神様のヒントでキャラメイク大成功!魔法も生産も頑張ります!

まるぽろ

文字の大きさ
上 下
58 / 86
第四章:諸国漫遊Ⅱ

ダンジョン都市への帰還

しおりを挟む
 ナタリア達がダンジョンから戻った次の日、朔たちは本神殿の山から降りてアル達と合流していた。朔はクランに合流することになった3名を、アル達に紹介している。
 
「──ということで、私達のクランに参加することになった。カルドス枢機卿の御令孫のブリジットさんと、鬼人族次期族長シュテさんの御令嬢のスズさんです」
「皆様、先日は有り難うございました。改めまして、これからもよろしくお願いしますわ」
 
 ブリジットは、右掌を左胸にあてて頭を下げるという神職者の所作で微笑みながら挨拶した。彼女は、水色を基調とした修道服の上にマントを羽織っており、優雅に微笑む姿は、先日の醜態を知らなければ正にご令嬢といった雰囲気を纏っている。
 なお、この世界の神職者の服は階位によって服装が異なり、神聖魔法の輝きのように階位が高いほど濃い青色となる。
 
「よろしくな!」
 
 一方、スズは右掌を頭の高さまで上げ、笑顔で元気よく話した。彼女は訓練のときと同じ袴姿ではあるのだが、旅をするということで足元を紐で縛っている。2人の挨拶を聞いて苦笑いをしているアルが、ナタリアとミラの間に立っているヒトミを見ながら朔に尋ねる。
 
「そちらの娘はどなたでしょうか?」
「えーと、新しい婚約者のヒトミです」
「(……ヒトミ殿は訳ありか。まだあまり強くはなさそうだが……この只者ではない気配はなんだ?)承知しました。それでは、鬼人族の武人であるスズ殿はともかく、ブリジット嬢はなぜ?」
 
 アルは朔の雰囲気で勘付き、話題をスズとブリジットに戻した。
 
「お爺様から見聞を広めるようにと言い付けられまして、アサクラ男爵の旅へ同行することになりましたの」
 
 もちろん、これは建前の理由であり、このようなことになった理由はというと──
 
     ■
 
 昨日の食事後、朔とヒトミはカルドスを訪ね、ジョブチェンジを依頼した。しかし、快く引き受けたカルドスがヒトミの頭の上に手を乗せて何かを呟いた途端、彼は慌てた様子で声を上げ、朔とヒトミに耳打ちする。
 
「ごっ!? ごほん、失礼(サク殿、これはまずいことになりますぞ)」
 
 朔は、カルドスに合わせて小声で彼に尋ねる。
 
「(カルドス枢機卿、どういうことでしょうか?)」
「(神職者が行うジョブチェンジは、相手が何のジョブに就いたのか、第何職業まであるのか分かるのです。ヒトミ殿の第五職業は、今まで聞いたことがありません。どこかの教会でジョブチェンジを行った場合、大騒ぎになりますぞ)」
「(え!? そうなんですか? ヒトミ、知ってたのか?)」
「ああ、そう言えばそうだったね。あはは、忘れてたよ」
 
 朔が驚いてヒトミに問うと、彼女は頬をぽりぽりとかきながら笑顔で正直に話した。朔がため息混じりに非難するような目つきでヒトミを見ていると、考え込んでいたカルドスが口を開く。
 
「……サク殿、それではブリジットを旅にお連れ下さい」
(この人、何言ってんの!?)
「いえいえ、危険な旅ですし、ブリジット嬢をお連れする訳にはいきません」
「本来であれば私が付いていきたいところではあるのですが、私は今この地を離れるわけにはいかないのです。どうか、ブリジットにその役目を与えていただきたい」
 
 朔は慌てて断ったが、カルドスは堅い口調で再度告げた。すると、ヒトミも頷きながら同意する。
 
「うんうん。それが良いよ、ハニー」
(誰のせいだよ! ったく、非常に有難いんだけど……ブリジットさんは本当に大丈夫か? 悪い人ではないんだろうけど、彼女に良い印象がない。……でも他に当てもないし、信じるしかないのか?)
「……承知いたしました、カルドス枢機卿。ブリジット嬢をお預かりいたします」
 
 朔は不安を感じながらもカルドスの提案を了承し、深く頭を下げるのであった。
 
     ■
 
 ブリジットの説明を受け、アルは大げさに頷きながら納得したそぶりを見せつつ、話しを進める。
 
「聖職者は各地に派遣されることも多いですからな。ダンジョンに潜る必要はありませんし。それで、スズ殿はどうするのですか?」
「とりあえずはアル隊長のパーティに加入ですね。ライ隊長にはラッキーフラワーの面倒を見て頂いていますし」
「アル隊長! よろしくな!」
「ああ、こちらとしても、純粋な前衛向きの戦士は有難い。宜しく頼む」
 
 アルとスズはがっちりと握手を交わす。こうして、朔たちのクランに新たな仲間が正式に加入した。
 
 
 
