異世界貴族は家柄と共に! 〜悪役貴族に転生したので、成り上がり共を潰します〜

スクールH

文字の大きさ
125 / 188
学園編 4章

第125話 嵐の前の静けさ (ラノルド視点)

しおりを挟む
「クソ、ルイのやつ!やりやがった!!!」

俺は届いた手紙を強く握りしめ、思わず机を拳で打った。

手紙の送り主は我が愚息、長男ルイだ。

手紙にはこれからすることの計画書と後処理のお願いが書かれていた。

「ほんとに、親泣かせな息子だ!」

本気でルイではなく弟のアルスにブルボン家当主の座を譲りたいと思う。

もちろん出来ないことは分かっているが。


コンコン

書斎のドアがノックされ、執事のセバスが入室した。

「セバスか。ルイの行動について説明してくれ!」
「急な質問ですね」
「当たり前だ!お前がいながら、これはどういうことだ!」
「そこまで熱くならないでください」

茶化してくるセバス。

当主としては強く出れるが・・・親子ほど歳の差があり、小さい頃から世話になっている老執事に口答えは出来ない。

「はぁ~~で、頼むから説明をしてくれ!」

俺は努めて冷静に尋ねたが、セバスは肩をすくめた。

「正直私もあそこまでやろうとしているとは、予想もしていませんでした。ルイ様と従者の二人が優秀なんですよ」

主人が主人なら従者も従者だ!

「アルスとレーナは止めなかったのか?」
「致し方ないと判断したのでしょう」

本当にどうかしている。

「セバス、お前はどうなんだ?止めれなかったのか?!」
「私もそこまで把握できていませんでした。ましてや、物語にしか登場しないあの存在が実在するなんて。人生最大の驚きです」
「あれについては、もちろん私は知っていた。だが、何故ルイがこの事を知っている!?」

だめだ、感情を抑えられない。

「いつからかは、曖昧ですが・・・今回の行動に至るまで、小さな兆しはありましたな」
「どこからだ?」

俺は尋ねる。

たしかに、言われてみれば自分自身、いくつか気になる点が頭によぎる。

それこそ夏の彼らのあの旅行も不可解だった。

直感で怪しいと思い、信頼できるオールドに同行させたが、何処に行ったか尋ねて見ても、旅行です、の一点張り。

さらに、学園での二学期以降のルイの行動。

転移魔法を開発していること以外は、珍しくほとんど何もやらかしていない。

 むしろ、静かだった。

今にして思えば、まるで嵐の前の静けさのように。

「ラノルド様が考えている夏休みの件もそうですが、それよりずっと前から始まっています」
「そうなのか?」
「ええ、おそらく入学式あたりから」
「そこからか!!」

俺だって公爵家の者だから情報収集は造作もない。

学園のダンジョンでの例のトラブルの件も知っている。

だが、あれ以前から動き始めていたのか。

「他にも急に派閥を作り出したり、例のダンジョンの件の行動。全てが繋がっております」

どこからこのシナリオは始まっていたんだ?

「では、アルスとレーナが派閥を作ったのは、すでにこの件を予想して、ということか?」
「はい」

まさかあの二人もすでにこの結末を承知していたとは。

今から打つ手は・・・正直無い。

ここから帝都まで頑張って馬を走らせても一日半。

もうすでに事を起こしている頃だろうから、説得なんて無理だ。

傲慢な性格のあの息子に、ここまで俺が踊らされるとは思ってもいなかった。

息子だからと油断していたかもしれん。

「ラノルド様を超える逸材になりますね」

セバスがボソリと呟く。

「ルイだけじゃ無理だ。今回のことだって自ら責任を負って留学・・を決めたのもブルボン家に迷惑をかけるためじゃない。自分のためだ」
「そうですね」

父である俺と長年見てきたセバスのルイに対する認識は、一致している。

「当主としてはまだまだだが、それでもあの二人、お前、そしてオールド、他の家臣たちも加わればもしかすると・・・」
「まあ、そこまで私が生きていればの話ですけどね」

自分のために取った行動が、結果的に誰かを助けることになる。

それをあいつは理解している・・・な訳ないか。

まあ、それがやつらしい。

「セバス、これからヨーハナの説得に行くぞ!」
「・・・私はこれで失礼します」
「おい、逃げるな!」

妻の説得。

これが最大の山だろう。

それをこの俺に頼みやがった。

「憂鬱だ。せっかく最近は優しく笑顔になってきたというのに」

だが、全力で説得するしか無い。

息子がやろうとしていることを、最後までバックアップするのが親の務め。

帰ってきたら絶対に説教はするがな!


