神様のヒントでキャラメイク大成功!魔法も生産も頑張ります!

まるぽろ

文字の大きさ
上 下
51 / 86
第三章:諸国漫遊Ⅰ聖光教国編

騒動の終結と、嫁達の話し合い

しおりを挟む
 カルドスが騒動を治めにいった一方で、騒動の中心から離れるように歩き出した朔は、ぐずっている鬼人族の子供の元に向かってまっすぐ歩いていた。
 
「ちょっとすみません」
「──人族が何の用だい!?」
「私は回復師ですので、その子の手当をさせてもらえませんか?」
 
 背中をさすりながら子供をあやしていた鬼人族の女性は、朔のことを睨みつけるが、朔は意図に介さずにその子の前にしゃがみ、穏やかに声をかける。
 
「だいじょうぶ?」
「ぐすっ、ぐずっ……、どんじるのにーちゃん?」
 
 ぐずっている子は、昨夜に豚汁を受け取った一人であり、個性的なメンバーで食事を配っていた朔たちのことを覚えていた。朔は、その子に言われた言葉がおかしくて、つい笑ってしまう。
 
「あはは、そうだよー。転んじゃった?」
「鞘がでできて、引っががっちゃだの。ぶきは、そのひどそのもの、だがら、だいじにじないどダメ、なのにっ」
(あらま。ぐずってる理由はそっちか)
「良い子だね。とりあえず痛いの治しちゃおうか。……(キュア)、ヒール。僕はサクって言うんだけど、君は?」
「ぐすっ……ずずっ、アルドだよ! サクにーちゃん、ありがとう!」
 
 アルドが鼻水をすすって朔に感謝を告げた時、後ろの方から叫び声が聞こえる。
 
「貴様! 何をしている!!」
 
 朔が後ろを振り向くと、顔を真っ赤にした鬼人族の男が猛スピードで向かって来ていた。朔は立ちあがり、女性と子供を守るように構える。そこに、リトが割って入った。
 
「フゴゴッ!」(守ります!)
「邪魔だ!」
 
 リトは、男の大振りな拳を左手の盾で受けるが、男の拳は重く、リトの巨体が後ろに押された。男は、リトの体勢が整う前に、隙が出来た脇腹へと蹴りを放ち、避け切れないと判断したリトは、体に力を込めてスキルを発動する。
 
「フゴッフゴゴッ!」(身体強化、鱗強化です!)
「──ちっ!」
 
 男の蹴りは、鱗が硬くなった上にスキルで高まったリトのVITを抜いて、僅かにダメージを与えたが、5000を超えるHPを持つリトにとっては、微々たるものであった。男は、それでも果敢に攻め立てる。
 
「そこをどけっ!」
「フゴゴッ!」(通さないです!)
「邪魔するな!(くそっ! やりにくい!)」
「フゴゴッ!」(この人強いです!)
「ちっ! ……もう一度だけ忠告する。そこを退け。退かねば切る」
 
 格闘術等のスキルを持っていないリトは防戦一方であったが、尻尾を上手く使って男の動きを阻害しており、男はリトを倒すことも横を抜くこともできず、一旦後ろに下がって腰の剣に手をかけた。そこに、朔が声をかける。
 
「それまで!」
 
 男とリトは声につられて、朔の方を見る。朔は、リトを撫でながらヒールをかけ、口を開こうとするが、その前にアルドが男に駆け寄っていた。
 
「とーちゃん! にーちゃんは僕の傷を治してくれたんだよ!」
「なに?! 人族がか!?」
「そうだよ! 昨日のとんじるも、にーちゃんがくれたんだよ!」
「な?! ……すまない。人族の青年よ」
 
 男は目を見開き、口を開けたまま朔を見る。数秒間呼吸を整えて頭を落ち着かせ、全身から放っていた殺気をかき消して頭を下げた。
 
「お気になさらず。リトの良い稽古にもなりましたし」
「フゴゴッ!」(強かったです!)
「ふっ、お主の従魔は堅過ぎだ。俺の蹴りでもビクともせんとはな」
 
 男は自嘲気味な笑みを浮かべるが、朔は男に真面目な顔で忠告する。
 
「普通の人なら内臓が潰れて死んでいますから、加減はしてくださいね」
「強者かどうかくらい見たらわかる。──お主が、そのリトより強いのもな」
「……なんにせよ誤解が解けて良かったです。あっちはどうなりましたか?」
 
 図星を指された朔は、いつものようにポーカーフェイス(のつもり)でさらりと流して話を変え、カルドスの方へと目をやった。男は横に並んで、同じ方を向く。
 
「アルドが無事であれば、あのような奴らどうでもよいわ」
「私も馬鹿に付き合う趣味はないので、猊下に任せましょうかね」
 
 カルドスや暴言を吐いていたバカオらもこちらを見ていたようであり、バカオはカルドスに詰め寄って、鬼は野蛮だというようなことをぎゃあぎゃあと何かをわめいていた。
 彼らにとって間が悪いことに、ちょうどそのタイミングで教会騎士たちが到着した。当然、カルドスを取り囲んでいる彼らは、武器を抜いた兵士たちに取り囲まれる。
 カルドスは、こちらに向かってウィンクをすると、教会騎士とともに彼らを連れて歩きだした。連れて行かれる中、まだ喚いているバカオの様子を見ていた朔は、気付かれないようにほんの少しの魔力を練る。
 
