異世界貴族は家柄と共に! 〜悪役貴族に転生したので、成り上がり共を潰します〜

スクールH

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学園編 5章

第133話 最終段階

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交渉を終えた後、特にこれといった動きは無かった。

変わったこともなく、二学期が終わり、冬休みに入る。

冬休みが終わると三学期になる。

この間、僕はあることに没頭していた。

リリスを倒すための最終準備。

そう、転移魔法の仕上げだ。

仕上げと言っても、足りないものはある程度分かっていた。

それを埋めるために、ラオスを生かしておいたのだ。


「・・・それで、瞬間移動の魔法陣の仕組みについて詳しく知りたいと・・・」

三学期が始まって数日後。

僕はアルスとレーナを連れて訓練場まで来た。

そこで待っていたのは、あらかじめ呼んでおいたラオスだ。

「・・・それと、あとどうしても分からないことがあったんで・・・」
「でもルイ・・・その前に何で知りたいのか教えてもらっていいか?」

あれ?転移魔法について教えていなかったっけ?

最近、物忘れが激しいな。

「転移魔法の実現のために、どうしても分からない部分があったんですよ。それが―」
「ちょっと待て!今、”転移魔法”と言わなかったか!!!」
「はい、言いましたが?もう少しで完成しそうなんですよ」

僕の言葉にラオスは大声を上げ、その場で頭を抱える。

「?」
「ルイ兄様。あれが普通の反応です。転移魔法という実現不可能な魔法を完成しそうだなどと言われたら、魔法を使う人間にしてみたら驚愕以上の事なんですよ」
「そんなものなのか?」

ただ実現させるだけだぜ?

「そういうお前らは、驚かなかったじゃないか?」
「ルイ様、私達だって驚きはしました。ですが、すでに無詠唱魔法の成功を目の当たりにしていたので慣れちゃいましたよ」
「そうですね。これまで長い間関わってきて、ルイ兄様の普段の言動や魔法の発明について、いちいち驚くのもバカバカしくなってきました。その意味では、この前のナータリの反応は、凄い新鮮でしたね」

それって、嫌味か?なんか自分が奇人変人扱いされている感が否めないが・・・・無視しよう。

「ラオス先生、よろしいですか?」

僕はいまだ頭を抱えるラオスに言葉をかける。

「もう少し、頭の中を整理させてくれ!」
「時間が無いんだけれど・・・」
「・・・ルイはもう少し人の心を理解するようにした方がいいぞ!」
「それは嫌です!周りが僕の心を・・・」

あ、いや、そう言えば、僕の心は結構周囲に読まれているんだったけ、忘れてた。

「先生。とりあえず早く顔をあげてもらえますか?」

急かされたラオスがようやく顔をあげる。

「それにしても、転移魔法を本当に実現するつもりか?」
「ええ、後一歩です」
「・・・まさか、もうすぐ完成しそうだから、この前の交渉で『新たに生み出しても黙認する』という条件を入れたのか?」
「そうです」

それにしても、魔法協会の奴らも馬鹿だな。

すでに僕が無詠唱魔法に成功していることを知っているにもかかわらず、さらに僕が新たな魔法を発明するとは予想もしなかったのか?

もしそうなら、僕を子供だと侮りすぎだ。

僕は子供ではない、世界に選ばれた人間なのだ!!!

「ルイ兄様、早く始めるんではなかったのですか?」

おっと!忘れるところだった。

「ラオス先生、僕が聞きたいのは、瞬間移動の魔法陣を発動させるときの詠唱についてです」
「詠唱?」
「そうです。すでに魔法陣を空気中に作り出すことは出来ました。後はそれを瞬時に作り出すために詠唱が知りたいのです」
「待ってくれ。その前に、魔法陣を空気中に作り出す・・・とは、どういうことだ?!」

・・・口で説明するのも面倒くさい。仕方ない、見せるか。

僕は魔法陣の書かれた一枚の小さな紙片を取り出し、空気中に浮かした。

それを水中屈折の応用である空気屈折を利用して魔法陣を浮かび上がらせる。

そこに魔力を流し込んで、発動させる。

「本当に・・・ここまで出来たのか」
「ええ、ざっと三十秒ほどかかりますよ。ただし、現在これの弱点は魔法陣が書かれた紙がないと発動しないこと。なので、詠唱さえ知ることが出来たらイメージだけで展開することが可能になる」

魔法陣については何回も見たし、行きたい場所へはそこをイメージするだけでいいと確認した。

後は詠唱さえ知れば、魔法陣をイメージして唱えることでそれを簡単に作り出すことができる。

それが便利な魔法の仕組みである。

「ルイ、お前の公爵家の権力を使えば、そんなのはいくらでも知ることはできるんじゃないか?」
「いえ。それが成功しなかったから、こうして先生に尋ねているんです」

今まで、いくつもの詠唱を唱えたが全て無駄であった。

だから、ここが最大の難関だ。

「なるほど。うまくいかない理由は、なんとなく予想はできる」
「どういう理由ですか?」
「普通の魔法は簡単な仕組みだから、誰が詠唱しても変わらないものが発動される。しかし一方、複雑で難しい魔法、特に魔法陣でしか実現できないものは発動者によっても若干異なる」
「イメージが違うということか?」
「イメージかどうかは分からんが・・・発動者によって流す魔力と魔法陣の癖が違う。おそらくルイは俺の真似をして作ったから俺の癖がある魔法陣になってしまっているのだろう」

なるほど、それぞれの魔法陣は同じように見えて、実はそれぞれ癖や個性があるのか。

僕はこの転移魔法をラオスの魔法陣を基に作っているから、ラオスの癖が残っているのか。

「俺の詠唱の仕方を知れば、おそらく、発動すると思うぞ」

それを聞いて安心する。

やっとこの面倒くさい実験も終えられる。

「じゃあ、教えるぞ。本来の詠唱から、しっかり学ぶと良い」

本来の?

そう言ってラオスが唱え出したが・・・その詠唱の長大さに僕は絶望するのだった。
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