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第18話:初夜★
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あれから数日が経ったが、未だケイトから続報はない。国王を説得することは無理だったのだろう。それならそれで、早く事を済ませてしまいたかった。一度は覚悟を決めたのだ。あまりケイトに無理をさせたくもない。
自室で溜息を吐いた紗香に、茶の用意をしていたメイドが声をかけた。
「お疲れですか、聖女様」
「あ……いえ、すみません。少し考え事を」
「あまり張り詰めていると、肩が凝ってしまいますよ。どうぞ、こちらを」
「ありがとうございます」
メイドが淹れてくれた茶の香りを吸い込むと、くらりとくるほどの甘い香りがした。こんな香りの茶葉は初めてだ。なんという品種だろう。
一口飲むと、砂糖も入れていないのに甘みのある温かい液体が喉を滑り降りて、腹に落ちた。ほっとする温度に息を吐く。
「――――……?」
「どうかなさいましたか?」
「あ、いえ……美味しいです」
「それはようございました。冷めないうちにどうぞ」
勧められるままに、カップの中身を飲み干す。リラックスしたせいなのか、頭がぼうっとする。
温かいものを飲んだからか、体がぽかぽかした。ぽかぽか、というより――暑い。
熱い。くらくらする。酒でも飲んだかのようだ。もしかして、あの甘い香りは、ブランデーでも入っていたのだろうか。
真相をメイドに尋ねる前に。
紗香の意識は、そこで途切れた。
+++
「サヤカ様!」
乱暴な扉の音と共に、ケイトが紗香の部屋に入る。
そこで目にしたのは、赤い顔で息を切らせ、ベッドに横たわる紗香だった。
「……っ勝手なことを! 陛下とはまだ話が済んでいない!」
「その陛下からのご命令です。事が済むまで部屋から出すなと仰せつかっております。それでは、わたくしはこれで」
追従していたメイドは感情のない瞳で淡々と告げると、そのまま部屋を出ていった。
鍵の音がして、ケイトは悔しそうに歯噛みすると、紗香の側に寄って軽く頬を叩いた。
「サヤカ様。サヤカ様、意識はありますか」
「うー……?」
ぼんやりとしながらも一応は返事をしたことに、ケイトはほっと息を吐いた。
ひとまず体に深刻な影響がないとわかると、腹の底から怒りが込み上げた。
――聖女を相手に、薬を盛るなど。
国王との交渉は難航していた。時間がかけられないこともわかっていた。だがまさか、これほどの強硬手段に出るとは。
聖女という役割はただ相手の善意によってのみ成り立っている。紗香と接してよくわかった。聖女はただの人間の女性でしかないことに。であれば、召喚など誘拐と大差がない。生活を保障するなど、脅しだ。逆らえば命はないということに他ならない。その状態で、ろくに対価も与えず、自由を奪って、度を越えた責務を一方的に押しつけている。
本気で紗香が役割を投げ出せば、困るのは国の方だ。聖女こそが今の国の命綱だというのに、王族はまるで聖女を異端者のように扱っている。だから国のために尽くしてくれているというのに、会おうともしなかった。それを今更、強制的に言うことを聞かせたい時にだけ。
それで言うことを聞かないとなれば、当人の意志を無視して薬物を用いる。これが非道でなくてなんなのか。
国王は決して暴君などではない。少なくとも、国民にとっては良き王の部類だった。国王は聡明で、理性的で、冷静な人物だ。戦場に出ることこそないが、実のところ武勇にも優れている。緊急時には、己で剣を振るうことのできる頼もしさがあった。国政も正しく行われ、民衆からの支持もある。国王は確かに王の器で、仕えることに疑問を持つ騎士などいなかった。