 その日のうちに、朔たちは聖光教国からダンジョン都市へと向けて出発した。
 
 リトとスズ、ナタリアとヒトミは訓練室で稽古をしており、御者席にいるのは朔、シン、ミラのみである。御者をしている上機嫌そうなミラの隣に、シンを肩に乗せた朔が座り、のんびりと一度見た景色を楽しみながら馬車を走らせていた。
 
 数時間ほど経った頃、御者席から馬車の中へと続く扉が開き、エマが朔たちの後ろに来る。
 
「エマさん、どうしたんですか?」
「邪魔して申し訳ありませんわ。でも、ちょっとだけ避難させてください」
「避難?」
 
 後ろを振り向いた朔がエマを見て尋ねると、彼女はぐったりした様子で答える。
 
「ブリジット嬢へのロジャーのアピールを見ているだけで胸やけが……」
「ああ、ロジャーさんが一目ぼれしたんでしたっけ?」
「そうですわ。ロジャーは今のところ躱されていますが。アサクラ男爵は新しい女性を2人も連れてきていますし、私も素敵な方に巡り合いたいものですわ」
「サクはダメ」
「ミラ、エマさんはそう言う意味で言ってないから。ヒトミは……まあそうなんですけど、スズさんは違いますよ」
 
 朔はエマの言葉に素早く反応したミラを窘めつつ、エマに釈明した。
 
「そうなのですか?」
「はい。スズさんはリトの友達っていうか親友というか……良く分からないけど、とにかく馬が合うみたいなんですよね。アル隊長達やラッキーフラワーの皆はどうですか?」
「アル様やウル様は渋いおじ様で好みではあるのですが、職業上結婚して二人での生活というのは難しいでしょう? カインさん達はちょっと若過ぎますわね……」
(年上好きなんだ)
「イルさんは?」
「イル様とルイ様の邪魔はできませんわ!」
(はい?)
「んんっ、ミラさん邪魔してごめんなさい。私はこれで失礼しますわね」
 
 今来たばかりのエマは咳払いをし、慌てた様子で馬車の中へと戻っていった。よくわからないまま残された朔はミラに尋ねる。
 
「ミラ、男性同士って女の子的にはどうなの?」
「知らない」
「そっか」

 よくわからない話をしながらも、久しぶりの役目に張り切っているイアンとトウカが牽く馬車は、ダンジョン都市へと向けて軽快に進む。心地よい初秋の風が彼らを後押しするように吹いていた。
 
 
 
 2日後の夜、朔達はダンジョン都市へと辿りついていた。夜間ではあるが、朔は貴族証を見せて都市の中へと入る。朔達はラッキーフラワーたちとの連絡を取るために、ダンジョン入口の傍にある建物へと進む。そこはダンジョン管理局というパストゥール王国の機関があり、3000人を超えてはいけないというルールがあるため24時間ダンジョンへの出入りを管理している。
 
 朔がダンジョン管理局の職員にラッキーフラワーについて尋ねると、職員は大量の紙をめくり、朔に淡々とした口調で告げる。
 
「3日前が帰還の期限でしたが、アサクラ男爵のクランに所属しているパーティ・ラッキーフラワーは現時点をもって未だ戻ってきていません」
 
 
 
 
 
※参考:朔のクランの現状※
 
第一パーティ:朔、シン、リト、ナタリア、ミラ、ヒトミ
第二パーティ:アル、ウル、ロイ、ロジャー、エマ、スズ
第三パーティ:カイン、キザン、ツェン、バステト、タンザ、ライ
待機組(家臣団等):イル、ルイ、ハロルド、イアン、トウカ、ブリジット
 


※後書き※
昨日は間に合わず、申し訳ありません、
次回は、朔たちもラッキーフラワーを探して六大迷宮へと突入します。水曜日に投稿の予定です。



 
しおりを挟む
感想 231

あなたにおすすめの小説

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

アイムキャット❕~異世界キャット驚く漫遊記~

ma-no
ファンタジー
 神様のミスで森に住む猫に転生させられた元人間。猫として第二の人生を歩むがこの世界は何かがおかしい。引っ掛かりはあるものの、猫家族と楽しく過ごしていた主人公は、ミスに気付いた神様に詫びの品を受け取る。  その品とは、全世界で使われた魔法が載っている魔法書。元人間の性からか、魔法書で変身魔法を探した主人公は、立って歩く猫へと変身する。  世界でただ一匹の歩く猫は、人間の住む街に行けば騒動勃発。  そして何故かハンターになって、王様に即位!?  この物語りは、歩く猫となった主人公がやらかしながら異世界を自由気ままに生きるドタバタコメディである。 注:イラストはイメージであって、登場猫物と異なります。   R指定は念の為です。   登場人物紹介は「11、15、19章」の手前にあります。   「小説家になろう」「カクヨム」にて、同時掲載しております。   一番最後にも登場人物紹介がありますので、途中でキャラを忘れている方はそちらをお読みください。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。