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第1話:正統派王子騎士との出逢い★
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「あ、あぁんっ」
甲高い声が上がって、びくりと体が震える。しかし、決して足を閉じることは許されない。
「ほら、聖女様。もっと大きく足を開かないと、兵の顔が潰れてしまいますよ」
「は、はい……ひぅ!」
敏感な秘芯を舌で舐め上げられて、更に喉が引きつった。
足の間には、騎士の顔が埋まっている。傍らでそれを見守るのは、まだ年若い騎士団長。
ああ、どうして、こんなことに。
+++
「今日も疲れたぁ~」
とっぷり日が暮れるまで働いて、一日のご褒美とばかりに乳白色の湯船に浸かる。毎日違った入浴剤を楽しむのが、しがないOL、加賀美紗香の数少ない趣味だった。
手持無沙汰にお湯をぱしゃぱしゃとすくっていると、お湯がだんだん渦を巻いていった。
「あれ? 栓抜けちゃったかな」
少し行儀が悪いが、足で探って栓を探す。すると、足先から何かに引きずり込まれるような感覚が襲った。
「え、なになになに!?」
恐怖と驚きから声を上げるも、その声は湯と共にどこかへと吸い込まれていく。
後には、空の浴槽だけが残った。
+++
「ん……」
騒めく人の声が耳に入り、紗香はそっと目を開けた。そしてぎょっとした。
大勢の男性が、自分を遠巻きに見ている。そしてその男性達は、一様に揃いの甲冑を身につけており、手には武器を持っていた。
「ひ……ッ!?」
およそ現代日本では目にすることのない武装した兵士に、紗香は小さな悲鳴を上げて後退った。
カタカタと体を震わせていると、背後からそっと何かを被せられた。
「怯えさせて申し訳ありません。我らに敵意はありません。このような状況で無理からぬこととは存じますが、どうか話を聞いていただけないでしょうか」
優しいテノールの声に振り返ると、そこには王子様がいた。
もちろん王子様、というのは紗香の主観だ。金糸の髪。透き通る琥珀の瞳。すっと通った鼻筋。息を呑むほど美しい顔でありながら、その手はゴツゴツとしており、無数の傷があった。武人の手だった。
彼は怯えさせないようにと、少し紗香から距離を取ったところに膝をつき、柔らかに微笑んでいた。
それでも不信感は拭えず、無意識に被せられた布をぎゅっと胸の前で手繰り寄せて、気づいた。
「きゃあ!?」
裸だった。そういえば、入浴中に意識を失ったきりだった。だから目の前のこの人は、体を隠すために布をかけてくれたのだ。
手触りが良く、高級そうな刺繍が入っている。よく見れば、それはマントのようだった。金の髪の男性は、周囲にいる兵達とは服装が異なる。立場のある人なのだろう。濡らしてしまって大丈夫だろうか、などと場違いなことを考えた。
「そのままではお風邪を召されます。まずは、身支度を」
金の髪の男性が立ち上がって人を呼ぶと、メイドのような格好をした女性が数人、紗香に付き従った。
わけもわからないまま紗香は、そのままメイド達に連れられて行った。
あれよあれよという間に、冷えた体を再度湯で温められ、丁寧に香油を肌に塗りこまれ、柔らかな生地のドレスを着せられた。しかしそのドレスは、コルセットやパニエを付けるようなしっかりした物ではなく、どちらかというとナイトドレスのようなゆったりとした作りだった。
豪奢な部屋のソファに座らされ、居心地の悪さを感じながら待っていると、部屋の扉がノックされ、先ほどの金の髪の男性が部屋に入ってきた。
「ご気分は落ち着かれましたか」
「え、えぇ、まぁ」
「それは良かった。ではどうかそのまま、落ち着いて私の話を聞いていただけないでしょうか」