ただ、それが自国のみに向けられているだけ。民を守ることの優先度が高いだけ。
聖女は守るべき民ではないから、その庇護の外側に置かれている。利用できる駒の一つでしかない。
優しいだけの王は生き残れない。国王は正しく取捨選択ができる。俯瞰して盤面を見ることができる。だからこそ、この小さな国がどこに取り込まれることもなく国のままであれる。
頭ではそれが理解できていても、仁義を重んずる騎士団から見れば、国のために尽くす聖女は自分達と同志である。同志を傷つけられれば反感も抱く。
その価値観の差が、決定的な亀裂を生んでいた。それでもケイトが騎士である限り、国王と対等に議論することは許されない。最終的には従うしかないと、わかっていた。
わかっていたのに。
「あつい……」
紗香が零した言葉に、意識が引き戻される。少しでも薬が薄れやしないかと、寝台脇に置かれた水差しを手に取り、カップに注ぐ。
「サヤカ様、水を。飲めますか?」
力の抜けた体を支えて、口元にカップを当てる。
口の端から零れた水が肌を濡らしたが、喉が動いたので、少しは飲み込めていそうだ。
「ケイト、さん」
「はい。ここにおります」
「ケイトさん」
「はい」
今にも涙が零れそうなほどに潤んだ瞳で名を呼び、紗香がケイトの首に腕を回す。縋るように頬をすり寄せ、耳元で熱い吐息が漏れた。
「好きです」
紗香の口から零れた言葉に、ケイトが辛そうに顔を歪めた。
「好き、です。あなたが、すき」
――ああ。こんなことなら。
「……私も。サヤカ様を、お慕いしております」
――彼女が勇気を振り絞ってくれたあの夜に、抱いてしまえば良かった。
肌にキスを落とすたび、紗香の体が震える。薬のせいで感覚が過敏になっているのだろう。
衣服を脱がすために布が肌に擦れる刺激すら、快感として受け取っているようだった。
「ケイトさん、キス、したい」
唇へのキスをねだる紗香を、ケイトは寂しそうに笑って制する。
「駄目ですよ」
「どしてぇ……?」
「サヤカ様にとって、唇へのキスは特別なのでしょう」
「特別、です。ケイトさんが、特別だから。ケイトさんだけ」
「……貴方が正気の時に、もう一度その言葉が聞けたら。その時はいくらでも」
正気に戻れば、薬が効いていた間のことは覚えていないだろう。これらは全て戯言だ。
それでいい。こんなことは、覚えていなくていい。
「ふあ、あん!」
「もうどろどろですね」
足の間に手をやれば、まだ触れてもいないその場所は既に蜜でしとどに濡れていた。
これならば濡らす必要はないだろうが、ケイトは紗香の足を開いて、匂い立つ場所へと口づけた。
「あっああ、ひあ!」
「……もう、儀式を行うこともなくなりますから。こうするのは、これが最後かもしれませんね」
「ああっ、それ、あん、きもちいっ」
薬で理性が溶けているからか、羞恥もなく、大きな声を上げて快楽を貪る。
乱れる紗香の姿を見ながら、ケイトは紗香の一番好きな場所を、舌でくすぐった。
悶える体を押さえて、固くなった秘芯を口に含む。たっぷりと舐め転がして、形を覚えておくように、舌で丁寧になぞる。強く吸い上げれば、そこは真珠のようにぷっくりと主張した。
可愛らしいそこを、いい子いい子と指の腹で撫でる。撫でて、擦って、秘芯を虐める指はそのままに、蜜壺にも指を差し込む。
うねる内壁が指にまとわりつく。その感触に喉を鳴らしながら、ケイトは内側を解すように指を動かした。
「ふああ! あっ、あん、ああっ」
「今日は十分に拡げる必要がありますから……指、増やしていきますね」
「ひあ、あ、んんっ」
「痛みはないですか?」
「きもち、いい、もっとぉっ」
言葉通り、もっともっととねだるように肉壁がケイトの指を締め付ける。ぐちゃぐちゃと粘度のある水音を立てながら、蜜壺を掻き回していく。核の裏側を押しながら表の秘芯も捏ね回せば、高い声を上げて紗香の体が大きく跳ねる。手を緩めずに内側のいいところを擦って、秘芯を摘まみ上げる。
