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第6章 景雲の姉襲来編
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晏寿はというと「逢引」という言葉に引っかかっており、そういえば秀英とは仕事でしか会っていないのではと考えていた。
気持ちを考えると言っておきながら、互いに仕事しかしていないことに気づき、だんだんと申し訳なさが広がってくる。
今度の休みが合うかどうか尋ねてみようと決めた晏寿であった。
翌日の休憩時間に晏寿は、秀英を呼び止め休みの日を聞いた。
「今度の休みは三日後だ」
「そうなんだ。私も三日後休みなの。それでね、その、」
いざ一緒にどこかに行かないかと誘うとなると、緊張して言葉が出ない。
秀英はというと、歯切れの悪い晏寿に首を傾げつつも、もしかしたらという期待も抱いていた。
ようやく決心がつき、提案する。
「もし、よかったらその休みの日、一緒にどこかに、行きませんか…?」
最初は勢いがあったものの、だんだんと尻すぼみになってしまった。顔が赤いという自信もある。
秀英は目を見開き、晏寿を見ていたが、精一杯の晏寿の言葉が嬉しく、薄く微笑んだ。
「こちらこそよろしく頼む」
その言葉を聞いて晏寿は胸がぐっと熱くなるのを感じた。
よくわからない感情を誤魔化すために、顔を手でパタパタ扇ぎ、「なんか暑いね、それじゃ!」
と残して逃げたのだった。
残された秀英はにやける顔を手で覆い隠す。
頬も少し紅くなっていた。
「みーてーたーぞー」
「うわっ」
背後からがばっと肩を組んできたのは言わずもがな景雲である。
にやにやとした表情のまま、秀英に詰め寄る。
「晏寿からのお誘いとは、ようやく一歩前に進んでよかったな?」
そんな景雲を鬱陶しそうにあしらう。それでもめげない景雲は、秀英に問いかけた。
「せっかく二人で出かけるんだ。あんなことやこんなことをして、愛を語らい、楽しむがいいさ」
「二人で出かける…」
景雲の言った言葉に、はたと考え込む秀英。その様子に一人で盛り上がっていた景雲も、おや、と様子を伺う。
「どうした?」
「二人で出かけるとは…どこに行けばいいんだ?」
景雲の開いた口がふさがらなかった。
「いいか秀英、逢引とは相手を喜ばせてなんぼだ。まずは相手がどこに行きたいかを考えろ」
「晏寿が行きたいところ…八百屋か?」
「晏寿は行きたがりそうだが違う」
「では魚屋か」
「そういうことじゃない」
真顔で答える秀英に、景雲はがっくりと肩を落とした。
休憩時間に二人は、晏寿と秀英の逢引の計画を考えていたが、如何せん堅物の秀英である。
勉学はできても、恋愛については初心者であった。
手ほどきをする景雲も、早々に匙を投げたくなった。
「例えば買い物をしたり、甘味を食べに行ったりして二人でいる時間を大事にするんだ。それ以上はお前達には望まない」
「買い物ならやはり市場か」
「飯の献立を買いに行くんじゃなくて、晏寿が喜びそうな装飾品を買いに行くんだよ」
「装飾品か。しかし晏寿はそういった類のものは普段身につけていないが」
ビシッと秀英を指さして、断言する。
「贈り物には慣れていない証拠じゃないか。だからもらったら嬉しいのさ」
本当は秘密裏に用意して渡すということも景雲の頭の中にはあったが、秀英には選びきれないと判断したため黙っておく。
景雲に言われたことを整理すべく、復唱しながら確認を行っていく。
そして計画をたてている中で、秀英は官吏試験のほうが簡単だったと意識をとばすのだった。
気持ちを考えると言っておきながら、互いに仕事しかしていないことに気づき、だんだんと申し訳なさが広がってくる。
今度の休みが合うかどうか尋ねてみようと決めた晏寿であった。
翌日の休憩時間に晏寿は、秀英を呼び止め休みの日を聞いた。
「今度の休みは三日後だ」
「そうなんだ。私も三日後休みなの。それでね、その、」
いざ一緒にどこかに行かないかと誘うとなると、緊張して言葉が出ない。
秀英はというと、歯切れの悪い晏寿に首を傾げつつも、もしかしたらという期待も抱いていた。
ようやく決心がつき、提案する。
「もし、よかったらその休みの日、一緒にどこかに、行きませんか…?」
最初は勢いがあったものの、だんだんと尻すぼみになってしまった。顔が赤いという自信もある。
秀英は目を見開き、晏寿を見ていたが、精一杯の晏寿の言葉が嬉しく、薄く微笑んだ。
「こちらこそよろしく頼む」
その言葉を聞いて晏寿は胸がぐっと熱くなるのを感じた。
よくわからない感情を誤魔化すために、顔を手でパタパタ扇ぎ、「なんか暑いね、それじゃ!」
と残して逃げたのだった。
残された秀英はにやける顔を手で覆い隠す。
頬も少し紅くなっていた。
「みーてーたーぞー」
「うわっ」
背後からがばっと肩を組んできたのは言わずもがな景雲である。
にやにやとした表情のまま、秀英に詰め寄る。
「晏寿からのお誘いとは、ようやく一歩前に進んでよかったな?」
そんな景雲を鬱陶しそうにあしらう。それでもめげない景雲は、秀英に問いかけた。
「せっかく二人で出かけるんだ。あんなことやこんなことをして、愛を語らい、楽しむがいいさ」
「二人で出かける…」
景雲の言った言葉に、はたと考え込む秀英。その様子に一人で盛り上がっていた景雲も、おや、と様子を伺う。
「どうした?」
「二人で出かけるとは…どこに行けばいいんだ?」
景雲の開いた口がふさがらなかった。
「いいか秀英、逢引とは相手を喜ばせてなんぼだ。まずは相手がどこに行きたいかを考えろ」
「晏寿が行きたいところ…八百屋か?」
「晏寿は行きたがりそうだが違う」
「では魚屋か」
「そういうことじゃない」
真顔で答える秀英に、景雲はがっくりと肩を落とした。
休憩時間に二人は、晏寿と秀英の逢引の計画を考えていたが、如何せん堅物の秀英である。
勉学はできても、恋愛については初心者であった。
手ほどきをする景雲も、早々に匙を投げたくなった。
「例えば買い物をしたり、甘味を食べに行ったりして二人でいる時間を大事にするんだ。それ以上はお前達には望まない」
「買い物ならやはり市場か」
「飯の献立を買いに行くんじゃなくて、晏寿が喜びそうな装飾品を買いに行くんだよ」
「装飾品か。しかし晏寿はそういった類のものは普段身につけていないが」
ビシッと秀英を指さして、断言する。
「贈り物には慣れていない証拠じゃないか。だからもらったら嬉しいのさ」
本当は秘密裏に用意して渡すということも景雲の頭の中にはあったが、秀英には選びきれないと判断したため黙っておく。
景雲に言われたことを整理すべく、復唱しながら確認を行っていく。
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