現状紗香が話を聞ける相手は、彼しかいない。とにかく今は状況を把握しなければならない、と紗香は頷いた。
金の髪の男性は、ケイトと名乗った。彼はこの国の騎士団長らしい。先ほど紗香を取り囲んでいた兵達は、全て騎士団の者なのだそうだ。
この国は以前から魔物被害に悩まされており、騎士団で対処に当たっていたが、少数精鋭の騎士団はさすがに疲労が隠せなくなってきたらしい。
小さな国で、周辺諸国からの援助も望めず。藁にも縋る思いで、【聖女召喚】という眉唾ものの儀式を試してみたそうだ。
この国に伝わる御伽噺。遥か昔にも、聖女が勇敢な騎士達に祝福を与え、国を救った伝説が残っているらしい。
とはいえ大昔の話。本当に呼び出せるかも定かではなく、また呼び出したものが聖女でなく悪魔の類である可能性もある。危険に備え、あの場にいた者達は武装していたとのことだった。
「結果として、貴方を怯えさせることになり、本当に申し訳ありませんでした」
深く頭を下げたケイトに、紗香は手を振った。
「ああ、いえ、そんな。頭を上げてください。えぇと、仕方ない、ですよね。安全のためにしたことですから」
微笑んで見せた紗香に、ケイトは目を瞠った後、表情を緩めた。
「そう言っていただけると、救われます。聖女様がお優しい方で良かった」
「そんな、聖女なんてやめてください」
「では、なんとお呼びすれば?」
「あ、名乗ってませんでしたね。わたしは、紗香といいます」
「サヤカ様ですね。美しい響きだ」
慣れないように口にした彼に、こちらでは馴染みのない音だということがわかる。それなのに、笑顔で褒めてくれる。紳士なのだろう。
自分の名前をそんな風に褒められたことのない紗香は、照れくさく思いながら曖昧に笑った。
「あの、お話は、わかったんですけど。急に聖女……なんて言われても、困ります。わたし、何もできませんし。残してきた仕事もあるし、帰らないと」
「ああ……そう、でしたか。サヤカ様にも、ご自身の生活がおありなのですね」
呆けたように言われて、当たり前だろう、と思った後ではっとする。
何せ、聖女召喚だ。例えば、紗香の世界で、天使を呼び出す儀式のように。或いは、悪魔を呼び出すかのように。ああいった超常のものは、何故か、呼び出しに応じればそれ相応の働きをするものと思っている。
天使なら人を救う善意から。悪魔なら、代償を求めるために。そういう役割の存在だと、思い込んでいるからだ。
彼らにとっては、聖女がそういうものなのだろう。国を救うための呼び出しに応じるもの。天の国から来た御使い。俗世とは切り離されたもの。呼び出したからには、願いを叶えてくれる。きっと、そう思っているのだ。
「すみません。わたしは多分、皆さんが思っているような、すごい存在じゃないんです。ごく普通の人間で……。今までずっと、普通に生活してきたんです」
「サヤカ様の生活はわかりませんが、お力は確かにあります。我々は、一目見た時からそれを感じております」
「え?」
きょとん、と紗香は目を瞬かせた。力、と言われても、一切の自覚がない。
「サヤカ様は、確かに聖女でいらっしゃいます。元の生活にすぐにお戻しすることができないのは、本当に申し訳ありません。ですが、役割を終えられたなら、必ず無事にお返しすると誓います」
「そんなこと……言われても……」
「お願いいたします。どうか、どうかこの通りです……!」
「えっちょ、ちょっと……!」
跪いて頭を垂れるケイトに、紗香は慌てた。こんなことをされるような身分ではない。
あまりの居心地の悪さに、紗香は焦った。聖女だのなんだの、未だに信じられない。何をすれば良いのかもわからない。けれど、役目を終えるまでは帰すことができない、と彼は暗に言っている。
