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第四章:諸国漫遊Ⅱ

翼亜竜②

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 準備を整えていた朔たちはナタリアの指示に頷き、それぞれ所定の位置に散る。当然、皆は朔からの付与魔法によって、必要なステータスは大幅に上昇しており、既に朔のMPは4割ほど減っていた。

 ナタリアが指定した今回の主戦場は大小様々な岩が散在する岩場であり、朔とリトはまっすぐに翼亜竜を見据えることが出来るやや広い場所に位置取った。ナタリアとミラは朔とリトの後方、大きな岩に隠れることができる地点で待ち受ける。なお、ヒトミは独り迂回して潜み、シンは上空へと舞い上がっている。
 
 朔は振り返り、後方にいるナタリアの方を見た。ナタリアが頷くのを見た朔は、翼亜竜に視線を定め、開戦の狼煙代わりにスキルを発動する。
 
(看破の魔眼!)
 
species:翼亜竜ワイバーン
Lv:43
rank:B

ステータス
HP:20617/20617
MP:6101/6101
STR:1189(8)
VIT:1158(8)
AGL:921(7)
DEX:628(5)
INT:665(5)
MAT:977(7)
MDF:892(7)

Skill:噛みつきⅣ、締め付けⅢ、飛翔魔法Ⅳ、ブレスⅢ、咆哮Ⅳ、尾撃Ⅲ、魔力操作Ⅲ、鱗強化Ⅲ、
 
(はあ!? いくらなんでも高すぎるだろ?! スキルも高い!)
 
     ◆
 
 戦闘が始まる前、朔はナタリアからBランクの大凡のステータスを聞いており、当初朔は翼亜竜との戦闘に反対していた。そこに待ったをかけたのがヒトミであり、彼女が朔にした説得は以下の通りである。
 
「ハニー、安全な戦いばかり選んでいたら、本当にヤバい奴と出くわした時に動けなくて死んじゃうよ? ステータスだってハニーの2倍前後くらいだろうし、昔の人は自分たちの何十倍もあるマンモスを石槍で狩ってたんだから、いけるいける♪」
 
 なんとも言い難い説得ではあったが、もし地球上での人類とマンモスの能力をステータスとして数値化したとすると、朔とワイバーンよりもその差は著しい。ナタリアもクランやパーティとはステータスが自分たちよりも高い魔物を狩るための集団であると言って、狩りに乗り気だったことが大きく影響し、朔はしぶしぶながらも戦闘に同意していた。
 
     ◆
 
 看破を受けた翼亜竜はぐにゃりと首を曲げて朔の方を向くと、その醜悪な顔を歪め、大きく息を吸い込むしぐさを見せる。
 
「ブレスⅣ、咆哮Ⅳがある! どっちかが来るぞ!」
「魔力の反応が薄いため咆哮です! 心を強く持って下さい!」
 
 ナタリアは翼亜竜の魔力の動きを見て、ブレスではなく咆哮が来ると見抜いていた。彼女が叫んだ数秒後、翼亜竜は吸い込んだ息を全力で放つ。
 
「GRYYYYYYYYYY!!!」
 
(くっ! きっついけど、暴龍やアルス様に比べればこんなもの!)
「リト、来るよ! ──リト!?」
 
 咆哮を受けたリトは恐怖によって体が硬直していた。朔は心構えができていたことや恐怖耐性を持っていたこと、何よりもより強い者からの圧力を受けた経験があったことでなんとか耐えることができていたが、リトに耐えられる圧力ではなかった。さらに──
 
「ミラ、気をしっかりもって!」
「だ、大丈夫。リトのところへ……」
「ここに隠れていてください!」
 
 ミラもまた顔を蒼白にし、体の震えが止まらなくなっていた。しかし、彼女は震える声で、ナタリアにリトの元へ向かうように告げた。ナタリアは彼女を大きな岩の陰に隠し、疾風のような速度で朔とリトの元へと向かう。
 
(リア……めちゃくちゃ怖い。けど!!)
「リア! 任せた!」
 
 ナタリアの接近に気付いた朔は、魔眼を発動させながら斜め前に走り出す。翼亜竜は朔を標的に定め、翼を羽ばたかせながら朔の元へと向かう。翼亜竜が飛び上がろうとする瞬間、朔は進路を変えて疾駆し、地上から僅かに離れた翼亜竜に向かって跳んだ。
 
「這いつくばってろ!!!」
 
 朔は普段のそれよりも太くて長いバトルスタッフを全力で振るう。翼亜竜は首を曲げて頭にぶつかるのを躱すが、朔が狙っていたのは頭ではなかった。速度が乗った先端が首と翼の付け根にぶち当たる。翼亜竜はバランスを崩した上に速度を落として地面へと落下したが、固い鱗に弾かれた朔もまた空中で体勢を崩してしまっていた。
 
