柔よく剛を制す

薬袋 藍(ミナイ ラン)

文字の大きさ
上 下
71 / 133
第5章 自宅謹慎編

6

しおりを挟む
ꕤ୭*故イレーヌ・エンジェル王女殿下降臨前のミランダ(ミランダ視点)

 私は慈善事業に携わるイレーヌ王女殿下に貧困街で拾われて、下女にしていただきとてもかわいがられたと思う。感謝はしているけれど、神様の不公平さをこれほど実感したことはなかった。

――産まれながらにして王女様。美しくて頭が良くて全てをお持ちなイレーヌ様に比べてなぜ同じ人間なのに・・・・・・私はこうなの? おかしいよ・・・・・・

 その後退職し鍛冶屋の男と結婚したものの、うまくいかずに離婚。子供を抱えてどうしたら良いか悩みオスカー公爵家にすがりに行くと、すでにイレーヌ王女殿下は他界していた。

「オスカー公爵の後妻のふりをして、アイビーを虐めてよ。旦那様も国王陛下も会いには来ない。今のうちにイレーヌ王女殿下へのうっぷんを晴らしていいからね」
 なぜか侍女長になっている昔の同僚アンナに耳打ちされた。

 だから、後妻のふりをしてアイビーを追い詰めた。このアイビーがこの世からいなくなれば、なにもかもうまくいくんだって。

 演技をするうちに、私こそはオスカー公爵夫人だと思い込むようになった。娘にも実の父親はオスカー公爵だと言い含めると簡単に信じ込み楽しい生活が始まった。





「国王陛下と公爵様からの子供向けのプレゼントはその子のものにしていいわよ。そのかわりお礼の手紙は書かせてね?」
 アンナは私に、笑いながら言った。

「こんなをことしてばれないの?」

「大丈夫よ! アイビーが死んでくれればまるく収まるんだから」





ꕤ୭*故イレーヌ・エンジェル王女殿下降臨前のアンナの気持ち(アンナ視点)



 昔下女をしていた女が、アイビーと同じような年頃の娘を連れてやってきたのがアイビー7歳の頃。良い案を思いついた。

――この女のせいに全てしてアイビーを追い詰めれば・・・・・・うふふ、私の望みは全て叶う。アイビーが死んだところで大騒ぎして公爵を呼び寄せ、ミランダは隣国に逃亡させるーーこれはあのお偉い方が協力するとおっしゃっていた・・・・・私だけがアイビーーを庇ったことにすればいい。

「きっと感激した公爵様は健気なアンナに感謝して・・・・・・アンナを愛してくれるさ」
 お偉い方は私にそうなることを予言してくれた。


 イレーヌ様はお産で死んだと誰もが言うが、あの隣国のお偉い方に渡された薬をこっそり奥様の水差しにいれたのは私。お産のどさくさに忍び込み、すぐに侍女長としてそこにいられたのは、お偉い方が公爵のふりをして今までの侍女達を速やかに入れ替えたから。

 今や使用人は全て護衛騎士にいたるまで、隣国の者であの方の配下の者だ。

「私のプロポーズを断って腰抜け公爵の妻になった罰なんだ!」
 お偉い方は一度だけそうつぶやいて意気揚々と去っていった。

――なんて、気持ちの悪い男なんだろう。私の純粋な愛を見習ったらいいのに。でも、このお偉い方のお陰で楽しい生活ができて幸せだわ!

ーーそろそろ、アイビーの心がもたない。あんな小さな子が自分で死ぬなんてワクワクするわ。あの世で高潔なイレーヌ王女殿下と仲良く悔しがればいい! あっはは!
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~

ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。 そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。 そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。

皇帝は虐げられた身代わり妃の瞳に溺れる

えくれあ
恋愛
丞相の娘として生まれながら、蔡 重華は生まれ持った髪の色によりそれを認められず使用人のような扱いを受けて育った。 一方、母違いの妹である蔡 鈴麗は父親の愛情を一身に受け、何不自由なく育った。そんな鈴麗は、破格の待遇での皇帝への輿入れが決まる。 しかし、わがまま放題で育った鈴麗は輿入れ当日、後先を考えることなく逃げ出してしまった。困った父は、こんな時だけ重華を娘扱いし、鈴麗が見つかるまで身代わりを務めるように命じる。 皇帝である李 晧月は、後宮の妃嬪たちに全く興味を示さないことで有名だ。きっと重華にも興味は示さず、身代わりだと気づかれることなくやり過ごせると思っていたのだが……

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

処理中です...