帰らなければと気は急いていたものの、実のところ、どうしても帰らなければいけないようなことなどない。仕事はいくらでも代わりのきく内容だし、暫く会わないだけで心配するような恋人も友人もいない。ちょっと長めの旅行だと思えば。人助けにもなるようだし。
足元に美形がいるという異常事態に動揺して、紗香の思考はケイトの希望に沿うようにと言い訳を並べていった。
「わ、わかりました! わたしにできることなら、なんでも協力します。だから顔を上げてください!」
紗香がそう言うと、ケイトは安堵したように微笑み、紗香の足の甲に口づけた。
「ご厚意に、感謝いたします。サヤカ様」
紗香は真っ赤になった。足に口づけなど。どこのプリンセス映画だろうか。
「あっあの! それで、わたしは、何をしたらいいんでしょうか?」
問いかけると、足元に跪いたまま、ケイトは完璧な笑顔でにっこりと微笑んだ。まるで練習しつくしたかのようだった。
「サヤカ様が、特別何かをなさる必要はありません。ただ、我々に御身に触れる許可をいただければ」
「え? だって、聖女……なんですよね?」
「はい。サヤカ様は、聖女であらせられます。そして、聖女の清らかな蜜は、我々騎士に甚大な力を授けてくれるのです」
「清らかな……蜜?」
何かの比喩表現だろうか。言われていることがさっぱりわからなくて、紗香は首を傾げた。
その反応は予想の範疇だったのだろう。笑顔を崩さないまま、ケイトは紗香の足先から太ももまでを、ゆっくりと撫で上げた。
「えっ!? ちょ、ちょっと!」
いきなりのセクハラにぎょっとした紗香は、その手を捕まえようとした。しかし手はそのまま際どいところまで進む。紗香は焦った。実は今、紗香は下着をつけていない。ドレスの着付けはメイドがしたが、その時に下着がなかったのだ。昔の着物では下着をつけなかったし、もしかしてこの国には下着がないのだろうか、と思っていた。
しかし、こうして触れられてしまうと、やはり遮る布がないことはひどく心許ない。足の付け根をさすって、そのまま焦らすように長い指が肌を辿って、やがて紗香の秘所をくっと押し上げた。
「っ!」
「ここから。溢れる蜜が、我々の力になるのです」
「……っ」
はくはくと口だけが動いて、言葉にならない。そんな馬鹿な。いったいどこのハーレクイン小説だ。
「サヤカ様。どうか、私に、ここに口づける許可をいただけませんか?」
「はっ!? く、くちって、そんなのダメに決まって」
「お願いします。私が、一番にお力を賜りたいのです」
脳が揺さぶられているようだった。まるで現実感がない。しかし王子のような容貌の騎士団長は、至って真面目な様子で懇願するように見上げてくる。
本当に、必要なことなのだろうか。謀られているのではなかろうか。ああ、でも、こんなに綺麗な人が、紗香を謀る理由など。
ぐるぐると纏まらない考えが頭を駆け巡った結果、サヤカはこくりと首を縦に振った。
「ありがとうございます」
ケイトは柔らかな笑みで礼を告げると、ゆっくりとナイトドレスの裾をたくし上げた。露わになっていく素足に、紗香は思わず目を逸らす。
見るのをやめると、膝のあたりに生温かい感触があった。口づけられたのだろう。感覚だけで、かっと顔が熱くなる。
足の内側に口づけながら、緩い力で両の足を開かれる。思わず抵抗しそうになるが、それができない程度には力が込められていた。
両の足がすっかり開かれると、おそらくケイトの眼前には紗香の秘部が晒されているのだろう。そんな光景は直視できなくて、紗香はぎゅっと目を瞑ったまま、顔を背けていた。
「お綺麗ですよ、サヤカ様」
嘘だ! と心の中だけで叫ぶ。何かを口にしたら負けな気がして、ぎゅっと唇を引き結んだ。
こんな、大した体でもないただのOLが、王子様みたいな美貌の男性を前に、ソファの上で大股開いているなんて。考えただけで眩暈がする。
何が起こるかもよくわかっていないのに、早く終わって、なんて思っていると。
