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第4話 もふもふで繋がる
#11 僕と好きなものへの思い
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「だって、男が可愛いものを好きだなんて、女々しくてキモいでしょ? 引かれますもん、絶対」
「……それ、本気で言ってる?」
成田君の台詞に引っかかり、小さな怒りが出た。否定されたからではない。嘘に聞こえたからだ。
「可愛いものを好きになっていいのは、女性だけじゃない。老若男女、誰でもなんだ。男性が好きになってはいけないってルール、存在しないよ」
「女々しいと思う人だっているんですよ、世の中には」
「……聞いたから、そう思ってるんだね」
成田君は、可愛いものが好きなのかもしれない。もふーに対するリアクションを見て、そう思った。でも、そんな成田君の気持ちを、誰かが『女々しい』という言葉で傷つけた。可愛いものを可愛いと思う事は、間違っていないのに。
「先輩には分かりませんよ! 好きなものを否定される気持ちなんて!」
「……否定された事、あるよ」
成田君の気持ちは、僕にも分かる。好きになった料理に対して、「男がするものじゃない」と言われた事があるのだ。でも、料理って将来役立つ事だし、性別は関係ないと思う。だから、僕は考えを変えなかった。
「……正当性のない考えなんて関係ない。好きなものは好きって言っていい。考えを変える必要なんてないよ」
「……っ、でも」
「無理にとは言わない。どうしたいかは、成田君次第だと思うから」
僕があれこれと言うより、成田君自身が考える方が一番だろう。言えばいいってもんじゃないからね。
「……先輩、心は意外に平凡じゃないんですね」
「えっ」
「すみません、言葉が過ぎました。……あと。昨日、仕事を押しつけてすみませんでした。課長と美野原さんにも、ちゃんと謝罪してきます」
成田君がそう言ったタイミングで、お昼が終わる。その後、成田君は課長と美野原さんに謝罪し、別の仕事を貰った。成田君は真面目に仕事をこなし、反省の意を周りに示した。真面目にするのは当然なのだが、今までの成田君から考えたら、一つの成長だろう。
「……先輩。もふーちゃんって何が好きですか」
仕事終わり、成田君が僕に聞いてきた。食べ物なら和食が好きだと言うと、成田君は少し考えてから、こう言った。
「……最近行って、美味しかった和菓子屋さんがあるんです。そこのお菓子、もふーちゃんなら喜びますよ」
成田君はそう言うと、さっさと帰っていった。――成田君の心が、少しだけ前に進んだ気がした。
「……それ、本気で言ってる?」
成田君の台詞に引っかかり、小さな怒りが出た。否定されたからではない。嘘に聞こえたからだ。
「可愛いものを好きになっていいのは、女性だけじゃない。老若男女、誰でもなんだ。男性が好きになってはいけないってルール、存在しないよ」
「女々しいと思う人だっているんですよ、世の中には」
「……聞いたから、そう思ってるんだね」
成田君は、可愛いものが好きなのかもしれない。もふーに対するリアクションを見て、そう思った。でも、そんな成田君の気持ちを、誰かが『女々しい』という言葉で傷つけた。可愛いものを可愛いと思う事は、間違っていないのに。
「先輩には分かりませんよ! 好きなものを否定される気持ちなんて!」
「……否定された事、あるよ」
成田君の気持ちは、僕にも分かる。好きになった料理に対して、「男がするものじゃない」と言われた事があるのだ。でも、料理って将来役立つ事だし、性別は関係ないと思う。だから、僕は考えを変えなかった。
「……正当性のない考えなんて関係ない。好きなものは好きって言っていい。考えを変える必要なんてないよ」
「……っ、でも」
「無理にとは言わない。どうしたいかは、成田君次第だと思うから」
僕があれこれと言うより、成田君自身が考える方が一番だろう。言えばいいってもんじゃないからね。
「……先輩、心は意外に平凡じゃないんですね」
「えっ」
「すみません、言葉が過ぎました。……あと。昨日、仕事を押しつけてすみませんでした。課長と美野原さんにも、ちゃんと謝罪してきます」
成田君がそう言ったタイミングで、お昼が終わる。その後、成田君は課長と美野原さんに謝罪し、別の仕事を貰った。成田君は真面目に仕事をこなし、反省の意を周りに示した。真面目にするのは当然なのだが、今までの成田君から考えたら、一つの成長だろう。
「……先輩。もふーちゃんって何が好きですか」
仕事終わり、成田君が僕に聞いてきた。食べ物なら和食が好きだと言うと、成田君は少し考えてから、こう言った。
「……最近行って、美味しかった和菓子屋さんがあるんです。そこのお菓子、もふーちゃんなら喜びますよ」
成田君はそう言うと、さっさと帰っていった。――成田君の心が、少しだけ前に進んだ気がした。
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