「GRYYYYYYYYYYY!!!」
 
 ダメージは翼亜竜の方が大きいが、ステータス差や体格差もあり、地面に着地した翼亜竜が先に動いた。ぐるりと回転しながら、長い尻尾が朔を襲う。
 
「くそっ!!」
 
 朔はバトルスタッフを両手で持ち、翼亜竜の尻尾を受け止めようとする。直撃は免れたものの、踏ん張りが利かない空中では為す術もなく弾き飛ばされる。
 
「かはっ!」
 
 吹き飛ばされ、岩に背中を強く打ち付けた朔は息を吐き、前のめりに倒れ込んだ。
 
「いってえ……ん? 痛いのは痛いけどそこまでないな。ステータス」
 
Name:朝倉 朔(あさくら さく)
Age:15(28)
species:人族
Lv:44
Job:上級錬金術師Lv28、上級魔術師Lv30
仲魔:シン(シャドウオウル)、リト(リザードオークナイト)

ステータス
HP:41628/44160+-(1024)
MP:34817/56380+-(2048)
STR:601+-(13)
VIT:599+-(13)
AGL:615+-(13)
DEX:776+-(16)
INT:786+-(17)
MAT:764+-(18)
MDF:566+-(12)

Talent:回復魔法の才能、錬金術の才能、魔法の才能、生産の才能

Skill:テイムⅢ、直感Ⅲ、剣術Ⅲ、高速思考Ⅲ、診断Ⅳ、調合Ⅴ、解体Ⅲ、料理Ⅳ、大陸共通語Ⅱ、絶倫Ⅰ、火魔法Ⅳ、意思疎通Ⅱ(仲魔)、恐怖耐性Ⅱ←up!、魔力操作Ⅳ、回復魔法Ⅴ、【神聖魔法Ⅶ:隠蔽中)】、魔力精密操作Ⅲ、魔具作成(魔法陣)Ⅴ、杖術Ⅱ←up!、魔力遠隔操作Ⅲ、土魔法Ⅲ、重力魔法Ⅲ←up!、付与魔法Ⅳ、魔具作成(魔法付与)Ⅳ←up!、転移魔法Ⅰ←new!、身体操作Ⅰ←new!、鍛冶魔法Ⅱ←new!、雷魔法Ⅱ←new、秘薬作成Ⅰ←new!、消費魔力減少Ⅰ←new!


Gift:アイテムボックスⅡ←up!、看破の魔眼、伝言板
、【アルスの加護:隠蔽中】

称号:【聖者、神の恋人:隠蔽中】、奇妙な回復師、ダンジョン攻略者(Eランク)

残りポイント33

※以下解説※
 朔は王都での大量の魔導具作りにより、下級錬金術師のレベルが最大まで上がったため、上級錬金術師へとジョブを変更している。
 なお、上級錬金術師は才能値のMPに×2、DEXに+3、INTに+3、MATに+2の補正がかかり、秘薬作成という薬やポーションの効果を著しく上昇させるジョブスキルを習得できる。
 また、上級魔術師は才能値のINTに+1,MATに+2、MDFに+1の補正がかかり、消費魔力減少というMPの消費を抑えるジョブスキルを習得できる。
※解説終わり※

 
(うおっ!? HPが2500ぐらい減ってるし、カインたちならオーバーキルじゃねえか! ミドルヒール!)
 
 朔はミドルヒールを体全体にかけて傷を癒した。彼はすぐに起き上がり、バトルスタッフを構える。翼亜竜は左肩をその長い舌でべろりと舐め、血走った目を朔へと向けた。
 
     ◆
 
 一方、ナタリアはリトの元へと辿りつき、リトの頭を撫でながら宥めていた。
 
「フギャ、グギャ、ゴッギャ」(母ウエ、コロ、怖いデス)
「リト君、大丈夫。サクさんを見て。あんな風に吹き飛ばされても、サクさんは死にません」
 
 リトは恐怖のあまり狂化が発動しかけており、ナタリアは翼亜竜に吹き飛ばされた朔の方を指差す。
 
「フギャ!?」(父ウエ!?)
「大丈夫。サクさんのHPは翼亜竜の二倍以上あります。それに、私も、ミラも、ヒトミも、それにシンちゃんも一緒にいます。怖がる必要なんてないでしょ?」
「ギ……フゴッ?」(コ……一緒です?)
 
 全身を強く打ちつけたはずの朔がむくりと起き上がり、再び翼亜竜に対峙する姿を見たリトは、恐怖で固まっていた体を動かすことができるようになり、口調も戻っていた。さらに、ナタリアがリトを後ろから優しく抱きしめている温かさにも気付く。
 
「そう一緒ですよ。だから、皆で翼亜竜を倒しましょう」
「フゴ、フゴゴ……フゴッ!」(父上、母上……はいです!)
「ん。私もやる」
 
 リトの眼が爬虫類のような眼からくりくりしたいつもの眼に戻ったとき、ミラもまた自力で硬直から立ち直っており、戦線へと復帰した。
 
「ミラ、大丈夫ですか?」
「ん。怖がりのリトが頑張ってるのに、岩の陰に隠れていられない。私はリトのお姉ちゃんだから」
「フゴッ?」(姉上なのです?)
「ふふふ、そうですね。では、皆でサクさんを助けにいきましょうか」
 
 第一ラウンドは翼亜竜の優勢で終わり、反撃の第二ラウンドが始まる。



※後書き※
遅くなってしまい、申し訳ありません!
次回はヒトミの視点から始まります。
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