ぴちゃ、と湿った音が響いて、思わず声を上げた。
「ひゃぁ!?」
その衝撃で、思わず閉じていた目を開けてしまう。
視線を下げると、ケイトが紗香の足の間に顔を埋めて、秘所に舌を這わせていた。
「な、そ、そんなとこ、きたな」
「大丈夫、綺麗です」
「そんなわけ、な、あっ」
再び熱いものが撫で上げて、紗香は腰を跳ねさせた。
ケイトは恍惚とした表情で、零す。
「ああ……やはり、間違いなく、聖女様です。体中に力が巡るのがわかります」
「は? え、そんな、まさか……んんっ」
ぬる、と舌が薄い皮膚を舐め回す。ぶるぶると体を震わせていると、つう、と舌が上へあがり、固くなったそこに触れた。
「あぁん!」
情けない悲鳴が上がって、両手で口を塞ぐ。その様子を見て、ケイトはふっと息を漏らした。それさえも刺激となって紗香を襲う。
「どうぞ、いくらでも声を上げて構いませんよ。聖女のお役目は、皆が知っております」
「へ、え?」
それはどういうことか、と問う間もなく、秘芯をこりこりと舌で抉られて、強い刺激に喉の奥から意図せず嬌声が上がる。
「あ、ふぁ、やぁ、あ、あんっ」
敏感な芽が刺激される度、とろりと愛液が流れ出す。それをケイトは蜂蜜でも舐め取るかのように、舌で舐め取って、啜り上げた。
「まって、やぁ、それ、やです」
「これは嫌ですか? では……こういう方がお好きですか?」
「ふああああん!」
べったりと舌を押しつけられて、ざりざりと擦るように動かされる。
「ちが、そういうことじゃ、ひゃぁん!」
舐め方の問題じゃなくて、刺激が強すぎるから、そこへの愛撫を止めてほしい、と訴えたつもりなのに。
ぞわぞわとした感覚が体中に走って、わけがわからない。
「だめ、やぁ、なんか、だめなの、きちゃう」
ぞわぞわが収まらなくて、体が自分の意思に反して震える。未知の感覚に怯えてケイトに止めるよう懇願するが、ケイトは逆に固くなった秘芯をぱくりと口に含むと、ちゅ、ちゅ、と軽く数回吸い付き、その後強く吸い上げた。
「きゃああああ!?」
悲鳴のような声が上がって、腰が大きく跳ね上がる。頭がぱちぱちとして、何がなんだかわからない。
そのままぐったりとソファに体を落とした紗香の秘部を、名残惜しそうにケイトが一舐めした。それに再び、紗香の体が震える。
「お務め、お疲れ様でした。サヤカ様」
「お、つと……め?」
息を切らせたまま、紗香がぼうっと問う。
「そうです。聖女の役目は、こうして国を守る騎士に清らかな蜜を与え、戦う力を授けることです」
「は……」
ぽかん、と口を開けてしまう。これが、聖女の仕事?
「え、役目って、だって、こんなの」
「ご安心ください。我らは蜜をいただくだけです。決して、サヤカ様の中に押し入るようなことはいたしません」
「へ、え?」
「聖女は、清らかな乙女でなくてはなりません。ですから、サヤカ様の純潔を奪うことは大罪に値します。決してそのようなことは、誰にもさせません」
先ほどまでとは別の羞恥で、かあっと顔が熱くなる。つまり、紗香が処女であることは、周知の事実なのだ。
「明日からは、聖堂にてお務めに励んでいただきます。今日のところはお疲れでしょうから、このままゆっくりお休みください」
「え、ちょ、ちょっと」
「身の回りのことは全てメイドがお手伝いさせていただきます。僭越ながら、護衛の任は私を中心に、騎士団の者が交代でつかせていただきます」
「ご、護衛?」
「万が一にも、サヤカ様に乱暴を働く者が出ては困りますので。それでは、本日はこれで」
怒涛の勢いで説明され、まだ完全に事情が呑み込めない紗香を置き去りに、ケイトは部屋を出ていった。残された紗香は、呆然としたまま、広いベッドに転がった。
「なに……なんなの。冗談か何か?」
ひとりごちるが、まだ熱を持つ下半身が、夢ではないと告げているようだった。
