【R18】聖女のお役目【完結済】

ワシ蔵

文字の大きさ
上 下
11 / 23

第11話:レナードの願い

しおりを挟む
 聖女の役目を永続的に続けていくことは無理だ。そう悟った紗香は、根本的な解決方法はないのだろうかと考え始めた。
 そんな方法があるのなら騎士団がとっくに実行しているだろうが、何か聖女でなければできないことはないのだろうか。
 午前の勉強でも、聖女の役目や騎士団の成り立ちについて、表面的なことは最初に一通り学んでいる。しかしその後は一般的な淑女が学ぶのと同じような礼儀作法や歴史ばかりで、あまり魔物や戦争については扱わない。女性に軍事や政治の話は不要という方針なのかもしれない。

 こちらから質問をしても、良い答えは得られないだろう。
 しかし。講師に聞けないのなら、その道の専門家に聞けば良いのだ。


「それで私に?」

 目を丸くするレナードに、紗香は素直に頷いた。

「団の活動についてなら、団長にお聞きするのが良いかと思いますが」
「うーん……ケイトさんは、わたしを気遣いすぎて、わたしに不利になるような内容は省く気がするんですよね。その点レナードさんは、以前聖女の伝承についても教えてくれたので。騎士団も長いみたいだし、詳しいかなって」
「なるほど。それでお呼びになったのですね。てっきり逢瀬のお誘いかと」
「か、からかわないでくださいっ!」

 顔を赤らめた紗香に、レナードは穏やかに笑った。相変わらず冗談がわかりにくい人だ。場所を紗香の自室でなく図書室にしたことで、何となく察していただろうに。

「いいですよ。何から聞きたいですか?」
「えっと……そもそも、魔物ってなんなんですか? 被害があると聞いていましたが、先日城下に降りた時には、あまり感じませんでした」
「魔物は害獣と似たようなものですね。獣と違うのは、人間への攻撃性が高いこと、しゅつがいから生まれるのではなく、どこからともなく湧いて出ることです。そのため、根絶が難しい。ほとんどは森にいますが、たまに街の近くにも下りてきます。この国には初代聖女の張られた結界がありますので、大量に押し寄せることはまずありません。しかし、稀に結界の隙間から入り込んでしまうこともあり、国内で発見された場合は真っ先に駆除します」
「なら、国から出なければほとんど被害はないんですか?」
「そうですね。しかし、この小さな国で、外交を全く持たないというのは無理です。せめて街道くらいは安全を確保しないと」
「ああ……そうですよね……」

 結界とやらがあるなら思ったほど深刻ではないのでは、と一瞬期待したが、そう簡単な話でもないようだ。それに、結界も綻びが出る、ということは、永久に続くものではないのかもしれない。

「その……湧いてくる、というのは、どういう現象なんですか? 巣がわからないとか、無性生殖とか?」

 一匹見るとなんとやら、の黒い悪魔のようだ。毒餌とかで根絶できないのだろうか。

「そのあたりは一切が謎です。いつの間にか、いるんですよ。後を追っても姿を消してしまい、毒餌には食いつかない。捕らえて解剖しようにも、死骸は時間が経つと溶けてしまうんです」
「うえ……」
「討伐隊の任務の一環として、どこかに巣や拠点があるのではないかと、探索活動も行っているのですが……今のところ成果は芳しくないですね」

 やはり、騎士団はできる限りのことをしている。悪戯に紗香が首を突っ込んでも、事態が改善することはないだろう。

「なるほど……。わたしにできることは、騎士さんの生存率を上げることくらい……ってことですかね……」

 落胆した様子の紗香を、レナードがじっと見る。

「聖女様は、それ以上の何かをお望みで?」
「望み……というか。今のままだと、堂々巡りでしょう。死傷者は減るかもしれませんが、根本的な解決になりません。わたしもいつまで聖女の力があるのかわかりませんし、できることがあるならやってみようと思いまして」

 探るようなレナードの視線に、心がざわざわする。いったい何だというのだろうか。

「……ありますよ。聖女様にしかできないことが」
「えっ!?」

 なんだそんなのがあるなら早く言ってくれ。
 そんな軽口が叩ける空気ではなく、紗香は固唾を呑んだ。

「我々では、探索しても何も見つけられませんでしたが。聖女様なら、魔物の発生源を辿れるかもしれません」
「そんな能力が!?」
「記録には、あります。しかし……」

 言い淀むレナードに先を促すと、彼は重い口を開いた。

「かつてそれを試みた聖女は、魔物に殺されました」

 がつりと、殴られたような衝撃が走る。
 殺された、という言葉が、どこか遠い言語のようだった。
 殺された? 誰が? 聖女が?