「ひああ! それ、つよ、んあ! いいっ、もっと、ああん!」
紗香はすっかりケイトに翻弄され、与えられるもの全てを貪欲に受け入れていた。
何度達しても体の疼きが収まらないのか、もっともっと、と何度も口にして。
くったりと力の抜けた紗香のそこは、もうすっかりぐちゃぐちゃだった。
十分に解れたことを確認して、ケイトが上衣を脱ぎ、下も寛げて苦しそうに収まっていた自身を取り出す。
そそり立つ剛直に、ずっと蕩けていた紗香が、初めて僅かに怯えた様子を見せた。
安心させるように微笑んで、ケイトは紗香の目を片手で覆った。
「見ると怖くなりますから、直視しない方がいいですよ」
「……こわく、ないです」
「ご無理をなさらず。気にしておりませんから」
「ほんとに、こわく、ないです。ケイトさんだから」
紗香は目を覆うケイトの手を退けると、両手を伸ばしてケイトの頬を包んだ。
「わたし、ずっと、優しくしてもらってたから。あなたにされて、怖いことは、ないです。大丈夫。だいじょうぶだから……泣かないで」
――何を。
紗香の手がケイトの目元を拭って。そこでやっと、紗香の体を濡らした雫が、汗ではないことに気づいた。
瞬きもできないケイトと目を合わせて、紗香が微笑む。その瞳には、平時の穏やかさがちらついていた。
まさか。この薬を使われて、最中に正気を取り戻すはずが。
「――……また、怖がっているのは、私だけなのか」
自嘲めいた笑いに、紗香が心配そうに眉を下げた。
いつもそうだ。肝心なところで、臆病風に吹かれて。彼女の方が、ずっと強い。あの夜、彼女は既に覚悟を決めていたのに。
込み上げた感情のままに、紗香を強く抱き締める。肩口に顔を埋めたケイトをあやすように、紗香も背中に手を回す。
「必ず、勝ちます。勝って、貴方にもう一度、想いを伝えます。約束します」
「はい。待ってます」
――その時こそは。
ケイトは紗香の唇を手で覆って、その上から口づけた。
「入れますね。痛かったらおっしゃってください」
こくりと紗香が頷いたのを確認して、濡れそぼったそこに猛る自身を押しつける。ぬるぬると動かしながら、徐々に吞み込まれていく。
息を詰めて顔を歪めた紗香の髪を、ケイトが梳いた。
「痛みますか?」
「い、え……。でも、なんか、くるし……」
薬で麻痺しているのか、痛みは感じていないようだった。それでも圧迫感は拭えないのだろう。呼吸がしにくそうな紗香の頭を宥めるように撫でる。
「もう少しだけ、頑張れますか? 辛ければ、爪を立てても、どこか噛んでも構いませんから」
頷いて、紗香はケイトにしがみついた。その仕草に愛しさを感じながらも、腰を押し進める。
肌がぶつかって、奥まで埋まったことに、深く息を吐く。
「サヤカ様、全部入りましたよ。頑張りましたね」
微笑んだ紗香の内側が、きゅうと締まった。
暫く馴染ませるように動かずにいたが、蜜壺が刺激を欲しがってうねっている。熱い紗香の中で、ケイトの方も理性が溶けてしまわないように必死だった。
「も、うごいてぇ」
先に音を上げたのは紗香だった。やはり薬の効果は大きい。
「……っ動かしますね」
ゆっくりと、最初は揺する程度に小さく動かす。紗香の様子を見ながら、その幅を徐々に大きくしていった。繋がった部分が卑猥な水音を立てる。
「あっ、うあ、ああっ」
中身を押し上げられるたびに、紗香から声が上がる。引き抜こうとすると、離さないとばかりに肉壁が絡みついてくる。それを感じながら中を擦るように動かして、いいところを探っていく。
「ふあああん!」
入れるのは初めてだが、紗香の内側は舌や指でかなり開発されている。圧迫感にさえ慣れれば、薬の効果もあり、中で快感を拾うこともできた。
