ミルクティー

サクラ

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ミルクティー

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「そんな乙女なこと言ってないで、さっさと告白してしまえよ」



「…そんなこと言ったって、タイミングってもんがあるというか」



告白のチャンス!と思ってから幾日が過ぎた。
けど
私と真崎くんはまだ「友達」だったりする。

「そんなことしてたら他のヤリ手の女に持っていかれるよー」


「そ、それは嫌だけど」


今日もダラダラとゆりと家でお酒を飲む。
テーブルの上にはビールに干しホタテ。
恋バナをするには似合わないけど
これがおいしいから仕方がない。

「嫌ならさっさとつきあっちゃえって」

「だーかーらー!それが出来たら苦労しないってば!」


真崎くんと一緒にいるのは楽しい。
そして、絶対にこの気持ちは「恋」だと思う。

恋をしたなら、気持ちを伝えて「おつきあい」に発展したいわけなのですが
なかなかその勇気がもてなくて、もんもんとしているわけだ。

ゆりの言うとおり、あんなに格好いい人だし、いつ彼女ができてもおかしくない。
今彼女をつくるつもりはなさそうだけど
彼が本気になれば、彼女なんて簡単にできてしまうはずだ。
のんびりしている場合じゃない。

でも…

仕事が忙しいってわかっているのに
告白なんか迷惑だよなぁとか
考えちゃうわけですよ!



「ふん!そんなこと言って本当は、今の関係壊したくないだけじゃんか!」

「なんとなくぼやかしていたのに!はっきり言わないで!」


そうだよ!正直なところ怖いんだよ!
せっかくまた会えて仲良くなったのに
この告白がうまく行かなかったら
また離れてしまう。
真崎くんと一緒にいるのが楽しくて、幸せなのに。
その時間が無くなってしまうのは嫌だし、怖い。




「でも、今のはるかはいい!」


「何が?」


「恋をして丸くなったよね。前は仕事仕事でぴりぴりしてたけど
今は、女の顔してていい感じだよ?」





いい感じねぇ、どうなんだろう。
そうなのかな?自分ではたいした意識もしていないんだけど。
前よりも、良くなっているなら
私はうれしいんだけどさぁ。

もし私の雰囲気がよくなっているのなら
それは間違いなく真崎くんのおかげだ。
彼に恋をしたからだ。

この恋を大事にしたい。
だから発展させたい。
でもそれがダメだったら?
この関係が終わるのが怖い。

だったらずっと友達でいればいいんじゃない?
でも真崎くんに彼女ができて
結婚して、子供ができて
私それを祝福できるかな?
きっとできない。

後悔する。
気持ちを伝えなかった自分を責める。

ねえ真崎くん。
真崎くんは、私のことどう思っている?

あの時と同じ、いい友達としか思っていない?それとも
あの同窓会のとき、声をかけてくれたってことは
私のこと、少しは意識していると思ってもいいのかな?





ということをここ数日考えていたら
真崎くんの会社の近くまで来ちゃったよ!!
やばい、これってストーカーっていうんじゃ…

ひとつ言い訳させて
今は仕事中
で、たまたま彼の会社の近くに来ていたと気づいたわけ
それで、それでね
もしかしたら会えるかも…なんて思ってね
そう思ったら足が勝手に彼の会社に進んでしまって…
それで気が付いたら彼の会社の目の前にいるという状態なわけです。



時計を見ると、すでに18時をまわっていた。
真崎くん今日は残業あるのかな
最近は急ぎの仕事もないから定時で帰れるって言ってたような気がするんだけど。
どうかな?呼び出してしまおうか?
それとも、仕事が終わるのをここで待って偶然を装ってみようか。

いや、それじゃあストーカーだよ!
あぁ、でも会いたい。
どうしよういかな…









「真崎さん!」



真崎さん…って言ったよね?
え?真崎くん、いるの?
どうしよう、こんなところで突っ立ていたら変な人だと思われる!

慌てて近くの茂みに身をひそめる
隙間から声がしたほうをのぞくと
私よりも年下であろうかわいい子と
真崎くんが並んで立っていた。



会話は聞こえない。
でもなにか揉めているように見える。
どうしたんだろう
仕事のこと?
それとも…


どうしよう、何を話しているのか気になる。
近づいてもいいかな?
バレたらやばくない?
それよりも、私がここにいるのがバレるほうがヤバくない!?


でも、でも…
気になる!!



(大丈夫さはるか。気になるのなら近づけばよい)


天からの声が聞こえた気がした。

うん、そうだよね!
気になったまま帰っても
もやもやして落ち着かないし!

などと自分に言い訳をして
ひっそり、こっそりと二人に近づいて行く。
端から見たら完全に怪しい女だけど
今は気にしない!





「何?何か用?」


つ、冷たい!いつもの真崎くんからは想像できない。



「なんでそんな言い方するんですか?分かってるくせに…私はまだあきらめたわけじゃないですから」



あきらめたわけじゃないってどういうこと?



「俺、はっきり断ったはずだけど?付き合えないって」



「けど、真崎さん私のこと何も知らないですよね?だから、知ってもらうところからはじめたいんです!好きなんです!」




あの子、必死だ
それだけ真崎くんのことが好きだってことだよね?
勇気があるなぁ、あんなに熱くなれるなんて。
若いから?それとも自分に自信があるから?
何にしてもかわいい子…
こうして二人が並んでいるのを見ても思う。
お似合いだ。



「確かにオレはあんたのことなんか知らないし、でも別に知りたいとも思わない。だから悪いけど、もう構わないでくれる?」



女の子の熱い告白も一瞬で冷めてしまうような冷たい言い方。
これ?真崎くん?
私の知ってる真崎くんとは別人なんじゃないの?

だって、私と一緒の真崎くんは
いつも笑っていて優しくて
温かい人なのに。





怖くなった、もし私があの子だったらって思ったら。
今は友達として付き合っているから優しくても
告白したら、自分の気持ちを真崎くんが知ったらどうなるんだろう。

あんなふうに、本当に迷惑そうに冷たくあしらわれてしまうんだろうか。
だったら今の関係いたほうがいい。
嫌われるくらいだったら、友達のままでいい。





「はるか?なんでそんなところにいるんだ?」



「……え?」



しまった!真崎くんに見つかってしまった!
そして、我に返る
だって、ここは真崎くんの会社…
そして、こんなところでうずくまっている私は
どこからどうみても不審者
盗み聞きしたのがバレた?




「具合でも悪いのか?俺、今日、車で来てるから送ってくぞ?」



「あ…」



ほら、こんなに優しい。
こんなところでうずくまっている私のこと追及もしない。
ただ、うずくまっているってだけで、具合悪いって思って。
車まで出してくれる。

さっきと違う真崎くんに戸惑ってしまう。


どっちが本当の真崎くんなんだろう。
あの冷たい真崎くんが本当だったら
やっぱり私、友達のままでいいや。

優しくて、温かい真崎くんのそばにいれるなら
もう、このままでいいや。

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