 ――わたしも?

「大丈夫ですか、聖女様」

 レナードの声に、はっと意識が戻る。
 青い顔をしているのだろう、心配そうに眉を下げたレナードの表情が目に入った。

「だい、じょうぶ……です。その、殺されたというのは、何故」
「当然ではありますが、聖女本人に戦闘能力はありません。当時の聖女は箱入りだったようで、森での動きもままならず……護衛の騎士が彼女を守りきれずに、魔物に襲われて命を落としました」
「箱入りの聖女を、ろくに対策も取らずに、無理やり魔物のいる森へ?」
「騎士団の不手際については、返す言葉もありません。ただ、あくまで記録を見る限りでは、聖女に無理に探索を依頼したわけではなく、聖女の方から強く要望があったようです。当時の聖女は、役目に対して大変意欲的だったと。しかしその一件を受け、聖女は討伐の現場に出さないように規則が追加されました」

 意識して長く息を吐く。
 なるほど。いわゆる厄介な姫ムーブをかましてしまったのだろう。
 大して役にも立たないのに、私にも何かできるはずだわ! とかいって無駄にやる気を出し、周囲の静止も聞かず、結局仕方なしに周りがお膳立てしてあれこれやらせてあげた結果、盛大に足を引っ張りながらも本人はご満悦、というやつだ。
 この話での失敗は、足手まとい度が高すぎて、ご満悦どころか周囲に大ダメージを与えたところだろう。

 ちなみにこの手の姫は現代にも存在する。何とか姫にもできることをご用意して差し上げないと、虐められているとか言い出すので取り扱い注意案件である。どこの世界でも思うことはただ一つ。

 大人しくしてろ。

 さてここで紗香のスペックを振り返るが、彼女はいたって普通のOLである。
 実は格闘技が得意であるとか、ソロキャンパーで自然に詳しいとか、そんな特異事項もない。
 つまりただの一般人。足手まとい。護衛対象。
 数年かけて訓練すれば、介助付きで同行可能なくらいには育つかもしれないが、少なくとも今すぐにできることではない。そもそもこの国の風潮で女性に戦闘訓練をしてくれるかどうか。
 従って、ここで「それでもわたしやります!」などという姫ムーブはかまさないのである。デッドエンドが見えている。

「わたしも、足手まといにしかならないでしょうし……。他の方法を考えるしかないですね」

 溜息と共にそう告げたが、レナードは何かを言いたげな視線を向けている。
 まさか。

「そう……ですよね。聖女様を危険な目に遭わせるわけには、参りませんね」

 そう言って寂しそうに目を伏せた。
 なんだそのしおらしい反応は。やめてくれ。
 冷や汗をかきながらも、紗香の方から迂闊なことは言えないと黙っていると、葛藤するような間を置いて、覚悟を決めた表情でレナードが紗香を見据えた。

「聖女様。無理を承知でお願いします。探索任務に、同行してはいただけないでしょうか」

 ピシャーン、と雷が落ちるカットが入った。気がする。
 まさか、本気でやらせようというのか。姫ムーブを。

「先ほど、規則で禁止されていると言ってませんでしたか?」
「はい。しかし、古い規則ですから。この国も、随分と疲弊しています。聖女様の同意があれば、恐らく通るでしょう」
「……なんだか、珍しいですね。レナードさんが、そんな風に強く要求を口にするのは」

 いかにも真面目に見える彼が、規則破りを躊躇なく口にすることに驚き、思わずそう零した。
 騎士団なら、当然魔物の根絶は悲願であるはずだ。しかし、それだけではないように見える。
 図星だったのか、レナードが目に見えて動揺した。やがて紗香に苦笑して見せる。

