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第9話:アルフレッドと恋バナ
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「あんっ! あ、それ、気持ちいい、もっとぉ……っ」
ランドルとの密会で、ある種ふっきれた紗香は、聖女としての務めに楽しみを見出していた。
どうせやることは変わらない。それなら、楽しんだ方がお互いのためだろう。ここでは紗香の態度に文句を言う者などいないし、どれだけ淫乱になったところで、眉を顰める女もいないのだ。
ここで普通の感覚を持ち続けることはストレスにしかならない。騎士達は皆紗香を愛しい人のように丁寧に扱ってくれる。なら紗香の方も、恋人のように受け入れればいい。限られた時間、限られた場所でのみ行われる、疑似恋愛の一つだ。
快楽は悪ではない。気持ちがいいことの何が悪い。それを望んだのは自分ではない、周囲の方だ。
「お疲れ様でした、サヤカ様」
いつものように、護衛のケイトが声をかける。最後の騎士の相手が終わったので、そっと紗香を祭壇から降ろした。
「歩けますか?」
「はい」
答えたものの、少しだけよろめいた紗香に、ケイトが手を貸す。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
にっこりと微笑んで、紗香はケイトのエスコートを受けた。
ケイトの腕に寄りかかりながら、部屋までの道のりを歩く。
「サヤカ様は、随分とお務めに慣れましたね」
「そう見えますか?」
「ええ。ただ、その……」
言い淀んだケイトに、紗香は首を傾げて先を促す。
「……ご無理を、なさってはいませんか?」
心配そうな表情のケイトに、紗香は目を瞬いた。
何を言い出すのかと思えば。無理をしていたかどうかなら、最初の方がずっと無理をしていた。今は気楽なものだ。自分を堰き止めていたものを壊してしまえば、後はもう流されるまま受け入れるまま。
気持ちの良いことだけしていれば、衣食住も快適な生活も保障されている。元の世界の仕事よりも割がいいくらいだ。
「無理するようなことは何もありませんよ。大丈夫です」
「そう……ですか」
笑顔で答えたというのに、ケイトの表情は晴れなかった。
+++
「聖女様、おはようございます!」
「え……アルフレッドさん?」
初めて日中護衛を担当するアルフレッドに、紗香は目を丸くした。
日中の護衛は紗香の面倒を見つつ警護をしなくてはならないし、重要な役割として儀式の最中に他の騎士を止める仕事がある。そのためケイトがつけない時には、他の騎士を止められるだけの力量を持つ、熟練の騎士が担当していた。
アルフレッドには申し訳ないが、彼は新人の部類だったと記憶している。采配はケイトが行なっているはずだが、どういう意図だろうか。
その困惑が顔に出てしまったのだろう、アルフレッドは朗らかに笑って理由を告げた。
「先輩達が気をきかせてくれたんです。俺、前回ケイト団長に手伝ってもらっちゃったじゃないですか」
ケイトとアルフレッドの二人がかりで責められた時の記憶が蘇って、紗香が顔を赤らめる。
それに気づいているのかいないのか、アルフレッドは言葉を続けた。
「それでどうすればもっと上手くできるか、先輩達に相談したんです。そしたら、お前はとりあえずよく見て勉強しろ! ってことで、先輩達がお手本を見せてくれると」
「なるほど……?」
理由はわかったが、それは大丈夫なのだろうか。先輩とやらにうまくのせられたのではないといいが。
「当番の騎士は団長が厳選して、とても間違いを起こすような人達ではありませんから! 俺の出番はありませんよ」
「ご、ごめんなさい。アルフレッドさんを疑ったわけでは」
「いえ、普段は団長がついてますもんね。それに比べたら、俺が頼りないのは事実ですので」
気にしていないような素振りだが、アルフレッドを半人前扱いしてしまったことに変わりはない。申し訳ない気持ちで、紗香は彼の手を取った。