ごりごりと内側を抉られる初めての感覚に、ひっきりなしに紗香が喘ぐ。
抽挿に抵抗がないと見て、ケイトは腰をぎりぎりまで引き抜いて、奥まで一気に貫いた。
「ああああっ!」
肌が強くぶつかる音がして、剛直が奥まで届く。それを何度か繰り返せば、紗香の喉から悲鳴のような嬌声が上がる。
「ひあああ! これ、も、だめええ! あ、うあ、ああ!」
速度はそれほどではないが、深くまで突き刺さるそれに、紗香が生理的な涙を零す。
それを唇で掬って、ケイトは紗香の秘芯に手を伸ばした。
「きゃああん!?」
腰の動きは緩まないのに、弱いところをくりくりといじられて、紗香の中がきゅうきゅうと締まる。
「……っ」
強い締め付けに、ケイトの方も息が乱れる。一つ息を吐くと、抽挿の速度を上げて、秘芯を擦り続けた。
「あっあっうあ、いい、きもちい、も、きちゃ、んあっ、あっあああっ!」
大声を上げて、紗香の内側がぎゅうと締まった。絞り上げられて、ケイトの張り詰めたものもその熱を放出する。
紗香の内側に自身の欲を吐き出しながら、ケイトは繋がっているところから力が流れてくるのを感じていた。
聖女の寵愛は、無事にケイトに与えられたようだった。紗香の方にその自覚があるかはわからないが、ケイトの方は確かにそれを感じていた。
「……サヤカ様」
声をかけるが、反応がない。一瞬ひやりとしたが、脈も呼吸も問題ない。意識を失っているだけのようだった。
ほっと息を吐いて、後処理をする。穏やかな寝顔は、薬の効果が切れたことを示していた。
「……おやすみなさい」
――次に貴方が目を覚ました時には。
その時は。
自室で溜息を吐いた紗香に、茶の用意をしていたメイドが声をかけた。
「お疲れですか、聖女様」
「あ……いえ、すみません。少し考え事を」
「あまり張り詰めていると、肩が凝ってしまいますよ。どうぞ、こちらを」
「ありがとうございます」
メイドが淹れてくれた茶の香りを吸い込むと、くらりとくるほどの甘い香りがした。こんな香りの茶葉は初めてだ。なんという品種だろう。
一口飲むと、砂糖も入れていないのに甘みのある温かい液体が喉を滑り降りて、腹に落ちた。ほっとする温度に息を吐く。
「――――……?」
「どうかなさいましたか?」
「あ、いえ……美味しいです」
「それはようございました。冷めないうちにどうぞ」
勧められるままに、カップの中身を飲み干す。リラックスしたせいなのか、頭がぼうっとする。
温かいものを飲んだからか、体がぽかぽかした。ぽかぽか、というより――暑い。
熱い。くらくらする。酒でも飲んだかのようだ。もしかして、あの甘い香りは、ブランデーでも入っていたのだろうか。
真相をメイドに尋ねる前に。
紗香の意識は、そこで途切れた。
+++
「サヤカ様!」
乱暴な扉の音と共に、ケイトが紗香の部屋に入る。
そこで目にしたのは、赤い顔で息を切らせ、ベッドに横たわる紗香だった。
「……っ勝手なことを! 陛下とはまだ話が済んでいない!」
「その陛下からのご命令です。事が済むまで部屋から出すなと仰せつかっております。それでは、わたくしはこれで」
追従していたメイドは感情のない瞳で淡々と告げると、そのまま部屋を出ていった。
鍵の音がして、ケイトは悔しそうに歯噛みすると、紗香の側に寄って軽く頬を叩いた。
「サヤカ様。サヤカ様、意識はありますか」
「うー……?」
ぼんやりとしながらも一応は返事をしたことに、ケイトはほっと息を吐いた。
ひとまず体に深刻な影響がないとわかると、腹の底から怒りが込み上げた。
――聖女を相手に、薬を盛るなど。
国王との交渉は難航していた。時間がかけられないこともわかっていた。だがまさか、これほどの強硬手段に出るとは。