「冷静さを欠いてしまい、失礼いたしました。個人的な要求を願い出るなら、納得いただける説明が必要ですね」
「個人的……?」

 魔物討伐は国全体の問題であるはずだ。だというのに、この口ぶり。やはり何かあるのだろう。
 焦燥を抑え、レナードが口を開くのを待つ。

「私の妻は、魔物に殺されています」

 紗香が息を呑む。言葉が出ない。
 魔物被害。人間への攻撃性。
 あり得る話だ。騎士ではなくとも。民間人にも。死傷者が、出ることは。
 ただそれを、初めて実感した。

「当時の私は、騎士団長でした。多忙な私を、妻はよく支えてくれました。騎士団に顔を出すこともあり、私達は仲の良い夫婦として、それなりに知られていたのです」

 騎士団長。口を挟まないよう声には出さずに、紗香は目を瞠った。
 道理で騎士団のことに詳しい。ただ古参というわけではなかったのだ。
 しかし、今はケイトが団長の任についている。レナードが健在であるのに団長が交代したということは、レナードが降格するに至る出来事があったのだ。

「妻は優しく、勇敢な人物でした。結界をすり抜け国内に入り込んだ魔物に対し、民間人の避難誘導を先導していたそうです。しかし、騎士団が到着した時には、妻は既に……」

 当時のことが思い返されたのか、レナードの眉間に皺が寄る。それを紗香は、黙って見ているしかなかった。

「妻のおかげで、他に死者は出ませんでした。しかし、私は許せなかった。国内への出現は稀だからと、その場凌ぎの対処ばかり行っていたことを。何故もっと早くに奴らを根絶やしにしなかったのか。後悔ばかりが頭を占めて、傍からわかるほどに憔悴し、無力感はやがて復讐心に変わりました。団長の立場も忘れ、無茶な任務を命令したり、自身の命も顧みないような自棄やけを起こした。そんな私を叩きのめしたのが、当時団長補佐だったケイトです」

 今のレナードからは考えられない姿に呆然と話を聞いていると、突然慣れた名前が飛び出した。レナードがケイトを呼び捨てにするのを初めて聞いた。親しげに見えていたが、二人はその頃からの付き合いだったのか。

「仮にも騎士団長でしたから、腕には自信がありました。しかし、ケイトに一騎打ちを申し込まれ、私はあっさり負けた。自分の剣が、目が、どれほど濁っていたか、よくわかりました。ケイトが早めに私を叩いてくれたおかげで、私は取り返しのつかないほどの間違いは犯さずに済んだ。一騎打ちで敗北すれば、団長の任は交代するのが決まりです。そのまま騎士を辞任するつもりでしたが、ケイトから、自分を支えてほしいと頼まれまして。妻を亡くし、一人では死にかねない私に、生きる意味を与えてくれたのでしょう。彼の優しさに甘えて、私は今も騎士団で、団長補佐として働いています」
「……ケイトさんらしいです」

 ケイトが団長の立場にあるのは、立身出世のためではない。レナードのためなのだ。人望が厚いのも頷ける。レナードの件がなくとも、いずれは望まれて団長となったかもしれない。
 自分のためではなく、人のために動ける人だから。そういう人だから、レナードもかつての部下であっても、礼儀を尽くしているのだろう。

「もうあの頃のように、復讐心に目を曇らせたりはしません。それでも、妻のことは忘れられない。今のままでは、新たな犠牲者も出る。できることなら、私の代で終わりにしたいのです。聖女様の身の安全には、最大限の対策をさせていただきます。ですから、どうか。お力を貸していただけないでしょうか」

 真摯に頭を下げるレナードに、紗香は軽く息を吐いた。
 こんな風に頼まれたら、断れない。
 元々、紗香は自分にできることが知りたくて、レナードに話を聞いたのだ。願ったり叶ったりだろう。