そんな文句をぶつぶつ言いながらも、どこか息子を誇りに思っている自分がいた。
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

S級スキル『剣聖』を授かった俺はスキルを奪われてから人生が一変しました

白崎なまず
ファンタジー
この世界の人間の多くは生まれてきたときにスキルを持っている。スキルの力は強大で、強力なスキルを持つ者が貧弱なスキルしか持たない者を支配する。 そんな世界に生まれた主人公アレスは大昔の英雄が所持していたとされるSランク『剣聖』を持っていたことが明らかになり一気に成り上がっていく。 王族になり、裕福な暮らしをし、将来は王女との結婚も約束され盤石な人生を歩むアレス。 しかし物事がうまくいっている時こそ人生の落とし穴には気付けないものだ。 突如現れた謎の老人に剣聖のスキルを奪われてしまったアレス。 スキルのおかげで手に入れた立場は当然スキルがなければ維持することが出来ない。 王族から下民へと落ちたアレスはこの世に絶望し、生きる気力を失いかけてしまう。 そんなアレスに手を差し伸べたのはとある教会のシスターだった。 Sランクスキルを失い、この世はスキルが全てじゃないと知ったアレス。 スキルがない自分でも前向きに生きていこうと冒険者の道へ進むことになったアレスだったのだが―― なんと、そんなアレスの元に剣聖のスキルが舞い戻ってきたのだ。 スキルを奪われたと王族から追放されたアレスが剣聖のスキルが戻ったことを隠しながら冒険者になるために学園に通う。 スキルの優劣がものを言う世界でのアレスと仲間たちの学園ファンタジー物語。 この作品は小説家になろうに投稿されている作品の重複投稿になります

万物争覇のコンバート 〜回帰後の人生をシステムでやり直す〜

黒城白爵
ファンタジー
 異次元から現れたモンスターが地球に侵攻してくるようになって早数十年。  魔力に目覚めた人類である覚醒者とモンスターの戦いによって、人類の生息圏は年々減少していた。  そんな中、瀕死の重体を負い、今にもモンスターに殺されようとしていた外神クロヤは、これまでの人生を悔いていた。  自らが持つ異能の真価を知るのが遅かったこと、異能を積極的に使おうとしなかったこと……そして、一部の高位覚醒者達の横暴を野放しにしてしまったことを。  後悔を胸に秘めたまま、モンスターの攻撃によってクロヤは死んだ。  そのはずだったが、目を覚ますとクロヤは自分が覚醒者となった日に戻ってきていた。  自らの異能が構築した新たな力〈システム〉と共に……。

自由でいたい無気力男のダンジョン生活

無職無能の自由人
ファンタジー
無気力なおっさんが適当に過ごして楽をする話です。 すごく暇な時にどうぞ。

落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!

ユーリ
ファンタジー
気がつくと、見知らぬ部屋のベッドの上で、状況が理解できず混乱していた僕は、鏡の前に立って、あることを思い出した。 ここはリュカとして生きてきた異世界で、僕は“落ちこぼれ貴族の息子”だった。しかも最悪なことに、さっき行われた絶対失敗出来ない召喚の儀で、僕だけが失敗した。 そのせいで、貴族としての評価は確実に地に落ちる。けれど、両親は超が付くほど過保護だから、家から追い出される心配は……たぶん無い。 問題は一つ。 兄様との関係が、どうしようもなく悪い。 僕は両親に甘やかされ、勉強もサボり放題。その積み重ねのせいで、兄様との距離は遠く、話しかけるだけで気まずい空気に。 このまま兄様が家督を継いだら、屋敷から追い出されるかもしれない! 追い出されないように兄様との関係を改善し、いざ追い出されても生きていけるように勉強して強くなる!……のはずが、勉強をサボっていたせいで、一般常識すら分からないところからのスタートだった。 それでも、兄様との距離を縮めようと努力しているのに、なかなか縮まらない! むしろ避けられてる気さえする!! それでもめげずに、今日も兄様との関係修復、頑張ります! 5/9から小説になろうでも掲載中

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした

有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

処理中です...