甲高い声が上がって、びくりと体が震える。しかし、決して足を閉じることは許されない。
「ほら、聖女様。もっと大きく足を開かないと、兵の顔が潰れてしまいますよ」
「は、はい……ひぅ!」
敏感な秘芯を舌で舐め上げられて、更に喉が引きつった。
足の間には、騎士の顔が埋まっている。傍らでそれを見守るのは、まだ年若い騎士団長。
ああ、どうして、こんなことに。
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「今日も疲れたぁ~」
とっぷり日が暮れるまで働いて、一日のご褒美とばかりに乳白色の湯船に浸かる。毎日違った入浴剤を楽しむのが、しがないOL、加賀美紗香の数少ない趣味だった。
手持無沙汰にお湯をぱしゃぱしゃとすくっていると、お湯がだんだん渦を巻いていった。
「あれ? 栓抜けちゃったかな」
少し行儀が悪いが、足で探って栓を探す。すると、足先から何かに引きずり込まれるような感覚が襲った。
「え、なになになに!?」
恐怖と驚きから声を上げるも、その声は湯と共にどこかへと吸い込まれていく。
後には、空の浴槽だけが残った。
+++
「ん……」
騒めく人の声が耳に入り、紗香はそっと目を開けた。そしてぎょっとした。
大勢の男性が、自分を遠巻きに見ている。そしてその男性達は、一様に揃いの甲冑を身につけており、手には武器を持っていた。
「ひ……ッ!?」
およそ現代日本では目にすることのない武装した兵士に、紗香は小さな悲鳴を上げて後退った。
カタカタと体を震わせていると、背後からそっと何かを被せられた。
「怯えさせて申し訳ありません。我らに敵意はありません。このような状況で無理からぬこととは存じますが、どうか話を聞いていただけないでしょうか」
優しいテノールの声に振り返ると、そこには王子様がいた。
もちろん王子様、というのは紗香の主観だ。金糸の髪。透き通る琥珀の瞳。すっと通った鼻筋。息を呑むほど美しい顔でありながら、その手はゴツゴツとしており、無数の傷があった。武人の手だった。
彼は怯えさせないようにと、少し紗香から距離を取ったところに膝をつき、柔らかに微笑んでいた。
それでも不信感は拭えず、無意識に被せられた布をぎゅっと胸の前で手繰り寄せて、気づいた。
「きゃあ!?」
裸だった。そういえば、入浴中に意識を失ったきりだった。だから目の前のこの人は、体を隠すために布をかけてくれたのだ。
手触りが良く、高級そうな刺繍が入っている。よく見れば、それはマントのようだった。金の髪の男性は、周囲にいる兵達とは服装が異なる。立場のある人なのだろう。濡らしてしまって大丈夫だろうか、などと場違いなことを考えた。
「そのままではお風邪を召されます。まずは、身支度を」
金の髪の男性が立ち上がって人を呼ぶと、メイドのような格好をした女性が数人、紗香に付き従った。
わけもわからないまま紗香は、そのままメイド達に連れられて行った。
あれよあれよという間に、冷えた体を再度湯で温められ、丁寧に香油を肌に塗りこまれ、柔らかな生地のドレスを着せられた。しかしそのドレスは、コルセットやパニエを付けるようなしっかりした物ではなく、どちらかというとナイトドレスのようなゆったりとした作りだった。
豪奢な部屋のソファに座らされ、居心地の悪さを感じながら待っていると、部屋の扉がノックされ、先ほどの金の髪の男性が部屋に入ってきた。
「ご気分は落ち着かれましたか」
「え、えぇ、まぁ」
「それは良かった。ではどうかそのまま、落ち着いて私の話を聞いていただけないでしょうか」
現状紗香が話を聞ける相手は、彼しかいない。とにかく今は状況を把握しなければならない、と紗香は頷いた。