聖女という役割はただ相手の善意によってのみ成り立っている。紗香と接してよくわかった。聖女はただの人間の女性でしかないことに。であれば、召喚など誘拐と大差がない。生活を保障するなど、脅しだ。逆らえば命はないということに他ならない。その状態で、ろくに対価も与えず、自由を奪って、度を越えた責務を一方的に押しつけている。
本気で紗香が役割を投げ出せば、困るのは国の方だ。聖女こそが今の国の命綱だというのに、王族はまるで聖女を異端者のように扱っている。だから国のために尽くしてくれているというのに、会おうともしなかった。それを今更、強制的に言うことを聞かせたい時にだけ。
それで言うことを聞かないとなれば、当人の意志を無視して薬物を用いる。これが非道でなくてなんなのか。
国王は決して暴君などではない。少なくとも、国民にとっては良き王の部類だった。国王は聡明で、理性的で、冷静な人物だ。戦場に出ることこそないが、実のところ武勇にも優れている。緊急時には、己で剣を振るうことのできる頼もしさがあった。国政も正しく行われ、民衆からの支持もある。国王は確かに王の器で、仕えることに疑問を持つ騎士などいなかった。
ただ、それが自国のみに向けられているだけ。民を守ることの優先度が高いだけ。
聖女は守るべき民ではないから、その庇護の外側に置かれている。利用できる駒の一つでしかない。
優しいだけの王は生き残れない。国王は正しく取捨選択ができる。俯瞰して盤面を見ることができる。だからこそ、この小さな国がどこに取り込まれることもなく国のままであれる。
頭ではそれが理解できていても、仁義を重んずる騎士団から見れば、国のために尽くす聖女は自分達と同志である。同志を傷つけられれば反感も抱く。
その価値観の差が、決定的な亀裂を生んでいた。それでもケイトが騎士である限り、国王と対等に議論することは許されない。最終的には従うしかないと、わかっていた。
わかっていたのに。
「あつい……」
紗香が零した言葉に、意識が引き戻される。少しでも薬が薄れやしないかと、寝台脇に置かれた水差しを手に取り、カップに注ぐ。
「サヤカ様、水を。飲めますか?」
力の抜けた体を支えて、口元にカップを当てる。
口の端から零れた水が肌を濡らしたが、喉が動いたので、少しは飲み込めていそうだ。
「ケイト、さん」
「はい。ここにおります」
「ケイトさん」
「はい」
今にも涙が零れそうなほどに潤んだ瞳で名を呼び、紗香がケイトの首に腕を回す。縋るように頬をすり寄せ、耳元で熱い吐息が漏れた。
「好きです」
紗香の口から零れた言葉に、ケイトが辛そうに顔を歪めた。
「好き、です。あなたが、すき」
――ああ。こんなことなら。
「……私も。サヤカ様を、お慕いしております」
――彼女が勇気を振り絞ってくれたあの夜に、抱いてしまえば良かった。
肌にキスを落とすたび、紗香の体が震える。薬のせいで感覚が過敏になっているのだろう。
衣服を脱がすために布が肌に擦れる刺激すら、快感として受け取っているようだった。
「ケイトさん、キス、したい」
唇へのキスをねだる紗香を、ケイトは寂しそうに笑って制する。
「駄目ですよ」
「どしてぇ……?」
「サヤカ様にとって、唇へのキスは特別なのでしょう」
「特別、です。ケイトさんが、特別だから。ケイトさんだけ」
「……貴方が正気の時に、もう一度その言葉が聞けたら。その時はいくらでも」
正気に戻れば、薬が効いていた間のことは覚えていないだろう。これらは全て戯言だ。
それでいい。こんなことは、覚えていなくていい。
「ふあ、あん!」
「もうどろどろですね」
足の間に手をやれば、まだ触れてもいないその場所は既に蜜でしとどに濡れていた。
これならば濡らす必要はないだろうが、ケイトは紗香の足を開いて、匂い立つ場所へと口づけた。
