神様のヒントでキャラメイク大成功!魔法も生産も頑張ります!

まるぽろ

文字の大きさ
上 下
70 / 86
第四章:諸国漫遊Ⅱ

翼亜竜討伐と地上での動き

しおりを挟む
「はああああああああっ!!」

 ヒトミはブレス後の硬直を狙っており、岩陰から飛び出した。彼女は裂帛の気合を上げながら、上段に構えた刀を振るう。
 斬撃は朔が鱗を剥した箇所を正確に捉え、内部の肉を切り裂いていく。しかし──

(くぬっ! やっぱりまだ厳しい!)

 ──骨に当たった瞬間の感覚で、ヒトミは翼亜竜の太い首を断ち切れないことを悟る。彼女は下手に食い込んで抜けなくなることを防ぐために、腕を畳んで引き斬るように太刀筋を変えた。

「GRYYYYYYYYY!!!」

 硬直が解けた翼亜竜は、猛烈な痛みとダメージによりパニックを起こした。翼亜竜は暴れまわりながら、ヒトミに向けて尻尾を横薙ぎに振るう。

(やばっ──っと、流石ハニー♪)

 突然、ヒトミの足元が地割れのように裂け、深さ1mほどの穴が現れた。ヒトミは、地面に手をついてこちらを見ている朔にウインクをし、穴に飛び込みしゃがみこむ。

「(次で決める!)限界突破!」

 尻尾が頭の上を通り過ぎ、ヒトミの髪が激しく乱れる。ヒトミは顔を上げて翼亜竜を見つめ、限界突破のスキルを発動した。全身の魔力を消費することにより、ヒトミのステータスは数倍に跳ね上がる。

「はあああああああああ!!!」

 ヒトミは穴から飛び出し、翼亜竜の深い傷がある側を目掛けて駆け出した。翼亜竜は反射的に傷の部分を内側に首を丸めて守ろうとする。しかし、それはヒトミの予想通りの行動でしかなかった。

「甘いよ翼亜竜ちゃん! 剛断!」

 初めから傷の反対側を狙っていたヒトミは、寸分違わず狙った部分に刀を振りぬいた。駆け抜けたヒトミは、振り返ることなく刀を2度振ってから鞘に納める。
 ヒトミの背後では、強化された鱗ごと両断された翼亜竜の太い首がずるりと落ちていた。



「はあ、はあ……。あ、やば──」
「──ヒトミ! 診断!」

 全ての魔力を使い果たしたヒトミは意識が遠のき、急いで駆けつけた朔がヒトミの体を支えて診断を発動する。

状態:失神
脈:正常
呼吸:正常
外傷:無
治療法:今は寝かせてやれ。ヒトミが手に入れるはずじゃった経験値はジョブとスキルに振り分けとるからの。

(アルス様も診断を伝言板代わりに使うのかよ! 経験値については……ああ、ヒトミが強請ねだったんだろな。ってか、スキルに経験値を振り分けるってズル過ぎるだろ!)

 朔が叫ぶと、アルスの声が頭の中に響く。

《ヒトミだけではなく、お前達全員に振り分けてやったのじゃがの、サク・アサクラよ。お前が苦心しておった、あの才能のない小僧どもも身体操作を覚えられるようにしてやったのじゃが、いらんのだな?》
(アルス様っ、ありがとうございます!!)
《まあ良い。今回だけじゃぞ。……ミコトが煩いからな》

 朔が頭の中で最敬礼してアルスに感謝を告げると、アルスは愚痴っぽく呟いた。すると、アルスとは異なるどこがで聞いたことがあるような声が響く。

《当たり前のように贔屓するお主が悪かろう》
《ヒトミを贔屓して何が悪い。だいたいミコトは儂の世界のことに口を出しすぎじゃ》
《ほう? 元はと言えば、お主が助けを求めて来たのじゃろうが》
《最初はそうであっても、ミコトが──》

 アルスとミコトの口喧嘩が始まり、朔が困惑していたとき、ナタリアが朔の肩を叩いて声をかけてきた。

「──サクさん、大丈夫ですか?」
「リア、ありがとう。助かったよ。じゃあ、帰ろっか」
「はい」
「ん」
「クッ♪」(あい♪)
「フゴッ♪」(はいです♪)

 朔はナタリアが差し出していた大きな魔石やドロップ品である飛膜等を受け取ると、ヒトミを背負って歩き出し、皆も後に続いて歩き始める。

(さっき、重要なことを聞きそびれた気が……まあいいか。みんな無事だし)

     ◆

 その頃、転移魔法陣発見の情報がもたらされたダンジョン管理局は騒然としており、職員や冒険者に加え兵士までもが慌ただしく出入りしていた。

 管理局の会議室、一番奥の椅子には王太子であるレオナルドが座っており、老人とフローディアがレオナルドの左右から彼に向けて声を上げている。

「殿下、お考え直しください! 殿下自らが踏み込む必要はありません!」
「2ヶ月を超える遠征帰りで、皆疲労溜まっております。せめて、しばらく体を休められてからに──」