金の髪の男性は、ケイトと名乗った。彼はこの国の騎士団長らしい。先ほど紗香を取り囲んでいた兵達は、全て騎士団の者なのだそうだ。
この国は以前から魔物被害に悩まされており、騎士団で対処に当たっていたが、少数精鋭の騎士団はさすがに疲労が隠せなくなってきたらしい。
小さな国で、周辺諸国からの援助も望めず。藁にも縋る思いで、【聖女召喚】という眉唾ものの儀式を試してみたそうだ。
この国に伝わる御伽噺。遥か昔にも、聖女が勇敢な騎士達に祝福を与え、国を救った伝説が残っているらしい。
とはいえ大昔の話。本当に呼び出せるかも定かではなく、また呼び出したものが聖女でなく悪魔の類である可能性もある。危険に備え、あの場にいた者達は武装していたとのことだった。
「結果として、貴方を怯えさせることになり、本当に申し訳ありませんでした」
深く頭を下げたケイトに、紗香は手を振った。
「ああ、いえ、そんな。頭を上げてください。えぇと、仕方ない、ですよね。安全のためにしたことですから」
微笑んで見せた紗香に、ケイトは目を瞠った後、表情を緩めた。
「そう言っていただけると、救われます。聖女様がお優しい方で良かった」
「そんな、聖女なんてやめてください」
「では、なんとお呼びすれば?」
「あ、名乗ってませんでしたね。わたしは、紗香といいます」
「サヤカ様ですね。美しい響きだ」
慣れないように口にした彼に、こちらでは馴染みのない音だということがわかる。それなのに、笑顔で褒めてくれる。紳士なのだろう。
自分の名前をそんな風に褒められたことのない紗香は、照れくさく思いながら曖昧に笑った。
「あの、お話は、わかったんですけど。急に聖女……なんて言われても、困ります。わたし、何もできませんし。残してきた仕事もあるし、帰らないと」
「ああ……そう、でしたか。サヤカ様にも、ご自身の生活がおありなのですね」
呆けたように言われて、当たり前だろう、と思った後ではっとする。
何せ、聖女召喚だ。例えば、紗香の世界で、天使を呼び出す儀式のように。或いは、悪魔を呼び出すかのように。ああいった超常のものは、何故か、呼び出しに応じればそれ相応の働きをするものと思っている。
天使なら人を救う善意から。悪魔なら、代償を求めるために。そういう役割の存在だと、思い込んでいるからだ。
彼らにとっては、聖女がそういうものなのだろう。国を救うための呼び出しに応じるもの。天の国から来た御使い。俗世とは切り離されたもの。呼び出したからには、願いを叶えてくれる。きっと、そう思っているのだ。
「すみません。わたしは多分、皆さんが思っているような、すごい存在じゃないんです。ごく普通の人間で……。今までずっと、普通に生活してきたんです」
「サヤカ様の生活はわかりませんが、お力は確かにあります。我々は、一目見た時からそれを感じております」
「え?」
きょとん、と紗香は目を瞬かせた。力、と言われても、一切の自覚がない。
「サヤカ様は、確かに聖女でいらっしゃいます。元の生活にすぐにお戻しすることができないのは、本当に申し訳ありません。ですが、役割を終えられたなら、必ず無事にお返しすると誓います」
「そんなこと……言われても……」
「お願いいたします。どうか、どうかこの通りです……!」
「えっちょ、ちょっと……!」
跪いて頭を垂れるケイトに、紗香は慌てた。こんなことをされるような身分ではない。
あまりの居心地の悪さに、紗香は焦った。聖女だのなんだの、未だに信じられない。何をすれば良いのかもわからない。けれど、役目を終えるまでは帰すことができない、と彼は暗に言っている。
帰らなければと気は急いていたものの、実のところ、どうしても帰らなければいけないようなことなどない。仕事はいくらでも代わりのきく内容だし、暫く会わないだけで心配するような恋人も友人もいない。ちょっと長めの旅行だと思えば。人助けにもなるようだし。