「わたしでお役に立てるのなら、喜んで」
「……! 本当ですか!」

 ぱっと目を輝かせたレナードに、紗香は苦笑した。

「ご期待に沿えるかはわかりませんので、あまり期待しすぎずに」
「いえ、試していただけるだけでも十分です。ありがとうございます」

 言い出した手前、姫ムーブにならないように、紗香の方も最大限の注意を払わなければならないだろう。
 そう考えると胃が痛いが、少なくとも一歩前進だ。

「行くとなると、ケイトさんにも相談しないといけませんね」

 何なら付いてきてほしい。何せ騎士団長だ。先日のアルフレッドとの外出には来なかったが、さすがに魔物探索となれば最強戦力にいてほしい。
 しかしレナードは、言葉に詰まったように口を閉ざした。首を傾げる紗香に、言いにくそうに告げる。

「団長は、恐らく、反対されると思います。なので、聖女様にも、説得をお手伝いいただけたらと……」

 マジかい。
 心の中でだけつっこむ。さすがにあれだけの話を聞いて、軽口は叩けない。
 呼称も業務モードに戻っている。先ほどまでの話は本当にレナードの独断で、騎士団の姿勢として考えると望ましくないのだろう。
 説得を手伝うことは吝かではないが、内容から考えるにレナードの方からケイトに強くは言えないだろう。ということは、紗香が主体となってケイトに頼む必要がある。

 満足にこなせる能力がないのに、無茶なことをしたがる。それで世話してくれている人を困らせる。つまり。

 ――姫ムーブ……。

 結局そこから逃げられないのか、と紗香は内心で大きく溜息を吐いた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

巨乳令嬢は男装して騎士団に入隊するけど、何故か騎士団長に目をつけられた

狭山雪菜
恋愛
ラクマ王国は昔から貴族以上の18歳から20歳までの子息に騎士団に短期入団する事を義務付けている いつしか時の流れが次第に短期入団を終わらせれば、成人とみなされる事に変わっていった そんなことで、我がサハラ男爵家も例外ではなく長男のマルキ・サハラも騎士団に入団する日が近づきみんな浮き立っていた しかし、入団前日になり置き手紙ひとつ残し姿を消した長男に男爵家当主は苦悩の末、苦肉の策を家族に伝え他言無用で使用人にも箝口令を敷いた 当日入団したのは、男装した年子の妹、ハルキ・サハラだった この作品は「小説家になろう」にも掲載しております。

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる

ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。 幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。 幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。 関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~

恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん) は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。 しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!? (もしかして、私、転生してる!!?) そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!! そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜

ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉 転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!? のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました…… イケメン山盛りの逆ハーです 前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります 小説家になろう、カクヨムに転載しています

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!

楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。 (リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……) 遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──! (かわいい、好きです、愛してます) (誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?) 二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない! ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。 (まさか。もしかして、心の声が聞こえている?) リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる? 二人の恋の結末はどうなっちゃうの?! 心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。 ✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。 ✳︎小説家になろうにも投稿しています♪

執着系皇子に捕まってる場合じゃないんです!聖女はシークレットベビーをこっそり子育て中

鶴れり
恋愛
◆シークレットベビーを守りたい聖女×絶対に逃さない執着強めな皇子◆ ビアト帝国の九人目の聖女クララは、虐げられながらも懸命に聖女として務めを果たしていた。 濡れ衣を着せられ、罪人にさせられたクララの前に現れたのは、初恋の第二皇子ライオネル殿下。 執拗に求めてくる殿下に、憧れと恋心を抱いていたクララは体を繋げてしまう。執着心むき出しの包囲網から何とか逃げることに成功したけれど、赤ちゃんを身ごもっていることに気づく。 しかし聖女と皇族が結ばれることはないため、極秘出産をすることに……。 六年後。五歳になった愛息子とクララは、隣国へ逃亡することを決意する。しかしライオネルが追ってきて逃げられなくて──?! 何故か異様に執着してくるライオネルに、子どもの存在を隠しながら必死に攻防戦を繰り広げる聖女クララの物語──。 【第17回恋愛小説大賞 奨励賞に選んでいただきました。ありがとうございます!】

腹黒宰相との白い結婚

恋愛
大嫌いな腹黒宰相ロイドと結婚する羽目になったランメリアは、条件をつきつけた――これは白い結婚であること。代わりに側妻を娶るも愛人を作るも好きにすればいい。そう決めたはずだったのだが、なぜか、周囲が全力で溝を埋めてくる。

処理中です...