみながら言った。
「確かに秀英には悪かったかなと思ったんですけど、良いことが無かった訳ではないんです」
「というと?」
「小物屋に入ったとき秀英が居心地悪そうにそわそわしてて、あーこういう店に入ったことないんだろうなぁ、不慣れなんだろうなって思ったんです。それでも店の外で待ってるとは言わずに私に付き合ってくれて、それがちょっと嬉しかったんです」
「そうでしたの。それは良い発見でしたね」
「ええ」
初めての二人の外出は秀英の計画通りにはいかなかったものの、晏寿にとっては満ち足りた一日となった。
「秀英よかったのか?あんなに計画を練っていたのに、結局は俺達姉弟に時間を費やすことになって」
帰り道、景雲は秀英に気になっていたことを聞いた。
「結果的に晏寿が喜んでいたから俺は構わない」
「お前がそう言うなら良いが…」
「それに次回また晏寿と出かけられると考えることにした」
前向きな秀英に景雲は苦笑し、
「そりゃそうだ」
と漏らすのだった。
数日後、杏歌は荷物をまとめて容家へと帰っていった。
まだ全ての傷が癒えているわけではないが、家族と一緒にいたほうが早く癒えるだろうということで帰宅が決まったのだった。
また、玲峯の手腕により杏歌の元旦那の暴挙が明るみになり、家は劣り潰しとなった。今はその事による残務整理で李大臣の管轄は大忙しである。
そんなところに新人の欧陽 凱が慌てて部屋に入ってきた。
「お忙しいところすみません!ある部隊が演習中に誤って壁を壊してしまったとの知らせです!」
「この忙しい時に…どこの部隊だ?」
近くにいた景雲が悪態をつきながら尋ねる。
「はい、佐嶽隊長の部隊です!」
「佐嶽…?」
名前に反応したのは杜補佐である。
そして持っていた筆を置き、凱のところへやってくる。
「僕が話をつけてきます。皆さんはそのまま続けててください」
「お知りあいですか?」
「ええ。ちょっとした仲です」
笑みを浮かべていたが、景雲には内に黒いものを見た気がしたが何も言えなかった。
そして数十分後、にこやかな笑顔で杜補佐が戻ってきた。
「佐嶽隊長が壊れた壁の修理代を全て出してくれるそうです」
「よかった!ありがとうございます」
杜補佐の報告に凱はほっとした様子だった。景雲は、どうやって話をつけてきたのが気になったが先程の杜補佐の笑みを思い出し、怯んで聞くことはできなかったのだった。
二人の帰宅後、杏歌は晏寿に尋ねた。
「今日は逢引だったのでしょう?せっかく二人で出かけたのに、結局景雲まで一緒になって私への贈り物を選ばなくてもよかったのではないのです?」
晏寿はしばしきょとんとした後、はにかみながら言った。
「確かに秀英には悪かったかなと思ったんですけど、良いことが無かった訳ではないんです」
「というと?」
「小物屋に入ったとき秀英が居心地悪そうにそわそわしてて、あーこういう店に入ったことないんだろうなぁ、不慣れなんだろうなって思ったんです。それでも店の外で待ってるとは言わずに私に付き合ってくれて、それがちょっと嬉しかったんです」
「そうでしたの。それは良い発見でしたね」
「ええ」
初めての二人の外出は秀英の計画通りにはいかなかったものの、晏寿にとっては満ち足りた一日となった。
「秀英よかったのか?あんなに計画を練っていたのに、結局は俺達姉弟に時間を費やすことになって」
帰り道、景雲は秀英に気になっていたことを聞いた。
「結果的に晏寿が喜んでいたから俺は構わない」
「お前がそう言うなら良いが…」
「それに次回また晏寿と出かけられると考えることにした」
前向きな秀英に景雲は苦笑し、
「そりゃそうだ」
と漏らすのだった。
数日後、杏歌は荷物をまとめて容家へと帰っていった。
まだ全ての傷が癒えているわけではないが、家族と一緒にいたほうが早く癒えるだろうということで帰宅が決まったのだった。
また、玲峯の手腕により杏歌の元旦那の暴挙が明るみになり、家は劣り潰しとなった。今はその事による残務整理で李大臣の管轄は大忙しである。
そんなところに新人の欧陽 凱が慌てて部屋に入ってきた。
「お忙しいところすみません!ある部隊が演習中に誤って壁を壊してしまったとの知らせです!」
「この忙しい時に…どこの部隊だ?」
近くにいた景雲が悪態をつきながら尋ねる。
「はい、佐嶽隊長の部隊です!」
「佐嶽…?」
名前に反応したのは杜補佐である。
そして持っていた筆を置き、凱のところへやってくる。
「僕が話をつけてきます。皆さんはそのまま続けててください」
「お知りあいですか?」
「ええ。ちょっとした仲です」
笑みを浮かべていたが、景雲には内に黒いものを見た気がしたが何も言えなかった。
そして数十分後、にこやかな笑顔で杜補佐が戻ってきた。
「佐嶽隊長が壊れた壁の修理代を全て出してくれるそうです」
「よかった!ありがとうございます」
杜補佐の報告に凱はほっとした様子だった。景雲は、どうやって話をつけてきたのが気になったが先程の杜補佐の笑みを思い出し、怯んで聞くことはできなかったのだった。
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