「今日は一日、あなたがわたしの騎士です。頼りにしてますね、アルフレッドさん」
「……っ任せてください!」
頬を紅潮させ、満面の笑みを浮かべたアルフレッドに、胸の奥がきゅーんと疼き、口の端がニヤけてくる。
この感情は覚えがある。萌えだ。今すぐ頭を抱えて髪をわしゃわしゃと掻き混ぜたい。およそ成人男性にしていい行為ではないが、背後に完全に柴犬が見えていた。
紗香はぶんぶんと頭を振ってその幻覚を消す。その様子に、アルフレッドは不思議そうに首を傾げるのだった。
午前中の座学は、アルフレッドのおかげで楽しいものとなった。普段は一方的に講師の教えを受けている紗香だが、どうにもアルフレッドは勉強が苦手らしい。ついでとばかりに講師がアルフレッドにも話題を振るものだから、紗香は久々に誰かと一緒に勉強をする楽しさを味わっていた。
教わったはずのことを忘れてしまい、それをアルフレッドも答えられなかったので、二人で講師に怒られたのはいい思い出だ。
思い出し笑いをしながらとる昼食は、普段よりも美味しい気がした。
そんな楽しい時間はあっという間に過ぎ、午後の務めのために聖堂に移動する。
背後に控えたアルフレッドは、心なしか緊張している様子だった。それを微笑ましい思いで眺めて、声をかける。
「あんまり勉強だとか、気にしないでくださいね。側にいてくれれば、それで十分です」
「ありがとうございます」
苦笑した彼の顔は固かった。しまった、励ましは逆効果だっただろうか。
何も言わずに全てを任せた方が、彼への信頼は表せるだろう。しかし、なんというか、色々世話を焼いたりお節介をしたくなる空気があるのだ。
それはアルフレッドの魅力であるとも思うのだが、その相手が紗香であることが問題なのだろう。先輩達に可愛がられるのとはわけが違う。護衛対象に気を遣われたのでは彼の面目も丸潰れというものである。
フォローすればしただけ墓穴を掘る。それ以上余計なことを言わないよう、紗香は口を噤んだ。
最初の騎士が聖堂内に入り、紗香の前で膝をつく。お決まりの口上を聞いて、紗香はためらいなく足を開く。
「あ……っ、はぁ……んん」
与えられる快楽を、抵抗なく受け入れる。そうすればすぐに蜜がとろとろと溢れ、儀式はスムーズに進む。
ふいに、アルフレッドの視線を感じた。澄んだ瞳に、ぎくりと体が固まる。
凝視というほどではない。不快な視線でもない。だというのに、急に恥ずかしい、という感情が込み上げた。
それは見られている、という行為そのものに対する羞恥ではない。アルフレッドに見られていることが、何故だか恥ずかしかった。
彼の純粋さが。紗香すらわからない心の内を、見透かしている気がして。
――気のせいだ。
自分がすっかり汚れてしまったから、彼が眩しく見えるだけだ。元々、お綺麗な人間ではない。長く社会生活をこなし、酸いも甘いも味わってきた。
そもそもが、聖女などと呼ばれるような、清らかな存在ではないのだ。
今日のノルマを終え、疲労から息を吐く。まだ体の中に燻るものはあるが、この熱は時間が経てば引いていく。
「お疲れ様でした、聖女様」
「アルフレッドさん。何か得るものはありましたか?」
「ええ。先輩達はさすが、女性の扱いが手慣れていますね」
茶目っ気のある言い方に、紗香もくすりと笑みを零す。
「なんなら、今から実践しますか?」
ドレスの裾を持ち上げた紗香に、アルフレッドが顔を赤らめる。
今の今まで、騎士達に喘がされていた紗香を見ていたというのに。自分に向けられるとなると、こういう反応をするところが可愛らしい。
「お戯れを。人目のないところで、聖女様に手を出すわけにはいきません」
「わたしがいいと言っても?」
「だめです」
はっきりと区切って告げられた言葉に、生真面目だなぁと紗香は感嘆した。どこぞの遊び人とは大違いである。
「それに……」
「それに?」
「あ、いや」
零した言葉を拾われて、暫くもごもごと口籠っていたアルフレッドだったが、やがて観念したように白状した。
「儀式中はともかく、個人的にとなると、やはり彼女に悪いので」
「か」
――の、じょ!!