「あっああ、ひあ!」
「……もう、儀式を行うこともなくなりますから。こうするのは、これが最後かもしれませんね」
「ああっ、それ、あん、きもちいっ」
薬で理性が溶けているからか、羞恥もなく、大きな声を上げて快楽を貪る。
乱れる紗香の姿を見ながら、ケイトは紗香の一番好きな場所を、舌でくすぐった。
悶える体を押さえて、固くなった秘芯を口に含む。たっぷりと舐め転がして、形を覚えておくように、舌で丁寧になぞる。強く吸い上げれば、そこは真珠のようにぷっくりと主張した。
可愛らしいそこを、いい子いい子と指の腹で撫でる。撫でて、擦って、秘芯を虐める指はそのままに、蜜壺にも指を差し込む。
うねる内壁が指にまとわりつく。その感触に喉を鳴らしながら、ケイトは内側を解すように指を動かした。
「ふああ! あっ、あん、ああっ」
「今日は十分に拡げる必要がありますから……指、増やしていきますね」
「ひあ、あ、んんっ」
「痛みはないですか?」
「きもち、いい、もっとぉっ」
言葉通り、もっともっととねだるように肉壁がケイトの指を締め付ける。ぐちゃぐちゃと粘度のある水音を立てながら、蜜壺を掻き回していく。核の裏側を押しながら表の秘芯も捏ね回せば、高い声を上げて紗香の体が大きく跳ねる。手を緩めずに内側のいいところを擦って、秘芯を摘まみ上げる。
「ひああ! それ、つよ、んあ! いいっ、もっと、ああん!」
紗香はすっかりケイトに翻弄され、与えられるもの全てを貪欲に受け入れていた。
何度達しても体の疼きが収まらないのか、もっともっと、と何度も口にして。
くったりと力の抜けた紗香のそこは、もうすっかりぐちゃぐちゃだった。
十分に解れたことを確認して、ケイトが上衣を脱ぎ、下も寛げて苦しそうに収まっていた自身を取り出す。
そそり立つ剛直に、ずっと蕩けていた紗香が、初めて僅かに怯えた様子を見せた。
安心させるように微笑んで、ケイトは紗香の目を片手で覆った。
「見ると怖くなりますから、直視しない方がいいですよ」
「……こわく、ないです」
「ご無理をなさらず。気にしておりませんから」
「ほんとに、こわく、ないです。ケイトさんだから」
紗香は目を覆うケイトの手を退けると、両手を伸ばしてケイトの頬を包んだ。
「わたし、ずっと、優しくしてもらってたから。あなたにされて、怖いことは、ないです。大丈夫。だいじょうぶだから……泣かないで」
――何を。
紗香の手がケイトの目元を拭って。そこでやっと、紗香の体を濡らした雫が、汗ではないことに気づいた。
瞬きもできないケイトと目を合わせて、紗香が微笑む。その瞳には、平時の穏やかさがちらついていた。
まさか。この薬を使われて、最中に正気を取り戻すはずが。
「――……また、怖がっているのは、私だけなのか」
自嘲めいた笑いに、紗香が心配そうに眉を下げた。
いつもそうだ。肝心なところで、臆病風に吹かれて。彼女の方が、ずっと強い。あの夜、彼女は既に覚悟を決めていたのに。
込み上げた感情のままに、紗香を強く抱き締める。肩口に顔を埋めたケイトをあやすように、紗香も背中に手を回す。
「必ず、勝ちます。勝って、貴方にもう一度、想いを伝えます。約束します」
「はい。待ってます」
――その時こそは。
ケイトは紗香の唇を手で覆って、その上から口づけた。
「入れますね。痛かったらおっしゃってください」
こくりと紗香が頷いたのを確認して、濡れそぼったそこに猛る自身を押しつける。ぬるぬると動かしながら、徐々に吞み込まれていく。
息を詰めて顔を歪めた紗香の髪を、ケイトが梳いた。
「痛みますか?」
「い、え……。でも、なんか、くるし……」
薬で麻痺しているのか、痛みは感じていないようだった。それでも圧迫感は拭えないのだろう。呼吸がしにくそうな紗香の頭を宥めるように撫でる。
