神様のヒントでキャラメイク大成功!魔法も生産も頑張ります!

まるぽろ

文字の大きさ
上 下
63 / 86
第四章:諸国漫遊Ⅱ

転移した先は

しおりを挟む
「メンテちゃ~ん。こっち向いて」
「うぐぅ?」チラッ
「はっはっは。メンテ、パパを見て御覧」
「あぐぅ?」チラッ
「メンテちゃん」「メンテー」


 両親が僕を呼んでいます。ハイハイで近づきましょう。


「はっはっは、間違いないな」
「フフッ、そうね」
「あぐ~?」


 二人で何を話しているのでしょう?


「メンテって自分のこと呼ばれると反応するようになったな」
「最近は名前を呼ぶだけでこっちに来るわよ」
「言葉を理解してきたんだな」
「体は小さいけど成長してきたわね」


 おっと、どうやら僕が言葉を分かってきたと思っているようです。実際は生まれてからすぐに理解していましたよ。これは秘密です。

 ここは成長してきたと思わせましょう。自然に覚えたんだよとすれば普通の赤ちゃんですよね。


「最初にしゃべる言葉は何かしらね。きっと”ママ”よね」
「いやいや、そこは”パパ”だと思うな」
「何を言っているのかしらね。アニーキ―もアーネもママが最初だったわよ」
「今度こそパパになるよ。何しろメンテはパパっ子だからな」
「はっはっはっはっは!」「フフフフフッ」
「……んぐぅ」


 お、おう。これは大変なことになりましたよ。

 ”こんにちは”とか”おはよう”みたいに挨拶を言えばいいやと思っていました。僕のはじめての言葉は慎重に選ばなければなりませんね。う~ん、困りました。


 ◆


 次の日。僕と兄貴ことアニーキ―はお互いにお座りをしながら向かい合っていた。


「アニーキ―、アニーキ―、アニーキ―、アニーキ―、アニーキ―、アニーキ―、アニーキ―、アニーキ―、アニーキ―、アニーキ―、アニーキ―、アニーキ―、アニーキ―、アニーキ―、アニーキ―、アニーキ―、アニーキ―、アニーキ―」
「……うぐぅ」


 兄貴は僕に向かって自分の名前を連呼します。頭がおかしくなったのでしょうか?


「”うぐぅ”じゃないよ。アニーキ―だよ!」
「あうー」
「違うよ。アニーキ―!」
「……えぐぅ」


 ちょっとスパルタ気味なところは母にそっくりです。


「お兄ちゃん何してるのー?」
「メンテが名前を理解出来てるって父さんと母さんが言ってたんだ。だから俺の名前を覚えて欲しいから覚えさせているんだよ」
「へえ~、そうなんだ」


 そうなんですか。昨日の出来事を兄貴が知ってしまったようです。初めての言葉をどうしようか悩んでいたら噂も広まっていたのですね。僕は兄貴の頭が大丈夫かと心配してしまいましたよ。ちょっと損した気分だね。


「わたしもやっていいー?」
「いいよ」
「えへへ、メンテ覚えてね。アーネ、アーネ、アーネ、アーネ、アーネ」
「俺も続けるよ。アニーキ―、アニーキ―、アニーキ―」
「あぐぅ……」


 二人ともごめんね。僕は九官鳥じゃないの。どうすればいいのかわからないので様子をじっと窺います。


「わたしはアーネ。あなたもアーネよ。いい? あなたはアーネなの」
「えぐぅ?」


 だんだんとアーネが、お人形遊びで僕を叱っているときのしゃべり方になっていきます。いつも人形で遊ぶたびに僕役の人が怒られるのですよ。それと理由は分かりませんが、僕はアーネらしいです。あきらかに僕に嘘を教えていますね。僕赤ちゃんだけど言葉分かるんですよ。


「アーネ様、さすがに嘘は良ろしくないですよ」


 僕の言いたいことがカフェさんが伝えてくれました。さっきからずっとこちらの様子を見てたのですよ。彼女に任せましょう。


「えー? でも言葉覚えてほしいの」
「メンテ様にアーネと教えると、今後良くないことが起きるかもしれません」
「どうなるの?」
「メンテ様が大きくなったら、アーネ様の大好きなおやつを自分のだと勘違いして食べてしまいます」
「うん、わかったー。やめる」
「そ、そうだね。俺も嘘はダメだと思うなあ~」