 耳元で騒ぐ二人に対して、レオナルドは威圧を込めた低い声で断言する。

「──黙れ。第二クランで転移先を調査し、帰還。その後、メインクランで魔法陣を使用して本格的な攻略だ。これは決定事項であり、覆ることはない」
「しかし、殿下に何かあれば……」
「それでは私もお連れください!」

 老人はぶつぶつ言いながらも口をつぐんだが、フローディアが食い下がった。そこに、胸元や背中の露出が激しい服を着た妖艶な女性が、ねっとりとした口調で口を挟む。

「あら? 貴方が何の役に立つのかしら?」
「コーリン! 私を侮辱するのですか!?」
「貴族パーティの貴方は大人しくしていてくださいな。これは私達の仕事です。たかだか水浴びの道具に資金を出させた貴方は、大好きなお風呂に入ってお待ちになって?」

 フローディアはコーリンに詰め寄るが、コーリンは扇で口元を隠し、ころころと笑う。

「コーリン!」
「フローディア、黙れ。メインクランには休息を命じた。屋敷に戻れ」
「っ! 殿下……わかりましたわ」

 フローディアが武器に手をかけたところで、レオナルドが再度命じた。これにはフローディアも従わざるをえず、キッとコーリンを睨みつけてから会議室から出ていく。

「まったく、パトロンはパトロンの役割だけしていればいいものを、子飼いの騎士などはともかく息子や娘なんて送りつけて来て。攻略が遅れているのはクランにお荷物がいるからだとなぜ分からないのかしら?」

 コーリンの言葉通り、レオナルドのクランには貴族から押し付けられた者がいた。当然、引き受けたのは厳しい試験を突破した高い実力を持つ者だけではあるのだが、彼らはそれが気に入らないクランメンバーから裏で貴族パーティと呼ばれ蔑まれていた。

「そこまでにしておけ。金がなければ攻略の準備がままならんのも事実だ」
「出立はいつですの?」
「3日後の早朝だ」
「では今夜は?」

 レオナルドは、コーリンからの誘いに無言で答える。 
 
「来てくださらなかったら、後ろから燃やしてしまいますわよ?」

 コーリンはくすくすと笑い、極小の火玉を作り出す。火玉はふわふわと動いて、すっかり冷めてしまっていたお茶の入った大きなポットへと沈み、お茶は沸騰する寸前、小さな泡が立つ温度となっていた。
 コーリンは湯気が立っているお茶をレオナルドのカップに注ぐと、手をひらひらと振りながら会議室から出ていった。
 レオナルドは椅子に背中を預けて目を閉じ、誰にも聞かれないような小さな声で呟く。

「どいつもこいつも……未だに救国王が『ちょっと遊びに行こっか』で踏破した階層を超えられていないってのは、この国の恥なんだよ。俺は必ず救国王を超えてみせる。そのためなら、何でも利用してやるさ。冒険者や貴族、そして親父もな」

 
しおりを挟む
感想 231

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!

あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!? 資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。 そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。 どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。 「私、ガンバる!」 だったら私は帰してもらえない?ダメ? 聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。 スローライフまでは到達しなかったよ……。 緩いざまああり。 注意 いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。 平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか…… ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

初期スキルが便利すぎて異世界生活が楽しすぎる!

霜月雹花
ファンタジー
 神の悪戯により死んでしまった主人公は、別の神の手により3つの便利なスキルを貰い異世界に転生する事になった。転生し、普通の人生を歩む筈が、又しても神の悪戯によってトラブルが起こり目が覚めると異世界で10歳の〝家無し名無し〟の状態になっていた。転生を勧めてくれた神からの手紙に代償として、希少な力を受け取った。  神によって人生を狂わされた主人公は、異世界で便利なスキルを使って生きて行くそんな物語。 書籍8巻11月24日発売します。 漫画版2巻まで発売中。

記憶喪失の転生幼女、ギルドで保護されたら最強冒険者に溺愛される

マー子
ファンタジー
ある日魔の森で異常が見られ、調査に来ていた冒険者ルーク。 そこで木の影で眠る幼女を見つけた。 自分の名前しか記憶がなく、両親やこの国の事も知らないというアイリは、冒険者ギルドで保護されることに。 実はある事情で記憶を失って転生した幼女だけど、異世界で最強冒険者に溺愛されて、第二の人生楽しんでいきます。 ・初のファンタジー物です ・ある程度内容纏まってからの更新になる為、進みは遅めになると思います ・長編予定ですが、最後まで気力が持たない場合は短編になるかもしれません⋯ どうか温かく見守ってください♪ ☆感謝☆ HOTランキング1位になりました。偏にご覧下さる皆様のお陰です。この場を借りて、感謝の気持ちを⋯ そしてなんと、人気ランキングの方にもちゃっかり載っておりました。 本当にありがとうございます!

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。