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まるぽろ

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第四章:諸国漫遊Ⅱ

ラッキーフラワーの行方を追って

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 ダンジョン管理局の職員からラッキーフラワーがまだ戻ってきていないことを聞いた朔は、職員に詰め寄る。
 
「未帰還とはどういうことでしょうか?」
「そのままの意味です」
「彼らはどこに?」
「わかりません。何の情報もありませんので」
「三日前なんですよね? その間何もされていないのですか?!」
「はい」
 
 朔は淡々と話をする職員に苛立ち、声を荒げるが、職員の態度は変わらず淡々と返事をするだけであった。
 
「っ!」
 
 頭に血が上った朔が腕を振り上げて管理局のテーブルを叩こうとしたとき、ヒトミが朔の肩を掴む。
 
「ハニー、歯を食いしばりたまえ!」
「えっ?」
 
 ヒトミが右手を振りぬき、管理局の中でバチンッと乾いた音が響いた。
 
「ハニー、落ち着いた? 何の情報も無いのはすごく重要な情報なんだよ?」
「……?」
 
 朔が頬をさすりながら呆気にとられている中、ヒトミは話を続ける。
 
「ハニーが分からないはずないよ? 分かってるのが未帰還なことだけってことは、死体が見つかった訳ではないってことだし、すぐに情報が上がって来ないほど深いところにいたってことだしさ」
「そうか……じゃあ、すぐに助けに行こう!」
 
 朔は駆けだそうとするが、ヒトミは再度彼の肩を掴んで引きとめた。彼女は右手を軽く上げて振り返った朔に尋ねる。
 
「もう一発いっとく?」
「いや、もう落ち着いたから大丈夫だよ」
「そんな顔してて、落ち着いてる訳ないでしょ。とりあえずダンジョン対策なんたらの任命状出して。リアは2パーティ分の手続きよろしく。イルさんは外で待ってる皆に状況を説明してから、長期間取れる宿を探して来て」
「かしこまりました」
「承知」
 
 身近な人がいなくなることに対して強い恐怖心を感じている朔の顔は蒼白になっており、額には脂汗が浮かんでいた。視野が狭くなっている朔に代わり、ヒトミはテキパキと指示を出し、ナタリアやイルは了承して行動を始める。
 
「俺は?」
「ハニーは腕立て伏せでもしてて」
「本当にしなくていいから。ミラと食べやすい料理を作ってて」
「ん。サク、行くよ」
 
 ヒトミは本当に腕立て伏せを始めようとする朔に呆れた顔で指示を出し、ミラが朔の腕を引っ張り馬車へと向かった。朔はミラにされるがままに、管理局の外へと引きずられていく。
 
「アルさん達は、ダンジョンから出て来る人達から情報収集をよろしく」
「任された」
 
 ヒトミは続けてアル達にも指示を出し、次の手を考え始める。
 
「突入メンバーはどうしようかな」
「クックー♪」(ボクは行くよー♪)
「フゴッ」(僕もです!)
「あたしも行くぞ!」
 
 ヒトミの独り言にシンとリトが反応し、スズも元気よく手を上げて主張した。しかし、ヒトミは悩ましげな表情をつくる。
 
「シンとリトは当然だよ。……でもスズちゃんはちょっと厳しいかなー」
「えっ、なんで!? あたしは村の若手では一番強いんだぞ!!」
 
 スズは断られたことに驚くが、すぐに気を取り直し豊満な胸を張ってヒトミに訴える。ヒトミはその胸を凝視しながら、にやりと悪だくみをしている顔で了承する。
 
「うーん、まいっか。落ち込まないようにね(まあ、ハニーのブレーキになってくれるかもしれないしね)」
「あたしをあんまり舐めるなよ!」
 
 2時間後、既に深夜であったが、全ての準備を済ませた朔達はダンジョンへと突入するのであった。
 
     ■
 
 二つの集団がダンジョン内を猛スピードで疾走する。
 
 先頭を走るのは、パストゥール王国暗部の小隊長アル。彼と彼の部下であるウル、朔の第一の家臣となったイルは、高い気配察知と気配遮断をフル活用し、雑魚を音も無く倒しながら、次階層への最短距離を突き進んでいた。
 