「もう少しだけ、頑張れますか? 辛ければ、爪を立てても、どこか噛んでも構いませんから」
頷いて、紗香はケイトにしがみついた。その仕草に愛しさを感じながらも、腰を押し進める。
肌がぶつかって、奥まで埋まったことに、深く息を吐く。
「サヤカ様、全部入りましたよ。頑張りましたね」
微笑んだ紗香の内側が、きゅうと締まった。
暫く馴染ませるように動かずにいたが、蜜壺が刺激を欲しがってうねっている。熱い紗香の中で、ケイトの方も理性が溶けてしまわないように必死だった。
「も、うごいてぇ」
先に音を上げたのは紗香だった。やはり薬の効果は大きい。
「……っ動かしますね」
ゆっくりと、最初は揺する程度に小さく動かす。紗香の様子を見ながら、その幅を徐々に大きくしていった。繋がった部分が卑猥な水音を立てる。
「あっ、うあ、ああっ」
中身を押し上げられるたびに、紗香から声が上がる。引き抜こうとすると、離さないとばかりに肉壁が絡みついてくる。それを感じながら中を擦るように動かして、いいところを探っていく。
「ふあああん!」
入れるのは初めてだが、紗香の内側は舌や指でかなり開発されている。圧迫感にさえ慣れれば、薬の効果もあり、中で快感を拾うこともできた。
ごりごりと内側を抉られる初めての感覚に、ひっきりなしに紗香が喘ぐ。
抽挿に抵抗がないと見て、ケイトは腰をぎりぎりまで引き抜いて、奥まで一気に貫いた。
「ああああっ!」
肌が強くぶつかる音がして、剛直が奥まで届く。それを何度か繰り返せば、紗香の喉から悲鳴のような嬌声が上がる。
「ひあああ! これ、も、だめええ! あ、うあ、ああ!」
速度はそれほどではないが、深くまで突き刺さるそれに、紗香が生理的な涙を零す。
それを唇で掬って、ケイトは紗香の秘芯に手を伸ばした。
「きゃああん!?」
腰の動きは緩まないのに、弱いところをくりくりといじられて、紗香の中がきゅうきゅうと締まる。
「……っ」
強い締め付けに、ケイトの方も息が乱れる。一つ息を吐くと、抽挿の速度を上げて、秘芯を擦り続けた。
「あっあっうあ、いい、きもちい、も、きちゃ、んあっ、あっあああっ!」
大声を上げて、紗香の内側がぎゅうと締まった。絞り上げられて、ケイトの張り詰めたものもその熱を放出する。
紗香の内側に自身の欲を吐き出しながら、ケイトは繋がっているところから力が流れてくるのを感じていた。
聖女の寵愛は、無事にケイトに与えられたようだった。紗香の方にその自覚があるかはわからないが、ケイトの方は確かにそれを感じていた。
「……サヤカ様」
声をかけるが、反応がない。一瞬ひやりとしたが、脈も呼吸も問題ない。意識を失っているだけのようだった。
ほっと息を吐いて、後処理をする。穏やかな寝顔は、薬の効果が切れたことを示していた。
「……おやすみなさい」
――次に貴方が目を覚ました時には。
その時は。
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ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。
(まさか。もしかして、心の声が聞こえている?)
リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる?
二人の恋の結末はどうなっちゃうの?!
心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。
✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。
✳︎小説家になろうにも投稿しています♪
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