白薔薇の紋章

サクラ

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第二章 仲間 

第3話

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ふう・・・・




「よっ!元気にしてたか?」



「げ…」


「げっとはなんだ」



屋上からの階段を下りると、目の前に戒さんが立っていた。
「げっ」とも言いたくもなる。
戒さんと登校したおかげでクラスのみんなから質問の嵐だったんだから。
しかもどういう関係って聞かれても、なんて答えていいかわからないから
「まあいろいろ…」としか言えないし。
いろいろってなんだよ!って自分の心の中でつっこんじゃったよ。


まあ、過ぎてしまったことはどうにもできないから
仕方ないんだけどね。



「戒さんは何をしていたんですか?」


「おまえを探してた」


「…なんで?」


「学校案内してやろうと思ってな」


感謝しろよ?とウインクされる。
正直に言おう。キモイ!
昨日のことがなければ「キャーかっこいい!」とか思ったかもしれないけど。
ない、この人の性格知ったらない!


「別にいいですよ」

「そういうなって、知っとかなきゃいけないこともあるんだからさ」



そう言われて、これは昨日の話と関係していると思った。
そうだよね、そんなことでもなければ私に学校の案内なんかするはずないか。


「よろしくお願いします」

「察しはいいほうなんだな」

「そうみたいです。」


戒さんの後ろをついて歩く。
前の学校よりも廊下が広いし、キレイ。
窓ガラスも大きくて光が校舎に降り注ぐ。

「きれいな学校ですね」

「そうだな。専門業者が来てメンテナンスしてるからな」

「すごいですね、そんなこと聞いたことない」

「理事長の力だな。いろいろと知り合いが多いらしい」


戒さんの眉間にシワがよる。
理事長のこと、あまりよく思っていないのかな?


それから色々と教室を案内され
行きついたのは何もない階段下の狭いスペースだった。

「ここに何かあるんですか?」

「まあ、見てろ」


そう言って戒さんは壁の中央を軽く押した。
するとゴゴゴゴという音とともに壁が扉のように開いた。

「…扉?」

「そ、隠し扉。本当に紹介したいのはここから先」


ここから先が本当に案内したい場所。
つまりこの中に白薔薇姫に関わる何かがある…ということなんだろう。


「入るぞ」

戒さんの後をついて行く。
ゴゴゴゴゴという音がしたので振り返ると
扉はすでに閉まっていた。

「すごい仕掛けですね…」

「ほかの生徒に気づかれたら大変だからな」


「ここの生徒は白薔薇姫やその伝説のことは知らないんですか?」

「そうだな、詳しくは知らないってとこだな」

「つまりどういういことですか?部分的なことだけ知っているということですか?」

「まあ、そのうちわかる」

そう言って戒さんはまた足を進めて行く。
それ以上は何も答えてはくれなさそうな気がして
私もそれ以上話をするのを止めた。


話すこともなくなって
ふと窓の外を見ると
真っ赤な鳥居と神社が見えた。

「神社…?」

「ああ、あそこに例の刀が祀ってあるんだよ」

「そうなんですか…」

「あそこは一般人は立入できないんだよ。でもお前の家からはすぐに着く」

「え?」

「よく見てみ」


戒さんが指をさす方向を見ると
神社の奥に私の家が見えた。
つまり

「私の家の裏に神社があるってこと?」

「そ、だからあの神社の管理はこれからお前の仕事ってわけだ」

「ちょっと待って!そんなこと聞いてない!」

「今言った。」

「そういうことじゃないでしょ!!」

神社の管理ってなに?
私に神主になれっているの?無理!無理に決まってる!

「んな難しいことじゃねぇよ。さっきも言っただろ?一般人は入れないんだって」

「そうですね」

「管理っつても、境内きれいにするとかそんなもんでいいから」

「それだったら…」

できるかな。
うん、待てよ。あの神社が白薔薇姫の家の人が管理するものなら
今は誰が管理しているんだ?


「まあ、今後いろいろ分かって来るからさ。今はとりあえずオレについて来いよ」

「エスパーか何かですか?」

「かっこいいだろ?惚れちゃった?」

「まさか」

「てめぇ、今鼻で笑っただろ」

「気のせいですよ」

「気のせいじゃねぇ!何笑ってんだよ!ムカつくな!色気なし女!」

「今それ関係ないじゃないですか!笑われたくらいで怒るなんて度量が狭いんですよ!」

「あぁ!やんのか!」


誰もいない廊下に
私と戒さんの怒鳴り声だけが響いていた。




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