残りの二文字は飲み込んだ紗香だったが、開いた口を閉じるところまでは気が回らなかった。
その表情をどう取ったのか、アルフレッドは叱られた犬のように眉を下げて謝った。
「すみません、先輩達から、聖女様の前で彼女の話題は出さない方が良いと言われていたのに」
「あー……」
なるほど。そういう気の遣い方をされていたのか。
確かに、女性に性的な奉仕をしようというのに、他の女の影を匂わせるのはマナー違反だろう。
元々騎士達にも恋人や伴侶がいるだろうという想定はしていたが、実際に恋人がいるから悪い、などという言い方をされてしまうと、まるで自分が彼氏を寝取ろうとしている悪女のように思えてしまい罪悪感が刺激される。
しかし、それとは別に、この世界の恋愛事情を聞いておきたいという気持ちもある。今のところ、きちんと話が聞けたのはランドルだけだ。こういう俗っぽい話は、講義では扱わないだろう。気軽に聞ける人間から情報を得ておきたい。
「いえ、構いませんよ。むしろ興味あります。その彼女さんとは、どこで知り合ったんですか?」
「知り合った、というか、彼女は婚約者で」
「それって、最初から決められてるっていう結婚相手ですか?」
「はい」
照れたように笑うアルフレッドには、彼女への愛情が見える。仕方なく付き合っているようには見えない。
ひどいシステムだとばかり思っていたが、そうではないのだろうか。
「騎士になれば、相手は自由に選べると聞きましたけど……アルフレッドさんは、元々彼女さんのことが好きだったんですか?」
「うーん……? 好きだった、というか、彼女と将来結婚する、と聞かされたので。俺はこの人を好きになるんだな、と」
「え。言われたから好きになったんですか?」
「あ、いや、好きになったというか、好きになる努力をして、好かれる努力をして、結果お互い好意を持った、という感じですかね」
眩しい。真っ直ぐすぎる。
決められた結婚相手に疑問や反発を挟むことなく、そのまま好意に繋がるとは。
「別の相手を探そうと思ったことはないんですか?」
「ないですね。中には、結婚は契約と割り切って、それまでの間別の恋人を作る人もいるみたいですけど。結婚って、その先ずっと一緒にいるわけじゃないですか。自分の人生を預ける相手ですから。だったら、ちゃんとお互い好意があった方が、毎日楽しいかなって」
ここまでくると純粋というか、いっそ達観と言ってもいいほどなのでは。なんという見合い向きの思考。
「それに、俺が放棄してしまうと、彼女の身が浮いてしまいますから。騎士になる時にも、婚約は破棄しないと約束してきました」
「そういえば、相手がいなくなった場合って……」
「再選定されます。けれど、国民は全員が物心つく前に相手が決まっていますから、再選定には時間がかかります。女性の場合は特にその時間がシビアですので、騎士になったからといって別の相手を選ぶ方が稀ですね」
――と、いうことは。
「ちなみにケイト団長はいませんよ」
「ふえっ!?」
脳裏に浮かんだ顔を言い当てられて、思わず奇妙な声が上がる。
「相手の女性が若くて美しい場合は、貴族に嫁いだり、再選定が有利になる場合が多いので、むしろ相手のためにと早めに放棄する人はいます。騎士はやはり、途中で殉職する可能性がありますから。団長はこのケースですね」
「そう、なんですね」
どっちだ。紗香がケイトを気にしていると思ってこの話題を出したのか、権利を放棄したケースの説明として例に出したのか。
追及すると墓穴を掘る気がしたので、そのままスルーすることにした。
「相手が決まってるって、わたしの感覚からすると大変なことだと思ってたんですけど。アルフレッドさんみたいな人が相手なら、きっと幸せになれますね。なんだか安心しました」