 すぐ後ろを進むのは、オルレアン辺境伯密偵のロイと朔の第二の家臣となったルイ。彼らは罠を探して目印を置きつつ、魔物以外の気配を探っている。とはいえ、その道は冒険者や兵士達がよく通るため未発見の罠はほとんどなく、広い範囲の気配を探ることに集中していた。また、その後ろでは、スズが息を切らしながら必死に走っていた。
 
「はあっ、はあっ……、きっついんだけど、なんで皆こんなに速いんだ!?」
 
 スズは息を切らしながら叫ぶ。──その答えは、朔やシン、リト、ナタリアは言うまでも無く、アル達もまたレベルやステータスが高い。そして、AGLが低いミラ、レベルが低いヒトミは、朔の指輪でステータスが上昇しているからである。
 
 スズが必死に走っている一方、最後尾には顔に赤い紅葉のような痕がついた朔やいつものメンバーがアル達との距離を保ち、彼らが切り開いた道を涼しい顔で駆けている。
 
「さっきの奴ら、欲張ってた割に大した情報持ってなかったね。10日前にここに入って、大部屋までは歩き、そこから走って行ったってさ。大部屋まで歩いたら3時間くらいだし、1日目はそんなに下には降りてないかな」
 
 ヒトミが、帰還途中だった若い冒険者パーティのことを思い出しながら皆に話しかけた。
 
 というのも、彼らにラッキーフラワーと会ったか尋ねると、情報料を要求してきた。朔は金を出そうとしたが武器が良いと言ってきたため、魔鉄製の武器をいくつか出して選ぶように伝えたところ、彼らが選んだのは一番大きい物だった。若干よろよろとしながらそれを運ぶ彼らの様子を思い出し、ナタリアが軽くため息をつきながら答える。
 
「魔鉄製の長剣を扱えるようには見えませんでしたが、どうされるのでしょうね。それはともかく、期間が1週間なので予定していたのは10階層まで降りて上がって来るくらいでしょう。往路で何かあったのであれば既に情報が上がって来ているはずなので、10階層または復路で何かあったと考えるのが妥当かと」
「ん。リアの言う通り。それにハゲがいるからきっと大丈夫」
「……そうだね」
 
 ミラがナタリアの言葉を肯定し、朔を励まそうとするが、朔はまだ落ち着かない様子で頷くだけだった。

 そんな話をしていると、少し離れた先を走っているアル達が、ダンジョンの奥から走ってくる兵士達を気配察知で捕捉し声をかける。
 
「そこの兵士達止まれ! 私は、王都情報部所属小隊長アルだ。何かあったのか?」
「情報部小隊長?! 7階層で転移魔法陣が発見され、9名の冒険者が巻き込まれました!」
 
 アルが何かの紋章が描かれたナイフを見せながら所属を名乗ると、兵士たちはびしっと背筋を伸ばして直立し、一名が報告した。なお、情報部とは暗部の正式名称のことである。アルはさらに説明を求める。
 
「詳しく頼む」
「はっ! 7階層の大部屋に駆けこんできた3名の冒険者によると、彼らのパーティが魔法陣を発見し、誤って発動させたそうです。そして、近くにいた冒険者パーティに事情を話して助けを求めたところ、そのパーティは彼らを助けるために魔法陣へ自ら飛び込んだとのことでした!」
「そのパーティの特徴は?」
「魔法陣を発見した冒険者パーティは全員25歳前後のDランクパーティです!」
「助けに飛び込んだのは?」
 
 アルは嫌な予感を感じながらも、その予感が外れることを願う。しかし、兵士からの返答は予感を確信に変えるものだった。
 
「助けに向かったパーティは1名がハ……スキンヘッドに髭面の年配の男で、他の5名は若く、一人は猫獣人だったそうです!」



※後書き※
皆様いつもありがとうございますm(_ _)m
次回は、土日のどちらかに更新します。
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