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まるぽろ

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第五章:諸国漫遊Ⅲ

平穏な旅路と近寄る脅威

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     ◆

 セルタを出た朔たち一行は、快調にヅィーカへの道を進んでいた。セルタ・ヅィーカ間は馬車の往来が活発であり、すでに何台もの馬車を追い抜き、すれ違っている。なお、御者は再びミラへと代わり、御者台には朔らが座っていた。さらに──

「気持ちいーにゃー!」
「楽しいです~!」

 ──御者台の屋根には、見張りという名目でバステトとシンシアが乗っていた。整地された道のためいつも以上に速度が出ており、彼女たちは遊園地のアトラクションに初めて乗った子供のようにはしゃいでいる。
 
 朔たちもまた旅路をのんびり満喫しており、今はヅィーカ後の旅程についてナタリアが説明していた。

「パストゥールからドワーフ王国へのルートは、主に3つあります。一つは、獣人国を経由せずに山を越えるルート。もう一つは獣人国への玄関口である港湾都市ラツェッタから船で進むルート。最後がラツェッタから山脈を避けて南西に向かい陸路を進むルートです」

「山嫌い」

「はいはい! 海が良い!」

 ミラの抑揚のない声に続いて、ヒトミが元気良く提案した。

「俺も久しぶりに海が見たいかな。でも、イアンとトウカは乗せてもらえるのかな?」

「大丈夫ですよ。費用はかかりますが、馬車ごと乗り込める大型船も航行していますから。陸路は密林を通るので大型の馬車が通行しやすい道でもありませんし、海路には賛成です」

「そっか、じゃあ海路に決定──」

 朔の疑問にナタリアが答えつつ同意し、朔が決定を告げようとしたとき、彼の頭の中に声が響く。

《──ルースをリーダーとする群れにオークレディ、オークファイター、オークレンジャーが加わりました。名前を付けてください》

(また急に来たな……。それで、オークレディ? オークって雄だけじゃなかったっけ? 群れのリーダーってルースは何してるの? なんでリトに名前を付けさせないの?)
《あと30秒以内に名前を付けないと、名無しでの登録になります》

「……えーと、レディがレヴィアンナ、ファイターがロナウド、レンジャーがロビンで」

 朔はそれぞれに思いついた名を付けた。ルースの仲間ということで頭文字をレ、ロとしたものである。突然つぶやきいた朔を、周囲の皆はまたかといった顔で見つめる。

「ハニー、今度はどったの?」

「なんか、ルースがオークレディってのを仲間にしたみたい?」

 ヒトミの疑問に、朔もまた語尾を上げながら答えた。レディと聞いたナタリアは耳をぴくりとさせ、ミラも瞬きを数回して反応する。

「オークレディはオークの変異種です。プリンセスを経てクイーンに至りますと強い個体を多産するため、討伐が推奨されています」

「スタットの近く?」

「ダンジョン都市のギルドでもらったスミスさんからの手紙だと、ルースは魔の森に入っていったみたいだよ。ルースが元気ならそれで良いし、討伐が推奨されていてもルースの仲間なら大丈夫でしょ」

 彼女たちの心配をよそに朔はルースが元気でいることに安堵して笑顔になっていた。手紙といっても数週間前の話であり、頭に響いた声で現在の状況が分かったからである。

「お姫様を仲間にするなんて、ルースは勇者のテンプレみたいじゃん♪」

「リトやルースが治めるオークの国ができたりしたらおとぎ話になりそうだね」

 能天気な朔とヒトミの言葉にナタリアとミラは苦笑いを浮かべるが、お互いの視線を交すと肩の力を抜いて微笑みを浮かべた。

 澄み渡る空の下、和やかな雰囲気が伝わったイアンとトウカもまた上機嫌そうに嘶き速度を上げた。


 しかし二日後、あと100㎞も行けばヅィーカにたどり着くというところで、ナタリアが慌てた様子で馬車の内部に繋がっている鐘を鳴らし、指示を飛ばす。

「ミラ! 右前方、森の中に魔物の群れ! 停止後転回を!」

「ん」

 ミラがすぐさま手綱を引き、イアンとトウカがスピードを緩める。馬車は自重により徐々に速度を落とし始めた。朔は眠っていたシンをマントのフードから抱き上げる。

「クックッ?」(パパ、おはよ?)

「おはよう、シン。起きてすぐに悪いんだけど、敵が近くにいるみたいだから偵察してきてくれる? 仕掛けちゃダメだよ」

「……クッ!」(……あいっ!)

 シンは体は動かさずに顔だけをぐるりと回して周囲を確認すると、右前方の一点を見つめて飛び立っていった。
 転回を終えた馬車が止まり、朔たちは御者席を飛び出して後方に向かう。続けて護衛らやラッキーフラワーが馬車の左右に整列し、やや遅れてハロルドやダンたちがよたよたと出てきた。

「右前方の森の中に魔物の群れがいます。ラッキーフラワーの皆は、馬車からうちの旗を出して後ろから来ている商隊を止まらせて」

「はいっ! 皆いくよ!」

 カインたちはきびきと動き、後方へと走った。彼らは1㎞ほど離れてから立ち止まり、アサクラ家の家紋──四つの紫の月と一つの黒い月が五角形状に並らんだもの──が刺繍された旗を掲げる。

「イルさん、ルイさんはこちらに向かっている馬車を避難させてください。アルさんたちは斥候をお願いします。可能であれば森の奥に誘導を、ですが無理はしないでください」

「「「「「「はっ」」」」」」

 イルとルイもまた同じ旗を持って街道上を、アル、ライ、ウル、ロイの四人は森に向かって走り、ロジャーとエマは馬車のそばに残った。

「ダンさんたちはロジャーさんとエマさんとともに、シンシアさんはそのまま屋根の上にいてください」

 ダンは頷きロジャーとエマのところまで進み、彼らに話しかけながら首や膝を回して準備を整える。

「はいい……」

 一方のシンシアは、急停止で屋根から落ちそうになったことやいつもとは違う雰囲気で腰に力が入らなくなっていた。そんな彼女の頭を、馬車の屋根に上がってきたミラがぽんぽんと優しくたたく。

「シンシア、大丈夫。私が守る」 

「ハロルドさんは御者席で待機していてください」

「畏まりました」

 朔はハロルドに指示を出すと、ハロルドは御者席に向かい、緊張しているイアンとトウカを宥め始めた。一通りの指示を出し終わった朔はリトの頭を撫でつつ、索敵に集中しているナタリアに尋ねる。

「リア、どう?」

「例の件の魔物だと思われます……かなり強いですが弱っている魔物が一匹と、それを追っている群れですね。アル様方だけでの対応は難しいかもしれません」

 ナタリアは朔に視線すら向けることなく答え、厳しい眼差しで森を見つめていた。

「逃げるのは……これだけ往来があると厳しいか。こちらに引き付けるしかなさそうだけど、どうする?」

「馬車を囲むように防壁を造って迎え撃ちましょう。防壁上で戦えるようにダンジョンと同じ程度の幅をお願いします」

「了解。土操作!」

 朔が地面に手をついて土魔法を発動すると、ズズズッと地響きを立てながら幅・高さが数メートルはあるドーナツ状の硬い土壁がせり上がってくる。

「お見事です。ダンジョンで土魔法の練度がかなり上がりましたね」

「先生が良いからね。皆、私に続いて上がってください」

 朔は壁の内側に階段を造りだしながらそれを登り、先に跳び上がっていたナタリアの隣に立って看破の魔眼を発動する。森の上で飛ぶシンは、不規則に旋回しながらも徐々に近づいてきていた。
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