金の王と白い月、黒い月。

結月彩夜

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待ち望んで生まれた子はなかなかった。
 生きてはいるが、ぼんやりと宙を眺めて いた。時折、ゆっくりと瞬いていた。白銀の髪に紺の瞳の可愛らしい女の子だった。 青い目の我が子は、どこか寂しげで、悲しげだった。
 妻があやすと、笑いたいのに笑い方を忘れたとでも言うように顔をへにゃりと 歪ませた。意思をどこかに置いてきたような その姿は、さながら人形のようだった。 父


私の初めての妹は、どこか人間らしくなかった。 綺麗な子だと思うけれど、どこかいつも寂しそうで、いつも何が足りないと無言で訴えているようだった。
 私の妹は幼子にはとうてい見えなかった。…… 私自身も大概だと思うが。 長男


僕の初めての妹はとても可愛かった。
だけど、どこか不意にいなくなってしまいそうな怖さを感じた。
僕は妹が何かを探しているのか、何を求めているのかわからない。父上や母上、兄上ならわかるのだろうか。
僕もいつかわかれたらいいとそう願う。 次男


私の3人目の不思議な子だった。まるで地に足をつけていないようで。
旦那様の白銀の髪、私の青の瞳をもっともっと深くして、深淵の闇をひとしずく垂らしたみたいな深く暗い、紺の瞳。
親の私から見ても美しいと思わせる、整った姿。
だからこそふとした時に人形のように感じる。この子のことを旦那様は『意思がないような子』といったけれど、私は意思がないのではなく、封じてしまっているのだと思う。 
いつか、この子が正しく感情と意思を取り戻し 心から笑う日がくるのを私は待ち望んでいる。 母


私は考えるのが怖かった。
私はたくさんの人を自らの頭で戦略で殺している。私が考えて私が指示をだして。……私が殺した。実行するのは多くの兵や騎士、それに軍人だったけれど、本当は策を考えた私自身が一番殺しているのだ。
一番血まみれで真っ赤に染まっていて。……ポタポタと赤い雫が落ちるくらいに。そうして、私は死んだ。
そうして、また生まれた。
この国は多分あの国とは別の国だと思う。 
私は、もう二度と戦争なんて断りだ。
もう二度と戦略なんか考えたくない。
誰かを殺すための手段を考えたくない。
この国も魔術が日常のようだから、練習だけをしておこうと思う。
何かがあった時のために。
私はもう自衛手段つるぎを手放せないから。
だからせめて、何かあったときに相手を殺さないために。
相手を殺さないためには、自分が相手よりも強くある必要があるから。
だから、ちっちゃいちっちゃいもみじの手魔力を集めて地道に魔力操作の訓練をしていく。

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