(まあ、ちょっと恥をかくくらいはしてもらうかな……穴掘り)
 
「──猊下、悪いのは鬼共です! ふべぎゃっ!?」
 
 バカオは突然できた小さな穴にはまって派手に転倒し、穴より少し小さい程度の大きさの石に右手の小指をぶつけて、のたうちまわった。彼の醜態を見た鬼人族や、周囲にいた野次馬は、大声で笑い出す。
 
「っ! がはははは! お主の仕業だな?」
「なんのことでしょう? 石にでも躓いたのではないですかね?」
「くっくっく、そういうことにしておいてやる。おい皆、行くぞ! 酒盛りだ!」
「それでは、私はこれで」
 
 豪快に笑った鬼人族の男は、立ち去ろうとする朔の手をがっしりと掴む。
 
「お主もだ。新しい友との出会いの宴に、主賓がいなくてどうする。俺は鬼人族のシュテ、お主は?」
「パストゥール王国より男爵を拝命しているサク・フォン・アサクラと申します。友と呼んで頂けるのであれば是非」
 
 シュテは朔の手を掴んだまま名を告げ、朔もまた礼儀正しく名乗った。
 
「お主、貴族なのか? まあ、友に身分など関係ない。だから、そんなかしこまったしゃべり方はやめろ」
「……ああ。せっかく呼んでくれるなら何か酒の肴を用意するけど、何が食べたい?」
 
 朔は、シュテから言われた通りに口調を崩して尋ねると、アルドがびしっと手を上げて、目をきらきらさせながら答える。
 
「肉!」
「アルドは肉ね。シュテは?」
「肉だ」
「フゴゴッ!」(お肉です!)
「あいよ。じゃあBBQでもしようか」
 
 
 
 朔が料理の準備を始めたころ、ダンジョン内部の大部屋では──
 
「嫌あああああ!」
「ウオオオオオ……」
 
 ナタリアが涙目でレイピアを振りまわし、ゴーストの群れを倒していた。なお、ミラは氷の壁で大部屋を二つに分け、近づいてくるゴーストには浄化を放っている。また、ヒトミは、体の動きを確かめるように刀を振るっていた。
 
「ハニーの刀のおかげで楽勝だね♪」
「鬼畜」
「獅子はわが子を谷に突き落とすのである!」
「不憫」
 
 ミラとヒトミは、ゴーストの叫びを全く気にしておらず、氷の壁の向こう側で戦っているナタリアをよそに話しをする余裕さえあった。
  

 15分ほど経ち、ミラが氷の壁を解除すると、体育座りのナタリアがいた。
 
「ナタリーお疲れ♪」
「ジン様、ひどいです……」
 
 ナタリアは体育座りのまま、ヒトミをジト目で見上げていた。
 
「ナタリー、ボクはもうジンじゃないから。ヒトミって呼んで欲しいな」
「ジン様も私をナタリーって呼んでるじゃないですか」
 
 ナタリアは頬を膨らませて、ぶっきらぼうに答えた。ヒトミとナタリアの仲の良さそうな態度を見て、不思議に思ったミラが無表情に尋ねる。
 
「2人は知り合い?」
「うん。同じパーティじゃなかったけど、ボクが作ったクランに所属していたからね。リアはその時ナタリーって呼ばれてたんだよ。ふらふらしてたリアを拾ったのはボクの友達なんだ♪」
「拾ったって──」
 
 ナタリアは口を少し尖らせて文句を言おうとするが、その前にヒトミが楽しそうに話しだす。
 
「リアがクランに加入したころなんて、びくびくしてるかと思ったら、目をきらきらさせてたり、猫みたいに気分の上下が激しかったんだよ♪」
「想像できない」
「あはっ、そうかもね♪ でも、最近はまた違う意味で気分が上下してるみたいだけど?」
「ん。サクのことになるとそうかも」
「もう! ミラもジ、ヒトミ様もいい加減にしてください!」
 
 耐えきれなくなったナタリアは耳を赤くして叫び、無理やり話を終わらせた。
 
「リア、様はいらないよ♪ リアもミラちゃんもヒトミって呼んで欲しいな。それと……ボクを仲間に入れてほしい」
 
 ヒトミは、左手につけた名前が彫られていない婚約指輪を、ナタリアとミラに見せながら二人の目を見てまっすぐに許しを請うた。
 
「ふぅ、先程の部屋での話を聞き、さらにそれを持っているヒトミさ、ヒトミを受け入れない訳ありません。節操無く増えるのは断固拒否しますけど」
「ん。私も問題無い。私のことはミラで良い。そんなことしたら凍らせる」
「あはっ、リアもミラもありがとう! 二人とも大好きだよ♪」
しおりを挟む
感想 231

あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。

桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。 「不細工なお前とは婚約破棄したい」 この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。 ※約4000文字のショートショートです。11/21に完結いたします。 ※1回の投稿文字数は少な目です。 ※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。 表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。 ❇❇❇❇❇❇❇❇❇ 2024年10月追記 お読みいただき、ありがとうございます。 こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。 1ページの文字数は少な目です。 約4500文字程度の番外編です。 バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`) ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑) ※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。