「そう言ってもらえると、自信になります」
はにかむアルフレッドに、紗香も自然と笑みが浮かぶ。
本当に、彼女が羨ましいと思った。
「でもアルフレッドさん、そんなに長く付き合っている彼女がいるなら、むしろ女性の扱いは誰よりも上手いのでは?」
「そ、それは」
焦ったように顔を赤くしたアルフレッドに、紗香はぴんときた。
「彼女とは、まだ清いお付き合いを?」
「……そう、です」
耳まで赤くした姿を可愛いな、と眺めながら、アルフレッドの態度に納得する。先ほどの彼女に悪い、という発言からして、移り気を起こすことも一切なく、彼女一筋で来たのだろう。
「なるほど……それは……なんというか、本当に彼女さんには悪いことを」
「いえ、そんな。聖女様が気になさることではないです。むしろ、彼女とする時の予行練習だと思えば」
「それ絶っ対、彼女さんに言っちゃだめですよ」
「え」
「というか、わたしの存在を僅かでも匂わせたらだめですからね。聖女? そんなのそういえばいるね? 俺は会ったことないけどね? くらいのはったりきかせてくださいね」
「は、はぁ……?」
怖い顔で詰め寄る紗香に、アルフレッドは疑問符を浮かべながらも気迫に押されて頷いた。
素直で純粋なところはアルフレッドの長所だが、それも行き過ぎれば人を傷つける。恋愛は、上手く嘘がつけなければ。
聖女なんてものの存在を、恋人が快く思うわけがないのだ。絶対に話題に上げないでほしい。その内刺されそう。
溜息を一つ吐いて、紗香はアルフレッドに笑顔を向けた。
「こっちに来てから恋バナなんて全然してなかったので、楽しいです。聞かせてくれてありがとうございます」
「コイバナ?」
「恋愛のお喋りです。普通は同性とするんでしょうけど、こっちに女の子の友達いないので」
「なんだ。そんなことならいくらでも。俺も、女性の知り合いは多くないので。女性視点でお話が聞けると助かります」
そこまで言って、何かを思い出したようにアルフレッドが声を上げた。
「そういえば、今度、彼女の誕生日なんです」
「おお、おめでとうございます」
「それで、城下まで贈り物を見に行くんですけど。良ければ聖女様、選ぶの手伝ってくれませんか?」
「えっ!?」
大きく動揺した紗香に、アルフレッドは気にした様子もなく続ける。
「毎年あげてますけど、たまには変わったものあげたくて。聖女様に選んでいただけたら、いつもと違うものが選べる気がします」
「で、でも、彼女さんのことはアルフレッドさんが一番よくわかっているのでは。わたしは彼女さんのこと知りませんし」
「大丈夫ですよ。彼女の好みはお伝えしますし、聖女様の感性で選んでいただければ」
「そんな責任重大な……! というか、第一、わたし城から出られるんですか?」
紗香は現状を軟禁状態だと捉えている。城の外に出る、などという話は、今まで一度も出たことがなかった。つまり、不可能だと思っている。
「そこは俺がかけあってみます。聖女様は、この国を守っていらっしゃるのですから。ご自身が守ったものを見に行くのに、遠慮なんかいりませんよ」
城の外に出られるかもしれない。期待に弾む胸を、理性で押さえる。もし、だめだったら。期待しすぎたら、辛いのは自分だ。アルフレッドにも迷惑をかける。
「ありがとうございます。あの、だめだったら、無理しないでくださいね。本当に、ちょっと聞いてみるだけで」
「大丈夫です! あなたの騎士にお任せください!」
力強く胸を叩いたアルフレッドに、紗香は涙の滲む目を、眩しそうに細めた。
ランドルとの密会で、ある種ふっきれた紗香は、聖女としての務めに楽しみを見出していた。
どうせやることは変わらない。それなら、楽しんだ方がお互いのためだろう。ここでは紗香の態度に文句を言う者などいないし、どれだけ淫乱になったところで、眉を顰める女もいないのだ。