足元に美形がいるという異常事態に動揺して、紗香の思考はケイトの希望に沿うようにと言い訳を並べていった。
「わ、わかりました! わたしにできることなら、なんでも協力します。だから顔を上げてください!」
紗香がそう言うと、ケイトは安堵したように微笑み、紗香の足の甲に口づけた。
「ご厚意に、感謝いたします。サヤカ様」
紗香は真っ赤になった。足に口づけなど。どこのプリンセス映画だろうか。
「あっあの! それで、わたしは、何をしたらいいんでしょうか?」
問いかけると、足元に跪いたまま、ケイトは完璧な笑顔でにっこりと微笑んだ。まるで練習しつくしたかのようだった。
「サヤカ様が、特別何かをなさる必要はありません。ただ、我々に御身に触れる許可をいただければ」
「え? だって、聖女……なんですよね?」
「はい。サヤカ様は、聖女であらせられます。そして、聖女の清らかな蜜は、我々騎士に甚大な力を授けてくれるのです」
「清らかな……蜜?」
何かの比喩表現だろうか。言われていることがさっぱりわからなくて、紗香は首を傾げた。
その反応は予想の範疇だったのだろう。笑顔を崩さないまま、ケイトは紗香の足先から太ももまでを、ゆっくりと撫で上げた。
「えっ!? ちょ、ちょっと!」
いきなりのセクハラにぎょっとした紗香は、その手を捕まえようとした。しかし手はそのまま際どいところまで進む。紗香は焦った。実は今、紗香は下着をつけていない。ドレスの着付けはメイドがしたが、その時に下着がなかったのだ。昔の着物では下着をつけなかったし、もしかしてこの国には下着がないのだろうか、と思っていた。
しかし、こうして触れられてしまうと、やはり遮る布がないことはひどく心許ない。足の付け根をさすって、そのまま焦らすように長い指が肌を辿って、やがて紗香の秘所をくっと押し上げた。
「っ!」
「ここから。溢れる蜜が、我々の力になるのです」
「……っ」
はくはくと口だけが動いて、言葉にならない。そんな馬鹿な。いったいどこのハーレクイン小説だ。
「サヤカ様。どうか、私に、ここに口づける許可をいただけませんか?」
「はっ!? く、くちって、そんなのダメに決まって」
「お願いします。私が、一番にお力を賜りたいのです」
脳が揺さぶられているようだった。まるで現実感がない。しかし王子のような容貌の騎士団長は、至って真面目な様子で懇願するように見上げてくる。
本当に、必要なことなのだろうか。謀られているのではなかろうか。ああ、でも、こんなに綺麗な人が、紗香を謀る理由など。
ぐるぐると纏まらない考えが頭を駆け巡った結果、サヤカはこくりと首を縦に振った。
「ありがとうございます」
ケイトは柔らかな笑みで礼を告げると、ゆっくりとナイトドレスの裾をたくし上げた。露わになっていく素足に、紗香は思わず目を逸らす。
見るのをやめると、膝のあたりに生温かい感触があった。口づけられたのだろう。感覚だけで、かっと顔が熱くなる。
足の内側に口づけながら、緩い力で両の足を開かれる。思わず抵抗しそうになるが、それができない程度には力が込められていた。
両の足がすっかり開かれると、おそらくケイトの眼前には紗香の秘部が晒されているのだろう。そんな光景は直視できなくて、紗香はぎゅっと目を瞑ったまま、顔を背けていた。
「お綺麗ですよ、サヤカ様」
嘘だ! と心の中だけで叫ぶ。何かを口にしたら負けな気がして、ぎゅっと唇を引き結んだ。
こんな、大した体でもないただのOLが、王子様みたいな美貌の男性を前に、ソファの上で大股開いているなんて。考えただけで眩暈がする。
何が起こるかもよくわかっていないのに、早く終わって、なんて思っていると。
ぴちゃ、と湿った音が響いて、思わず声を上げた。
「ひゃぁ!?」
その衝撃で、思わず閉じていた目を開けてしまう。
