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第5章 自宅謹慎編
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「自分の息子をなんだと思ってるんだよ」
「ふらふらした息子だから、官吏試験に合格し、なお且つ、しっかり者と噂になっている娘を嫁のもらおうと思ったのだ」
きっぱりと言い切る季蝶に景雲は二の句をあげられなかった。
そのやりとりを見ていて、瑚蘭はふふふ、と笑った。
「仲がよろしいのですねぇ。それに晏寿をそのように評価してくださっているなんて。私も晏寿が知り合いというのなら、安心して嫁がせることができますわ」
「母様、何をいきなり…」
「だってそうでしょう?名前で呼び合うほど、仲が良いのなら心配いらないわ」
にこにこする母親に絶句する晏寿。
本当に真剣に考えているのか疑問に思いだした。
景雲はというと、性格が全く似ていない晏寿と瑚蘭に最初驚いていた。
しかし、のほほんとした母親であるから晏寿がしっかり者になったのかと納得していた。
「当人達が知り合いなのなら話は早い。この縁談は進めるということでよろしいだろうか」
「ええ」
「いや、ちょっと待ってくれよ!」
季蝶の発言に瑚蘭があっさりと同意してしまい、景雲は思わず立ちあがって否定する。
晏寿は驚きすぎて、声も出なかった。
母親達は何故止められたのかわからないようだった。
「何故止める」
「少し晏寿と話がしたい。だから二人になってもいいだろうか」
「今更お互いを知ることもないだろう」
「いいから。話したいことがあるんだ」
珍しく真剣な景雲に季蝶が折れ、景雲と晏寿は二人きりになった。
ここまで強引に押し切る景雲の意図が見えず、晏寿は困惑していた。
「あー…まずは悪かったな。うちの母親が強引で」
「ううん、うちの親もなんだかんだ乗り気だったから…」
「で、お前は俺と夫婦になるつもりがあるのか?」
「景雲に限らず、今はどこかに嫁ごうなんて考えてないわ」
「そうか」
ようやく口を開いたと思えば、こんな会話だった。
晏寿はこれが話しの要点ではないと感じ、景雲に尋ねた。
「それが話したいことじゃないでしょ。本当の話は?」
「…お前は頭の回転が速いから、話しやすくもなれば話しにくくもなるな」
苦笑いをしながら、景雲は続ける。
「俺はそりゃあ好いた相手を娶りたい。別に急いで嫁をとるつもりもないんだ。
だが、今回お前との話が持ち上がって考えたんだが、俺はお前とならうまくやっていけると思った」
景雲の心の内を聞いて驚く晏寿。
それは想定内だったようで、話を止めることはなかった。
「けどな、俺には晏寿を娶れない理由があるんだよ」
「理由?」
「ああ。ある男を裏切ることになるからな。俺はあいつとこれからもずっと今の関係を続けていきたいと思っている」
「景雲にもそういうふうに思える相手がいるのね」
「意外だろ?」
「けど、景雲の話によれば私を嫁にしたいって考えている人がいるってことよね?」
「…お前との会話は本当に話が早く進むな。だけど肝心なところはわかってないって所が晏寿らしいけど」
「褒めてるの?貶してるの?」
「どっちも。だって俺の言ってる男は誰だか全く見当ついてないだろう?」
図星なため、黙ったまま肯定を示す。
それを見て景雲はくすくすと笑う。
「ふらふらした息子だから、官吏試験に合格し、なお且つ、しっかり者と噂になっている娘を嫁のもらおうと思ったのだ」
きっぱりと言い切る季蝶に景雲は二の句をあげられなかった。
そのやりとりを見ていて、瑚蘭はふふふ、と笑った。
「仲がよろしいのですねぇ。それに晏寿をそのように評価してくださっているなんて。私も晏寿が知り合いというのなら、安心して嫁がせることができますわ」
「母様、何をいきなり…」
「だってそうでしょう?名前で呼び合うほど、仲が良いのなら心配いらないわ」
にこにこする母親に絶句する晏寿。
本当に真剣に考えているのか疑問に思いだした。
景雲はというと、性格が全く似ていない晏寿と瑚蘭に最初驚いていた。
しかし、のほほんとした母親であるから晏寿がしっかり者になったのかと納得していた。
「当人達が知り合いなのなら話は早い。この縁談は進めるということでよろしいだろうか」
「ええ」
「いや、ちょっと待ってくれよ!」
季蝶の発言に瑚蘭があっさりと同意してしまい、景雲は思わず立ちあがって否定する。
晏寿は驚きすぎて、声も出なかった。
母親達は何故止められたのかわからないようだった。
「何故止める」
「少し晏寿と話がしたい。だから二人になってもいいだろうか」
「今更お互いを知ることもないだろう」
「いいから。話したいことがあるんだ」
珍しく真剣な景雲に季蝶が折れ、景雲と晏寿は二人きりになった。
ここまで強引に押し切る景雲の意図が見えず、晏寿は困惑していた。
「あー…まずは悪かったな。うちの母親が強引で」
「ううん、うちの親もなんだかんだ乗り気だったから…」
「で、お前は俺と夫婦になるつもりがあるのか?」
「景雲に限らず、今はどこかに嫁ごうなんて考えてないわ」
「そうか」
ようやく口を開いたと思えば、こんな会話だった。
晏寿はこれが話しの要点ではないと感じ、景雲に尋ねた。
「それが話したいことじゃないでしょ。本当の話は?」
「…お前は頭の回転が速いから、話しやすくもなれば話しにくくもなるな」
苦笑いをしながら、景雲は続ける。
「俺はそりゃあ好いた相手を娶りたい。別に急いで嫁をとるつもりもないんだ。
だが、今回お前との話が持ち上がって考えたんだが、俺はお前とならうまくやっていけると思った」
景雲の心の内を聞いて驚く晏寿。
それは想定内だったようで、話を止めることはなかった。
「けどな、俺には晏寿を娶れない理由があるんだよ」
「理由?」
「ああ。ある男を裏切ることになるからな。俺はあいつとこれからもずっと今の関係を続けていきたいと思っている」
「景雲にもそういうふうに思える相手がいるのね」
「意外だろ?」
「けど、景雲の話によれば私を嫁にしたいって考えている人がいるってことよね?」
「…お前との会話は本当に話が早く進むな。だけど肝心なところはわかってないって所が晏寿らしいけど」
「褒めてるの?貶してるの?」
「どっちも。だって俺の言ってる男は誰だか全く見当ついてないだろう?」
図星なため、黙ったまま肯定を示す。
それを見て景雲はくすくすと笑う。
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