ここで普通の感覚を持ち続けることはストレスにしかならない。騎士達は皆紗香を愛しい人のように丁寧に扱ってくれる。なら紗香の方も、恋人のように受け入れればいい。限られた時間、限られた場所でのみ行われる、疑似恋愛の一つだ。
快楽は悪ではない。気持ちがいいことの何が悪い。それを望んだのは自分ではない、周囲の方だ。
「お疲れ様でした、サヤカ様」
いつものように、護衛のケイトが声をかける。最後の騎士の相手が終わったので、そっと紗香を祭壇から降ろした。
「歩けますか?」
「はい」
答えたものの、少しだけよろめいた紗香に、ケイトが手を貸す。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
にっこりと微笑んで、紗香はケイトのエスコートを受けた。
ケイトの腕に寄りかかりながら、部屋までの道のりを歩く。
「サヤカ様は、随分とお務めに慣れましたね」
「そう見えますか?」
「ええ。ただ、その……」
言い淀んだケイトに、紗香は首を傾げて先を促す。
「……ご無理を、なさってはいませんか?」
心配そうな表情のケイトに、紗香は目を瞬いた。
何を言い出すのかと思えば。無理をしていたかどうかなら、最初の方がずっと無理をしていた。今は気楽なものだ。自分を堰き止めていたものを壊してしまえば、後はもう流されるまま受け入れるまま。
気持ちの良いことだけしていれば、衣食住も快適な生活も保障されている。元の世界の仕事よりも割がいいくらいだ。
「無理するようなことは何もありませんよ。大丈夫です」
「そう……ですか」
笑顔で答えたというのに、ケイトの表情は晴れなかった。
+++
「聖女様、おはようございます!」
「え……アルフレッドさん?」
初めて日中護衛を担当するアルフレッドに、紗香は目を丸くした。
日中の護衛は紗香の面倒を見つつ警護をしなくてはならないし、重要な役割として儀式の最中に他の騎士を止める仕事がある。そのためケイトがつけない時には、他の騎士を止められるだけの力量を持つ、熟練の騎士が担当していた。
アルフレッドには申し訳ないが、彼は新人の部類だったと記憶している。采配はケイトが行なっているはずだが、どういう意図だろうか。
その困惑が顔に出てしまったのだろう、アルフレッドは朗らかに笑って理由を告げた。
「先輩達が気をきかせてくれたんです。俺、前回ケイト団長に手伝ってもらっちゃったじゃないですか」
ケイトとアルフレッドの二人がかりで責められた時の記憶が蘇って、紗香が顔を赤らめる。
それに気づいているのかいないのか、アルフレッドは言葉を続けた。
「それでどうすればもっと上手くできるか、先輩達に相談したんです。そしたら、お前はとりあえずよく見て勉強しろ! ってことで、先輩達がお手本を見せてくれると」
「なるほど……?」
理由はわかったが、それは大丈夫なのだろうか。先輩とやらにうまくのせられたのではないといいが。
「当番の騎士は団長が厳選して、とても間違いを起こすような人達ではありませんから! 俺の出番はありませんよ」
「ご、ごめんなさい。アルフレッドさんを疑ったわけでは」
「いえ、普段は団長がついてますもんね。それに比べたら、俺が頼りないのは事実ですので」
気にしていないような素振りだが、アルフレッドを半人前扱いしてしまったことに変わりはない。申し訳ない気持ちで、紗香は彼の手を取った。
「今日は一日、あなたがわたしの騎士です。頼りにしてますね、アルフレッドさん」
「……っ任せてください!」
頬を紅潮させ、満面の笑みを浮かべたアルフレッドに、胸の奥がきゅーんと疼き、口の端がニヤけてくる。