視線を下げると、ケイトが紗香の足の間に顔を埋めて、秘所に舌を這わせていた。
「な、そ、そんなとこ、きたな」
「大丈夫、綺麗です」
「そんなわけ、な、あっ」
再び熱いものが撫で上げて、紗香は腰を跳ねさせた。
ケイトは恍惚とした表情で、零す。
「ああ……やはり、間違いなく、聖女様です。体中に力が巡るのがわかります」
「は? え、そんな、まさか……んんっ」
ぬる、と舌が薄い皮膚を舐め回す。ぶるぶると体を震わせていると、つう、と舌が上へあがり、固くなったそこに触れた。
「あぁん!」
情けない悲鳴が上がって、両手で口を塞ぐ。その様子を見て、ケイトはふっと息を漏らした。それさえも刺激となって紗香を襲う。
「どうぞ、いくらでも声を上げて構いませんよ。聖女のお役目は、皆が知っております」
「へ、え?」
それはどういうことか、と問う間もなく、秘芯をこりこりと舌で抉られて、強い刺激に喉の奥から意図せず嬌声が上がる。
「あ、ふぁ、やぁ、あ、あんっ」
敏感な芽が刺激される度、とろりと愛液が流れ出す。それをケイトは蜂蜜でも舐め取るかのように、舌で舐め取って、啜り上げた。
「まって、やぁ、それ、やです」
「これは嫌ですか? では……こういう方がお好きですか?」
「ふああああん!」
べったりと舌を押しつけられて、ざりざりと擦るように動かされる。
「ちが、そういうことじゃ、ひゃぁん!」
舐め方の問題じゃなくて、刺激が強すぎるから、そこへの愛撫を止めてほしい、と訴えたつもりなのに。
ぞわぞわとした感覚が体中に走って、わけがわからない。
「だめ、やぁ、なんか、だめなの、きちゃう」
ぞわぞわが収まらなくて、体が自分の意思に反して震える。未知の感覚に怯えてケイトに止めるよう懇願するが、ケイトは逆に固くなった秘芯をぱくりと口に含むと、ちゅ、ちゅ、と軽く数回吸い付き、その後強く吸い上げた。
「きゃああああ!?」
悲鳴のような声が上がって、腰が大きく跳ね上がる。頭がぱちぱちとして、何がなんだかわからない。
そのままぐったりとソファに体を落とした紗香の秘部を、名残惜しそうにケイトが一舐めした。それに再び、紗香の体が震える。
「お務め、お疲れ様でした。サヤカ様」
「お、つと……め?」
息を切らせたまま、紗香がぼうっと問う。
「そうです。聖女の役目は、こうして国を守る騎士に清らかな蜜を与え、戦う力を授けることです」
「は……」
ぽかん、と口を開けてしまう。これが、聖女の仕事?
「え、役目って、だって、こんなの」
「ご安心ください。我らは蜜をいただくだけです。決して、サヤカ様の中に押し入るようなことはいたしません」
「へ、え?」
「聖女は、清らかな乙女でなくてはなりません。ですから、サヤカ様の純潔を奪うことは大罪に値します。決してそのようなことは、誰にもさせません」
先ほどまでとは別の羞恥で、かあっと顔が熱くなる。つまり、紗香が処女であることは、周知の事実なのだ。
「明日からは、聖堂にてお務めに励んでいただきます。今日のところはお疲れでしょうから、このままゆっくりお休みください」
「え、ちょ、ちょっと」
「身の回りのことは全てメイドがお手伝いさせていただきます。僭越ながら、護衛の任は私を中心に、騎士団の者が交代でつかせていただきます」
「ご、護衛?」
「万が一にも、サヤカ様に乱暴を働く者が出ては困りますので。それでは、本日はこれで」
怒涛の勢いで説明され、まだ完全に事情が呑み込めない紗香を置き去りに、ケイトは部屋を出ていった。残された紗香は、呆然としたまま、広いベッドに転がった。
「なに……なんなの。冗談か何か?」
ひとりごちるが、まだ熱を持つ下半身が、夢ではないと告げているようだった。
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