 アーネはすぐにカフェさんの言うことを聞きましたね。食べ物の効果恐るべし。兄貴はアーネに名前を覚えさせたらと賛成した側なのでぎこちない感じの返事です。半分は俺のせいって分かっているようだ。僕は兄貴も止めて欲しいんだけどねえ。カフェさんが見えなくなったらまた再開しそう。子供ってそういうもんでしょ。


「あはっはははは、面白いこと考えたのね。そんなことしなくても勝手に覚えるわよ」


 たまたま様子を見ていたキッサさんが爆笑です。今日は、キッサさんとカフェさんの二人で僕たち兄弟の面倒を見てくれているのです。


「そうなの?」「本当に~?」
「赤ちゃんは言葉を自然に覚えるものよ。話しかけるのも大事だけど、しゃべれるようになるのはまだまだね」


 いや~、その通りだと思います。僕自然に覚えてないけどね!


「じゃあどうすればいいの?」「いつしゃべるの?」
「覚えてないかもしれないけど、あなた達も急にママってしゃべったんだから。それから少しずつ言葉を言えるようになったのよ。あれは何歳ぐらいだったかな?」
「確かお二人とも誕生日が終わってからでした。まだメンテ様は10ヶ月ですのでしゃべるのは難しいと思われますね」
「そうそう、誕生日の後だったわ。メンテくんの年齢じゃ言葉を少し理解し始めたぐらいよ。まだ自分の名前しか分かってないんじゃないかしら。無理に言わせるのではなく、話しかけるようにしてみたらどうかしら? その方が覚えてくれるんじゃないかな」
「「へえ~」」


 キッサさんのアドバイスは分かりやすいですね。子どもたちも納得していますよ。


「それならばこうですね。メンテ様、私はカフェですよ。カフェと呼んでくださいね。カフェカフェ♪」
「あ、俺もやる。俺はアニーキ―だよ。アニーキ―はメンテの兄のアニーキ―なんだよ。アーネの兄も俺アニーキーだよ」
「みんなずるーい。わたしはアーネ。アーネだよ! メンテのお姉ちゃんだよ!」


 さっきと比べるとたいぶマイルドになりました。3人とも僕に話しかけるように優しく自分の名前を教え込んでいきます。この中だとカフェさんが一番ノリノリな気がします。そのときです。


「みんなごはんよー」
「……えっぐ!(まじで!)」ぐわっ、ダダダダダダダッ!


 母の声が聞こえたので猛スピードでハイハイします。わーい、今日は何を食べるんだろうね! おっぱいも楽しみだよ~。


「「「「……」」」」


 残された一同はメンテがすごい勢いで振り向き、めちゃくちゃ速いスピードのハイハイでレディーに突進していく姿を見ていた。そのままレディーに抱っこされて食堂に行ってしまった。

 無言のままアニーキ―、アーネ、カフェの3人の視線がキッサに集まった。


「……ん~、レディーが呼んだから反応したんじゃないかな?」
「「「……」」」


 3人とも腑に落ちない顔になった。本当は言葉を理解してるんじゃないのかと言いたいが、メンテの年齢を考えるとどうなんだろうと疑問が生まれたのだ。じゃあ今何が起きたの? レディーにだけ反応しすぎじゃないかと。


「えっと……そ、そうねえ。言葉じゃなくて”声”の違いが判別できるようになったんじゃないかしら? メンテくんにとって母親の声が一番慣れているだろうし」
「「「……そうだね」」」


 3人とも少しだけ納得したような顔になったという。だが、真実はメンテにしか分からないのであった。

しおりを挟む
感想 231

あなたにおすすめの小説

国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。

樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。 ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。 国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。 「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」

愛されない皇妃~最強の母になります!~

椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』 やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。 夫も子どもも――そして、皇妃の地位。 最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。 けれど、そこからが問題だ。 皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。 そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど…… 皇帝一家を倒した大魔女。 大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!? ※表紙は作成者様からお借りしてます。 ※他サイト様に掲載しております。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

あなた方はよく「平民のくせに」とおっしゃいますが…誰がいつ平民だと言ったのですか?

水姫
ファンタジー
頭の足りない王子とその婚約者はよく「これだから平民は…」「平民のくせに…」とおっしゃられるのですが… 私が平民だとどこで知ったのですか?

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です

葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。 王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。 孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。 王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。 働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。 何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。 隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。 そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。 ※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。 ※小説家になろう様でも掲載予定です。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので

sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。 早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。 なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。 ※魔法と剣の世界です。 ※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。