この感情は覚えがある。萌えだ。今すぐ頭を抱えて髪をわしゃわしゃと掻き混ぜたい。およそ成人男性にしていい行為ではないが、背後に完全に柴犬が見えていた。
紗香はぶんぶんと頭を振ってその幻覚を消す。その様子に、アルフレッドは不思議そうに首を傾げるのだった。
午前中の座学は、アルフレッドのおかげで楽しいものとなった。普段は一方的に講師の教えを受けている紗香だが、どうにもアルフレッドは勉強が苦手らしい。ついでとばかりに講師がアルフレッドにも話題を振るものだから、紗香は久々に誰かと一緒に勉強をする楽しさを味わっていた。
教わったはずのことを忘れてしまい、それをアルフレッドも答えられなかったので、二人で講師に怒られたのはいい思い出だ。
思い出し笑いをしながらとる昼食は、普段よりも美味しい気がした。
そんな楽しい時間はあっという間に過ぎ、午後の務めのために聖堂に移動する。
背後に控えたアルフレッドは、心なしか緊張している様子だった。それを微笑ましい思いで眺めて、声をかける。
「あんまり勉強だとか、気にしないでくださいね。側にいてくれれば、それで十分です」
「ありがとうございます」
苦笑した彼の顔は固かった。しまった、励ましは逆効果だっただろうか。
何も言わずに全てを任せた方が、彼への信頼は表せるだろう。しかし、なんというか、色々世話を焼いたりお節介をしたくなる空気があるのだ。
それはアルフレッドの魅力であるとも思うのだが、その相手が紗香であることが問題なのだろう。先輩達に可愛がられるのとはわけが違う。護衛対象に気を遣われたのでは彼の面目も丸潰れというものである。
フォローすればしただけ墓穴を掘る。それ以上余計なことを言わないよう、紗香は口を噤んだ。
最初の騎士が聖堂内に入り、紗香の前で膝をつく。お決まりの口上を聞いて、紗香はためらいなく足を開く。
「あ……っ、はぁ……んん」
与えられる快楽を、抵抗なく受け入れる。そうすればすぐに蜜がとろとろと溢れ、儀式はスムーズに進む。
ふいに、アルフレッドの視線を感じた。澄んだ瞳に、ぎくりと体が固まる。
凝視というほどではない。不快な視線でもない。だというのに、急に恥ずかしい、という感情が込み上げた。
それは見られている、という行為そのものに対する羞恥ではない。アルフレッドに見られていることが、何故だか恥ずかしかった。
彼の純粋さが。紗香すらわからない心の内を、見透かしている気がして。
――気のせいだ。
自分がすっかり汚れてしまったから、彼が眩しく見えるだけだ。元々、お綺麗な人間ではない。長く社会生活をこなし、酸いも甘いも味わってきた。
そもそもが、聖女などと呼ばれるような、清らかな存在ではないのだ。
今日のノルマを終え、疲労から息を吐く。まだ体の中に燻るものはあるが、この熱は時間が経てば引いていく。
「お疲れ様でした、聖女様」
「アルフレッドさん。何か得るものはありましたか?」
「ええ。先輩達はさすが、女性の扱いが手慣れていますね」
茶目っ気のある言い方に、紗香もくすりと笑みを零す。
「なんなら、今から実践しますか?」
ドレスの裾を持ち上げた紗香に、アルフレッドが顔を赤らめる。
今の今まで、騎士達に喘がされていた紗香を見ていたというのに。自分に向けられるとなると、こういう反応をするところが可愛らしい。
「お戯れを。人目のないところで、聖女様に手を出すわけにはいきません」
「わたしがいいと言っても?」
「だめです」
はっきりと区切って告げられた言葉に、生真面目だなぁと紗香は感嘆した。どこぞの遊び人とは大違いである。
「それに……」
「それに?」
「あ、いや」
零した言葉を拾われて、暫くもごもごと口籠っていたアルフレッドだったが、やがて観念したように白状した。
「儀式中はともかく、個人的にとなると、やはり彼女に悪いので」
「か」
――の、じょ!!
残りの二文字は飲み込んだ紗香だったが、開いた口を閉じるところまでは気が回らなかった。
その表情をどう取ったのか、アルフレッドは叱られた犬のように眉を下げて謝った。
「すみません、先輩達から、聖女様の前で彼女の話題は出さない方が良いと言われていたのに」
「あー……」
なるほど。そういう気の遣い方をされていたのか。
確かに、女性に性的な奉仕をしようというのに、他の女の影を匂わせるのはマナー違反だろう。
元々騎士達にも恋人や伴侶がいるだろうという想定はしていたが、実際に恋人がいるから悪い、などという言い方をされてしまうと、まるで自分が彼氏を寝取ろうとしている悪女のように思えてしまい罪悪感が刺激される。
しかし、それとは別に、この世界の恋愛事情を聞いておきたいという気持ちもある。今のところ、きちんと話が聞けたのはランドルだけだ。こういう俗っぽい話は、講義では扱わないだろう。気軽に聞ける人間から情報を得ておきたい。
「いえ、構いませんよ。むしろ興味あります。その彼女さんとは、どこで知り合ったんですか?」
「知り合った、というか、彼女は婚約者で」
「それって、最初から決められてるっていう結婚相手ですか?」
「はい」
照れたように笑うアルフレッドには、彼女への愛情が見える。仕方なく付き合っているようには見えない。
ひどいシステムだとばかり思っていたが、そうではないのだろうか。
「騎士になれば、相手は自由に選べると聞きましたけど……アルフレッドさんは、元々彼女さんのことが好きだったんですか?」
「うーん……? 好きだった、というか、彼女と将来結婚する、と聞かされたので。俺はこの人を好きになるんだな、と」
「え。言われたから好きになったんですか?」
「あ、いや、好きになったというか、好きになる努力をして、好かれる努力をして、結果お互い好意を持った、という感じですかね」
眩しい。真っ直ぐすぎる。
決められた結婚相手に疑問や反発を挟むことなく、そのまま好意に繋がるとは。
「別の相手を探そうと思ったことはないんですか?」
「ないですね。中には、結婚は契約と割り切って、それまでの間別の恋人を作る人もいるみたいですけど。結婚って、その先ずっと一緒にいるわけじゃないですか。自分の人生を預ける相手ですから。だったら、ちゃんとお互い好意があった方が、毎日楽しいかなって」
ここまでくると純粋というか、いっそ達観と言ってもいいほどなのでは。なんという見合い向きの思考。
「それに、俺が放棄してしまうと、彼女の身が浮いてしまいますから。騎士になる時にも、婚約は破棄しないと約束してきました」
「そういえば、相手がいなくなった場合って……」
「再選定されます。けれど、国民は全員が物心つく前に相手が決まっていますから、再選定には時間がかかります。女性の場合は特にその時間がシビアですので、騎士になったからといって別の相手を選ぶ方が稀ですね」
――と、いうことは。
「ちなみにケイト団長はいませんよ」
「ふえっ!?」
脳裏に浮かんだ顔を言い当てられて、思わず奇妙な声が上がる。
「相手の女性が若くて美しい場合は、貴族に嫁いだり、再選定が有利になる場合が多いので、むしろ相手のためにと早めに放棄する人はいます。騎士はやはり、途中で殉職する可能性がありますから。団長はこのケースですね」
「そう、なんですね」
どっちだ。紗香がケイトを気にしていると思ってこの話題を出したのか、権利を放棄したケースの説明として例に出したのか。
追及すると墓穴を掘る気がしたので、そのままスルーすることにした。
「相手が決まってるって、わたしの感覚からすると大変なことだと思ってたんですけど。アルフレッドさんみたいな人が相手なら、きっと幸せになれますね。なんだか安心しました」
「そう言ってもらえると、自信になります」
はにかむアルフレッドに、紗香も自然と笑みが浮かぶ。
本当に、彼女が羨ましいと思った。
「でもアルフレッドさん、そんなに長く付き合っている彼女がいるなら、むしろ女性の扱いは誰よりも上手いのでは?」
「そ、それは」
焦ったように顔を赤くしたアルフレッドに、紗香はぴんときた。
「彼女とは、まだ清いお付き合いを?」
「……そう、です」
耳まで赤くした姿を可愛いな、と眺めながら、アルフレッドの態度に納得する。先ほどの彼女に悪い、という発言からして、移り気を起こすことも一切なく、彼女一筋で来たのだろう。
「なるほど……それは……なんというか、本当に彼女さんには悪いことを」
「いえ、そんな。聖女様が気になさることではないです。むしろ、彼女とする時の予行練習だと思えば」
「それ絶っ対、彼女さんに言っちゃだめですよ」
「え」
「というか、わたしの存在を僅かでも匂わせたらだめですからね。聖女? そんなのそういえばいるね? 俺は会ったことないけどね? くらいのはったりきかせてくださいね」
「は、はぁ……?」
怖い顔で詰め寄る紗香に、アルフレッドは疑問符を浮かべながらも気迫に押されて頷いた。
素直で純粋なところはアルフレッドの長所だが、それも行き過ぎれば人を傷つける。恋愛は、上手く嘘がつけなければ。
聖女なんてものの存在を、恋人が快く思うわけがないのだ。絶対に話題に上げないでほしい。その内刺されそう。
溜息を一つ吐いて、紗香はアルフレッドに笑顔を向けた。
「こっちに来てから恋バナなんて全然してなかったので、楽しいです。聞かせてくれてありがとうございます」
「コイバナ?」
「恋愛のお喋りです。普通は同性とするんでしょうけど、こっちに女の子の友達いないので」
「なんだ。そんなことならいくらでも。俺も、女性の知り合いは多くないので。女性視点でお話が聞けると助かります」
そこまで言って、何かを思い出したようにアルフレッドが声を上げた。
「そういえば、今度、彼女の誕生日なんです」
「おお、おめでとうございます」
「それで、城下まで贈り物を見に行くんですけど。良ければ聖女様、選ぶの手伝ってくれませんか?」
「えっ!?」
大きく動揺した紗香に、アルフレッドは気にした様子もなく続ける。
「毎年あげてますけど、たまには変わったものあげたくて。聖女様に選んでいただけたら、いつもと違うものが選べる気がします」
「で、でも、彼女さんのことはアルフレッドさんが一番よくわかっているのでは。わたしは彼女さんのこと知りませんし」
「大丈夫ですよ。彼女の好みはお伝えしますし、聖女様の感性で選んでいただければ」
「そんな責任重大な……! というか、第一、わたし城から出られるんですか?」
紗香は現状を軟禁状態だと捉えている。城の外に出る、などという話は、今まで一度も出たことがなかった。つまり、不可能だと思っている。
「そこは俺がかけあってみます。聖女様は、この国を守っていらっしゃるのですから。ご自身が守ったものを見に行くのに、遠慮なんかいりませんよ」
城の外に出られるかもしれない。期待に弾む胸を、理性で押さえる。もし、だめだったら。期待しすぎたら、辛いのは自分だ。アルフレッドにも迷惑をかける。
「ありがとうございます。あの、だめだったら、無理しないでくださいね。本当に、ちょっと聞いてみるだけで」
「大丈夫です! あなたの騎士にお任せください!」
力強く胸を叩いたアルフレッドに、紗香は涙の滲む目を、眩しそうに細めた。
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